電撃小説大賞

第15回 電撃大賞 入賞作品

電撃文庫MAGAZINE賞

「隙間女(幅広)」

作/丸山英人 (京都府)

受賞作品

電撃文庫

隙間女(幅広)

数ミリの隙間にひそみ、こちらを覗きつづける妖怪―― 隙間女

著者  : 丸山英人
イラスト: ミヤスリサ
定価  : 641円(税込)
発売日 : 2010年7月10日
備考  : A6判/328ページ
ISBN: 978-4-04-868658-7

作者作品一覧

プロフィール

1981年7月15日生まれ。成人するまで鹿児島で過ごし、以降新潟、滋賀、京都を転々とする。元々は機械好きで、ロボコンに参加しながらエンジニアを目指していたが挫折。現実逃避の一環として小説を書き始める。四月一日付近になるとパソコンが壊れる怪現象に何度か泣かされるも、なんとか今回の受賞に至る。今度こそは挫折しないよう頑張りたいです。座右の銘は 「職業服に貴賤なし」。

あらすじ

ある日の夜。高校生・琢間琢海が寮の自室に帰ると、どこからか視線を感じる。誰もいないはずなのに、一体誰が……? 意を決して部屋の灯りを付けて確認、そこ―― タンスと壁の間の、20センチほどの隙間―― には見知らぬ女が今にも泣き出しそうな顔をして 「挟まって」 いた。

…… 泥棒に入ったはいいが、帰宅の気配を感じて隠れようとしたけれど隠れきれず、不安で観察していたら、その視線に気づかれて見つかった、とでもいうように。

「119…… じゃない110か」
「お、お願いします! それだけは、許してください……」

懇願する女は自らを 「隙間女」 だと語った。隙間女というのはつまり、人が隠れるのにはありえない、数ミリの隙間から住人をひらすらに見つめまくり、その視線でノイローゼにさせてしまうという江戸時代から続く由緒正しい妖怪。…… にしては、なんか普通の痩せた女の子にしか見えない。疑問に思って問うてみると、「前にいた隙間の家主が買い置いたものを、留守中に食べていたら、隙間女としてあるまじき太り方をしてしまった」 と白状する。

とにかく早々にお引き取り願おうとする琢海。しかし隙間女は 「妖怪として誰かを驚かせないと次の隙間へ移動するためのチカラが得られない」 と言う。

かくして、20センチぐらいの隙間でないと入れない、「隙間女」 と言うにはやや太め…… いや、幅広となってしまった彼女が 「誰か」 を驚かせる算段を整えるため、二人は共同戦線を張ることとなるのだが……?

選考委員選評

高畑京一郎

すっきりした文章で、非常に読みやすかった。隙間女との掛け合いも、妙にのんびりとしていてユーモラス。だが一方で、こぢんまりとまとめすぎたかなという感じもする。読者を置き去りにするくらいのはっちゃけぶりがあってもよかったと思う。

時雨沢恵一

幅広な “隙間女” という、設定の勝利です。ほのぼのとしたお話で、もう一つの 『電撃文庫MAGAZINE賞』 とは対極に位置します。この二つが残ったこと、とても面白く感じました。

佐藤竜雄

「かっこはばひろ」 … このタイトルが作品の全てをあらわしている。落語のような導入、緩い展開。好き嫌いが別れる内容かもしれないが、読者を自分のペースに巻き込む手管は優れていると思う。主人公の性癖を今の境遇にもう少し絡めていれば、隙間女との腐れ縁にもっと説得力が出たのではないかと。

豊島雅郎

個人的な趣味から言えば、お話が一貫して普通なトーンだったのが逆に好感が持てたのも事実で、今回の受賞作品の中で一番愛すべき作品だと思っています(笑)。映像では表現することが難しいイマジネーティブな世界を、活字ならではの、しかも短編小説というフォーマットを活かして、うまく作品に落とし込んだのではないでしょうか? タイトルの “(幅広)” も秀逸でした(再笑)

鈴木一智(第2編集部 部長・統括編集長)

いわゆるナンセンス一発ネタ。好みが分かれるタイプの作品ですが、個人的にはタイトルにわざわざ(幅広)と付けたセンスが何だか好きです(笑)。ストーリーは予定調和的ですが、きちんと起承転結があり短編として成立しています。このノリで書かれた長編も読んでみたいですね。