電撃小説大賞

第15回 電撃大賞 入賞作品

金賞

「パララバ -Parallel lovers-」

作/静月遠火 (静岡県)

受賞作品

電撃文庫

パララバ -Parallel lovers-

死んだはずの彼からの電話。 それは私の死を告げるもので……。

著者  : 静月遠火
イラスト: 越島はぐ
定価  : 578円(税込)
発売日 : 2009年2月10日
備考  : A6判/296ページ
ISBN: 978-4-04-867518-5

作者作品一覧

プロフィール

静岡県在住。某大学児童文学研究会出身。その割に児童文学らしきものをほとんど書かないまま現在に至る。ミステリ好き。時間もの好き。一時期シャーロック・ホームズとジャッキー・チェンに超がつくほどはまっていたが、そのときの心理状態が自分でもいまいちわからない。なぜその取り合わせだったのか。現在は同じサークル出身の旦那と家族の五人暮らし。あと猫。「思い入れが少ない方がなんか通るような気がする」 という理由でペンネームを適当につけてしまったことを激しく後悔している。

あらすじ

遠野綾は高校二年生。平凡な日々を送る彼女の一番の幸せは、部活を通して知り合った他校の男子生徒、村瀬一哉と毎日電話で話すことだった。

何度も電話をするうちに、互いを友人以上の存在として意識し始めた二人だったが、夏休みの終わりに一哉は事故死してしまう。

本来であれば、二人の物語はそれで終わったはずだった。しかし一哉の通夜の晩、綾のもとに一本の電話がかかる。電話の主は死んだはずの一哉。そして戸惑う彼女にその声は告げた。死んだのはお前の方ではないのかと……。

二人が行き着く真実とは!? 出会えぬ二人の運命は!?

選考委員選評

高畑京一郎

複雑な構造のストーリーに挑戦し、それを破綻なく描き切った作品。二重世界ならではのシチュエーションや、障害の突破方法なども面白く、随所でなるほどと思わされた。逆に勿体ないなと思ったのは、時間を超えてまでこちらの世界にやってきた一哉に、見せ場がない点。全編にわたって張り巡らされている伏線についても、有機的に機能しているとは言い難く、折角の効果が半減してしまっているのが惜しい。

時雨沢恵一

今回の選考で、個人的に最も好きになった作品です(“時雨沢恵一賞” を、いらないかもしれませんが勝手に差し上げます。なお、賞金はありません)。細かな謎出しと解決をテンポよく繰り返して飽きさせない展開と、細かなところまで徹底的に練り込まれた伏線や設定は参考にしたいくらいです。ペンネームがその日(電撃大賞応募〆切日)における決意表明のようなものでしたら、感嘆を捧げます。本名でしたら、とても御免なさい。

佐藤竜雄

王道と言えばこちらもある意味王道。平行世界という異界に加えて、隣の高校、隣の学区という現実の異界の組み合わせが主人公達の若さとひたむきさをより際だたせていたなと。ある小道具を仲介とした、彼と彼女の関係のもどかしさはなかなかよかったと思います。違うけど同じ世界、という矛盾を旨く使ったアイディアも随所に見られていたのですが、ラストを先に考えたのでしょうか。恋人がピンチの時に黙って見ている少年の心境たるや如何ばかりか。

豊島雅郎

『タイム・リープ』 ものとして、審査員の高畑京一郎先生の手厳しい評価をかいくぐっての今回の金賞受賞、これも大した才能だな、と(笑)。設定は個人的に好みでしたし、破たんの無い卓越した文章構成力が素晴らしいと思いました。しかしながら、語り口が普通すぎてやや勿体ない!? と思ったのも事実です。次なる野心的な作品が、早く読んでみたい才能であることには間違いありません。

鈴木一智(第2編集部 部長・統括編集長)

選考委員である高畑京一郎先生の名著 『タイム・リープ』 を彷彿とさせる作品。実は私はその担当編集だったため、幾らか辛目の評価になってしまったのは否めません。特に綿密な計算の基に練り上げられた 『タイム~』 に較べ、ロジックや伏線の甘さが気になりました。しかしながら本作はそのハンデを跳ね返すだけの魅力的な作品性を備えていたと思います。殊に先を読み進ませる構成力は絶妙でした。