電撃小説大賞

第16回 電撃大賞 入賞作品

電撃文庫MAGAZINE賞

「精恋三国志I」

作/奈々愁仁子 (大阪府)

受賞作品

電撃文庫

精恋三国志I

不器用な二人が繰り広げる、
三国志を舞台にしたラブストーリー!

著者  : 奈々愁仁子
イラスト: 甘塩コメコ
定価  : 620円(税込)
発売日 : 2010年4月10日
備考  : A6判/344ページ
ISBN: 978-4-04-868458-3

作者作品一覧

プロフィール

1980年生まれ。高校在学時、ゲームの制作に関わりたいと願いシナリオらしきものを書き始める。その後も創作に関わる仕事に就きたいと道を模索するも叶わず。二十歳の頃、シナリオではなくお伽噺が書きたいということに気づき長編小説を書き出す。大学卒業後、転職を経ながら執筆を続け、この度、望外の賞を頂くことに。これ以上望むのは贅沢かと思いますが、願わくば種のまま眠っているお伽噺をいつか形にしたいと思っています。

あらすじ

二十歳を迎えようとする趙雲子龍(ちょううんしりゅう)。
彼は流浪の武芸者として旅を続けていたのだが、山賊退治の最中、卑劣な罠によって命を失いかけてしまう。その瀕死の危機を救ってくれたのは、優音(ゆういん)という不思議な魅力を持つ少女だった。地神・玄武の養い子という優音は朱を帯びた亜麻色の髪と海のように深い蒼の眼という珍しい容貌で、幼さを多分に残していた。

そして恩のある玄武のお願いで、趙雲は戦を左右させる力を持つ六曜石を取り戻すべく、優音とともに公孫サン(こうそんさん)の許に赴くのだが、折しも公孫サンは袁紹(えんしょう)と一触即発の様相を呈していて──。

これは、まだ名も無き若者がとある一人の少女と巡り逢う不思議なお伽噺──。

選考委員選評

高畑京一郎

三国志の原典をよく知り、尊重もしている事が、作品の端々から伝わってくる。 国盗り物語としての雰囲気もよく出ていた。宝具・神具の設定も、この先いろんな戦術が編み出せそうで面白い。文章力は高いが、具体的な動作の描写を省略して結果だけ書く傾向があり、立ち回りの臨場感を削いでしまっているような気がする。

時雨沢恵一

恥ずかしながら、私はまったく三国志を知らないので、人名や土地名でとっかかりにくく評価に悩んだ作品でした。ヒロインの可愛らしいところ、話の起承転結がしっかりとできていたと思います。合戦シーン、戦闘シーンでの描写は素晴らしかったです。

佐藤竜雄

ヒロインのツンデレぶりは敢えて意図的なのだろう。それを良いと取るか取らないかで評価は大きく変わる。ヒロインの性格設定にブレがあるために、その恋愛模様がツンデレと相成ってチグハグに。終盤が駆け足気味だったのも惜しまれる。 ただ、戦場の描写や、個々の戦闘などはなかなか読ませる。英雄の時代というものを描こうという気概は感じた。

豊島雅郎

正直、「三国志」を全く知らない私にとっては、未知の世界のお話でした。同じ審査委員の高畑先生によれば、「三国志」をベースに良くキャラクターをデフォルメして描けている、秀作との評価でした。 今回の候補作の中では、個人的には一番評価し難い作品であったとカミングアウトしておきます。ただし、老成した文章力には心から脱帽してしまいました。

鈴木一智(取締役・第2編集部 統括編集長)

三國志をモチーフにした別作品(こちらは孔明と馬謖を主人公にしたミステリ仕立てでした)も、4次選考まで残っていた方です。歴史ものをアレンジするスタイルが確立されており、本作も中華的世界観にファンタジーとラブストーリーの要素を取り込んだテイストがユニークな作風を醸し出しています。典型的なツンデレをヒロインとして投入したのもむしろ新鮮でした。ファン以外は取っ付きにくい歴史モノですが、そこを押して読ませる筆力を持った方です。