電撃ゲーム小説大賞

第10回 電撃ゲーム3大賞 入賞作品

選考委員奨励賞

「結界師のフーガ」

作/水瀬葉月 (大阪府)

受賞作品

電撃文庫

「結界師のフーガ」

妖怪がらみの怪事件、解決します!!

異界に名を轟かす「逃がし屋」を営む逆貫絵馬と助手の倫太郎のもとに、奇妙な仕事依頼の手紙が届いた。
差出人は不明。 早速、手紙に記された場所に赴くが、そこは結界に守られた隠れ里で、折りしも7日間続くという異様な祭りが始まるところだった。
絵馬達に何かをひた隠す村人達、そして、自らを幸せだと信じる囚われの少女……。 やがて祭りが佳境を迎えるとき、秘められた隠れ里の真実が明らかになる!

作者作品一覧

プロフィール

1979年4月29日、山口県生まれ。現在は大阪の田舎で某大学院に通っている、B級ゲームと猛烈に速いヘヴィメタルをこよなく愛する男。趣味はやっぱりゲームとバンド活動。犬や猫を見かけるととりあえず触りにいく性癖がある。基本的に心配性の小心者で、受賞を知った今も不安や期待を超越したスゴイ精神状態で日々を過ごしている。しかしたまに脈絡無くハイテンションになって周囲を驚かせるので心配無用。むしろ注意。

あらすじ

妖怪がらみ専門の「逃がし屋」を営む結界師・逆貫絵馬。そんな彼女のもとに、ある日、差出人不明の仕事依頼の手紙が届いた。逃がす人の名前と場所しか書かれていない怪しげな依頼に、幼い助手の倫太郎は反対するが、絵馬は「面白そうだから」という理由でその依頼を受けることにする。
早速、二人は手紙に記されていた場所に赴くが、そこは結界に護られた人には知られぬ隠れ里だった。絵馬は結界が綻びかけているので直しに来たと偽ってその村に潜入し、密かに調査を開始する。だが、村の主・清欧と、そのメイド・天宮、使用人の老人・北条、そして村人全員が不自然なまでに絵馬達を警戒していた。
折しも村は一週間続く豊作の祭りの最中。これを好機に倫太郎は清欧の屋敷の中を調べ、逃がす対象の少女・冬春と出会う。一見軟禁されているかに見えた彼女だったが、冬春は病気で部屋から出ることができないと言うだけで、そこには「逃げたい」という意志はなかった……。
本人に逃げたい意志がない以上、「逃がし屋」としては仕事をする訳にはいかない。しかし、絵馬はこの村全体を覆う異様な雰囲気に納得ができず、しばらく村に留まり様子を見ることに決めた。
結界に護られた村、家畜を殺し回る儀式、囚われの少女・冬春を病気と言い張る主治医、そして、絵馬に何かをひた隠す村の主・清欧と村人たち……。やがて祭りが佳境を迎えるとき、謎に包まれた村の真実が明らかになる!
美貌の結界師・逆貫絵馬と助手の少年・倫太郎の活躍を描く異色ミステリー・ファンタジー。

選考委員選評

安田均

ミステリ仕立ての和風ホラーもの。超人的な女主人公とその助手が、奇妙な村に乗り込んで、そこに囚われている娘の謎を追い、逃がそうとする。設定はありがちかもしれないが、雰囲気などうまく描かれている。もともとのミステリのお約束を微妙にパロディ化している感覚もあり、楽しめたが、最後の構成に難がある(長すぎる)のは残念。

深沢美潮

キャラ、いいですね。雰囲気や文体も申し分ありません。ただし、中身が……。いきなりの説明口調の羅列にはがっかり。もっと練って、削りこんで、謎を解明していく興味をどんどん読者に持たしてください。すべてに後一歩感がありました。この居丈だかなお姉さんを好きな審査員とそうじゃない審査員に分かれたのはおかしかったです。ちなみに私は後者です。

高畑京一郎

読み手に『ゴーストスイーパー美神』を連想させてしまうのが、一番の弱点かもしれない。日本を舞台にした退魔ものというのは既にジャンルとして確立されていると思うが、それだけに明確な差別化が必要だと思う。
推理小説的な要素を盛り込んであるが、ヒキやタメが不充分なため、真相が明かされた時の驚きが薄められてしまっている。その点を意識してリライトすれば、作品としての質も格段に上がると思う。

佐藤辰男(メディアワークス社長)

アニメのシナリオだったらとてもよく出来た話になっていると思う。白いスーツに身を包んだ女「逃がし屋」と少年、天狗、なぞの老人に美少女、メイドなど登場人物もバラエティに富んで楽しい。文句なく楽しいけれど、強いて言えば、主人公の言動は、小説的にはもう少し抑制したほうがリアリティが演出できたかも。

鈴木一智(電撃文庫編集長)

妖怪専門の逃がし屋を稼業とする隻腕の美女が主人公。ハードボイルドを愛し、いつも白いスーツに身を包んでいる。この痛快なキャラは猛烈に気に入りました。アニメ的な荒唐無稽さはあるものの、主人公が活躍する舞台としてこの世界観が活きています。読後感も爽快です。