電撃ゲーム小説大賞

第7回 電撃ゲーム3大賞 入賞作品

銀賞

「ウィザーズ・ブレイン」

作/三枝零一 (兵庫県)

受賞作品

電撃文庫

「ウィザーズ・ブレイン」

近未来のアクションノベルがついに登場!
大気制御プラントの暴走と戦争により、人類は滅亡の危機に瀕していた。存在の『情報』を書き換えることで、物理法則すら操る《魔法士》の少年、天樹錬は、世界にただ七つ残された閉鎖型都市《シティ》のひとつ、神戸シティに輸送される実験サンプルの奪取の依頼を受けるが、同じく魔法士の《騎士》黒沢祐一に阻まれ、フィアという少女だけを連れ帰る。
それぞれに守りたい人々のため、ぶつかり合う錬と祐一。
しかしフィアには、《シティ》に関する、重大な秘密が隠されていた……。

作者作品一覧

プロフィール

1977年2月11日生まれ。大阪生まれの兵庫育ち。某国立大で素粒子論を専攻する傍ら、ゲームと小説(読む方)漬けの生活を送る。格闘ゲームと少女漫画とマリス・ミゼルを偏愛。『MAGIC』歴5年。好きな作家は阿部公房、池波正太郎。本作品が長編処女作。

あらすじ

西暦二一九八年、繁栄を謳歌していた人類は、大気制御プラントの暴走により滅亡の危機に瀕してた。空は遮光性の気体に覆われ、食料、エネルギーは供給を絶たれてしまう。七〇億を超えた人口も、残された資源を巡る戦争により、一億を数えるのみとなっていた。
生き残った人類は、世界にただ七つ残された閉鎖型都市《シティー》で崩壊前と変わらない生活を送る人々と、その周辺で余剰エネルギーを盗み、細々と暮らす人々に分かれていた。
神戸シティー近くの町に住む少年、天樹錬は、存在の『情報』を書き換えることで物理法則を操る魔法士だ。兄姉の真昼、月夜とともに何でも屋を営む錬は、神戸シティーに輸送される実験サンプルの奪取を依頼されるが、魔法士の《騎士》黒沢祐一に阻まれ、四番と呼ばれるサンプルの少女だけを連れ帰る。
少女--フィアがケタはずれの魔法士能力を持つことを知り、疑いの眼を向ける兄姉の心配をよそに、フィアに惹かれてゆく錬。
しかしフィアは、自らの意志や感情と引き替えに、シティーの繁栄を図るマザーシステムのコアとして選ばれた存在だった。フィアを奪還すべく錬に迫る祐一。しかし祐一も、かつて恋人をコアにさせてしまった過去があった。
「あんた達は、勝手に箱庭ごっこをやってればいいんだ。そんなもののために、フィアを殺させやしない!」
「現実を見ろ! シティーが無くなって、どれだけの人間が生きていける? 君は、弱者に死ねというのか!」
永遠に出ることのない、「正しい」解答を求めて闘う二人。
しかし、彼らの知らぬ所で、シティーの存在を揺るがす陰謀が動き始めていた──。

選考委員選評

深沢美潮

冒頭部分がたいへん読みづらかったのが嘘のように、しばらく読み続けるとその世界にどっぷり浸かることができました。キャラクターも魅力的で、将来性を感じます。ひとつだけ注文をつけるとすれば、黒沢祐一をもっと強く格好よく描いてほしかったこと。そうそう。そういえば『魔法士物語』という題名が内容に合っていないような気がしました。タイトルを一考してみてはいかがでしょうか。

広井王子

導入部分を読みやすくすると、印象が全く違うと思う。
SF的設定も、もっと徹底的に突き詰めて欲しかった。
主人公と敵対するキャラが弱く、彼がもっと立っていれば、ずっと良くなったと思う。タイトルは、内容とあまりに結びつかない。

安田均

骨太の背景設定をもった、力作SF。ストーリーに最初入りにくいが、用語等に慣れるにつれて、おもしろく読み進められた。脇役の黒騎士風の男が、戦闘だけではなく、仇役キャラクターとしてもう少し魅力的に描かれていれば、なお優れたものになっていただろう。いずれにしても、パワーの必要な未来SFを、正面から書こうとする姿勢には好感がもてる。

松本悟

候補作の中で唯一のSF作品。マザーシステムや危機に面したシティーと人類というテーマは新鮮味に欠けるが、アクションドラマ風展開で、理解し易い内容に仕上がっている。こういった題材はハードになりがちですが、(私としてはSFとして欲しかったが…)全体がまとまりのある話に仕上がっている。フィアというキャラクターの本質が最後まではっきりしなかったことと、全体のテーマに比べてエンディングがやたら軽い。「あれっ!終わるの?」と言う感じ。この結末をしっかり締めていれば、さらに印象は良くなっていたでしょう。

佐藤辰男(メディアワークス社長)

SFの枠組みはよくできているし、とても読みやすく読後感もよい。しかし錬という少年と突然現れるフィアという少女の絡みがあまり共感できないし、錬が宿命的に闘わざるを得ない黒沢もいまいちかっこよくないのが減点要素。タイトルも内容にそぐわないので変えたほうがよい。