電撃小説大賞

第19回 電撃大賞 入選作品

金賞

「明日、ボクは死ぬ。キミは生き返る。」

作/藤まる(大阪府)

受賞作品

電撃文庫

明日、ボクは死ぬ。キミは生き返る。

坂本秋月の半分は、死んだはずの美少女でできています。

著者  : 藤まる
イラスト: H2SO4
定価  : 620円(税込)
発売日 : 2013年2月10日
備考  : A6判/328ページ
ISBN: 978-4-04-891329-4

プロフィール

85年生まれ。幼少より文武両道の才能があったらしく、勉学では理系の難関大学へ、テニス部では副部長を務める。見た目と性格が優秀なおかげで異性の噂は絶えることがなく、現在は会社勤めをしながらバンドでリア充を満喫。以上、姉のプロフィールでした。私?察して下さいよ。

受賞者コメント

金賞を得たことで姉に一発くらいデコピンをかませるところまできたのでしょうか。リア充を倒すための戦いは始まったばかりです。皆さん、駄目な弟の応援をよろしくお願いします。力を合わせて、毎日が楽しそうなリア充をぶちのめすついでに驚かせてやりましょう。

あらすじ

『お前の寿命の半分で、彼女を助けてやろうか』。ビジュアルだけが不良の消極的高校生・坂本秋月は、ある夜一人の少女の死に遭遇し、究極の選択を迫られる。秋月は自分の寿命と引きかえに少女“夢前光”の命を救った─はずだったのだが!? なぜか一日おきに秋月の体が光の人格に乗っとられてしまうトンデモな展開に……。こうして始まった二心同体の交換日記生活。型破りな光の人格は、それまでの秋月の毎日を一変させる超絶ハードでちょっとエッチな出来事を次々と巻き起こす!
「 坂本くん、女の子の大事なこと知らなさすぎ。ばかばかばかバカ!」(夢前光)
「 にいさんがイケメンとお茶してるのです! キタコレなのです!」(妹・雪子)
「 ①おくちに ②おくちで ③おくちと? 坂本くんなら③かな……」 (級友・霞)
「 人の命なんて短いんだから。先生、黙っててあ・げ・る」( 保健の先生・日雲)
そんなある日、光の過去を知る男の登場で物語は思いもよらない急展開を迎える!!

選考委員選評

高畑京一郎(作家)

キャラクターの行動や言動が素っ頓狂すぎるとか、下ネタが下品すぎるとか、突っ込みを入れたいところは山ほどあるが、トントンと展開していく物語と台詞まわしには、不思議な中毒性がある。また、人格が入れ替わる話なのに、視点を主人公側だけに限定した構成に、ある種の覚悟を感じた。ところどころに作者の都合が透けて見える部分があるので、そのあたりを丁寧に潰せば、作品としての質も、格段に上がると思う。

時雨沢恵一(作家)

話の骨子となるアイデアが秀逸な作品でした。ある意味ヒロインは全然出てこない、斬新な一冊になるでしょう。主役二人の、それぞれの行動を、描写“する”ことと、“しない”ことによって魅せる展開はとても素晴らしかったです。明るい部分と暗い部分が、シッカリと綯い交ぜされているのも好印象でした。

佐藤竜雄(アニメーション演出家)

二つの人格、二つの生活。あえて片方だけを描いて、主人公と共にもう一つの人格の今を読者に想像させるストイックさはいい。とはいえ、彼女の絶望と無力感への対抗が、単なるマッチョイズムへの憧れに見えてしまうのがすごく残念。そもそも通りすがりの少年に何故死神がこのような苦行を強いたのか、そこら辺がよくわからないのが一番の問題。コメディにしたいのならばもうちょっと戦略があった筈。

鈴木一智(株式会社アスキー・メディアワークス取締役・第2編集部統括編集長)

“一人の中に二人の人格”と言えば、最終選考委員でもある高畑先生の名著『ダブル・キャスト』を思い浮かべてしまうのですが、その片方しか書かないという手法と今どきのテイストが本作のオリジナリティとなっています。とにかく中盤までは気持ちよく筆が走っており、自分に憑依した女の子の人格に惹かれるという展開も斬新。ただ幾つかの謎が読者の判断に委ねる形で処理されている等、終盤の作りが甘くなってしまったのが惜しい。ここをきちんと締める事ができれば、高畑先生も太鼓判でしょう(笑)。

徳田直巳(電撃文庫編集長・電撃文庫MAGAZINE編集長)

魂や人格が入れ替わるという設定はありがちですが、このお話の設定はありそうでなかった。アイデアは非常におもしろく、シーン描写の方法にも工夫があり感心しました。ただ個人的には妹・雪子などをもっとうまく使ってラブコメ要素を盛り込んでも良かったのでは、と。また風城のキャラの言動に、もうひとつ説得性が欲しかったと思います。

佐藤達郎(メディアワークス文庫編集長)

自分の身体に女の子の魂が宿り、一日毎に彼女と入れ替わるという発想が面白かったです。ヒロインが一度も出てこないというのは、ラブコメの王道から外れているかもしれませんが、ノートを使って女の子のキャラをうまく描けていたのでかえって新鮮でした。彼女の行動に一日遅れで振り回される主人公は楽しく書けていたので、突然男の身体に入ってしまった光の戸惑いを増やしたりすればもっと面白さを演出できたのではないかと思います。