電撃小説大賞

第16回 電撃大賞 入賞作品

大賞

「幕末魔法士 -Mage Revolution-」

作/田名部宗司 (奈良県)

受賞作品

電撃文庫

幕末魔法士 -Mage Revolution-

一冊の魔導書が秘めた無窮の闇。
激動の時代を舞台に繰り広げる幕末ファンタジー!

著者  : 田名部宗司
イラスト: 椋本夏夜
定価  : 578円(税込)
発売日 : 2010年2月10日
備考  : A6判/312ページ
ISBN: 978-4-04-868323-4

作者作品一覧

プロフィール

1977年生まれ。浪人生の夏、ライトノベル作家になることを決意。創作に役立つはずと、某大学の史学科に入学するが、初日で大きな勘違いをしたことに気がつく。結局、一作も完結出来ないまま卒業。住宅営業として馬車馬の如く働くうちに、初志をすっかり忘れるが、三年目の終わりにふと思い出して退職。貯金を食い潰しながら創作に打ち込むも芽が出ず、再就職。作家になるには、来世までかかる。鯖なんかには生まれ変わりたくないなと思っていた矢先、受賞の一報が舞い込む。

あらすじ

時は幕末。 攘夷派と開明派が相克する激動の時代。

大坂適塾に学ぶ若き蘭学者にして魔法士の久世伊織は、塾長・緒方洪庵の命で、一冊の難解な魔導書を翻訳するため出雲国松江藩に赴いた。

一刻も早く翻訳を済ませ大坂に帰りたい伊織だったが、招かれた屋敷で手渡されたのは、亡き父失脚の原因ともなった、古の “大崩壊” によって失われた技術・魔法金属ミスリル銀の錬成炉が記された書物だった……。

翻訳を開始した伊織の周囲の村で起こる神隠し、突然襲いかかる攘夷志士の凶刃、魔法士・金森鳶巣の暗殺。

謎を追う伊織と赤眼の志士・冬馬の前に、やがてミスリル銀錬成に隠された無窮の闇が広がっていく!

魔導の旋律が奏でる幕末ファンタジー!

選考委員選評

高畑京一郎

時代小説として読んでも違和感のない文章。そこに混じる魔法的なギミックの面白さ。キャラクターも面白いし、それぞれの立ち位置やものの考え方もしっかりと書き分けられている。総合的に非常に高い完成度だと感じた。幕末という事で、今後の流れや新たな登場人物は予測できるが、それらをこの作者がどう料理していくのか、逆に興味をそそられる。

時雨沢恵一

歴史小説でいて、魔法という嘘がしっかりと描かれていて、メインキャラクターの二人が魅力的な楽しい作品でした。この先の素早い続編を期待します。実はこの作品、編集部の考えとしてはメディアワークス文庫で推されていました。ですが私を含め審査員側から電撃文庫で出すことを提案され、大賞に推されたという経緯があります。関わって三回目の大賞として、前二回とはまた違った作品を選べたと思います。

佐藤竜雄

上質な語り口、加えて魔法と呪術の対比など、歴史ファンタジーではなく忍法帖的な要素も多々あり、電撃には珍しい傾向の作品。問題はこの作品を何処に位置づけるかで他の作品の評価がガラッと変わってしまうという点で、正に今回の台風の目という感じ。MW文庫大賞候補として考えた場合には、もう少し大人っぽい要素を増やした方がいいのではと思っていたので、電撃大賞として推しました。

豊島雅郎

2010年に流行りそうな予感の「幕末モノ」。とにかくキャラクター設定に魅せられました。胸キュン、ドキドキ、ベタベタ、女子萌え、悪者がすぐに判る(笑)…… 今からシリーズ化されることを期待しています。また、筆者の文章能力の高さにも感心させられたので、他の作風の作品も読んでみたいと思いました。今回の栄えある大賞受賞を糧に、更なる飛躍を期待しています。

鈴木一智(取締役・第2編集部 統括編集長)

過不足無い文章、時代モノに西洋ファンタジー要素を組み込んだユニークな設定、起承転結が明確で起伏に富んだストーリー、きちんと個性付けされたキャラなど、評価項目の全てが高得点で小説として非常にバランスのとれた作品です。ライトノベルと一般文芸の両面から議論された本作ですが、この事はむしろ作者の汎用性の高い筆力を証明していると言えるでしょう。