電撃小説大賞

第19回 電撃大賞 入選作品

電撃MAGAZINE賞

「失恋探偵ももせ」

作/岬 鷺宮(27歳/東京都)

受賞作品

電撃文庫

失恋探偵ももせ

女子高生探偵が解き明かす、恋の終わりのミステリー

著者  : 岬 鷺宮
イラスト: Nardack
定価  : 630円(税込)
発売日 : 2013年4月10日
備考  : A6判/360ページ
ISBN: 978-4-04-891553-3

プロフィール

1984年生まれ。漫画や小説を読んではときめきのあまり布団の上でのたうちまわる28歳。物語を好きな気持ちを抑えきれず、勢い余って自らも執筆を開始。以降、創作の苦悩からも布団の上をのたうちまわることになる。誰かにとって一生モノの物語を書くことが出来ればいいなと、そう思っています。

受賞者コメント

この度は、身に余る賞をいただき、光栄であると同時に非常に身の引き締まる思いで一杯です。受賞作「失恋探偵百瀬」の執筆中にはリアルに失恋してしまうという事件も発生し「なぜ傷心の最中に僕はこういう小説を書いているのだ……」と疑問に思ったりもしましたが、賞をいただけたことで少しはその悲しみも報われたのではないかと思います。本当にありがとうございました。

あらすじ

「恋はいつか終わります」
そう断言する後輩の千代田百瀬に巻き込まれ、ミステリ研所属の男子高校生、野々村九十九は「失恋探偵」である彼女の助手として調査に手を貸す日々を送っていた。
その活動内容は「恋に敗れた人のために失恋の真実を解き明かす」こと。
二人のもとには、学校内の様々な人たちから依頼が持ちかけられる。クライアントになるのは「幼馴染の芸術家に振られた気弱な女の子」だったり、「突然クラスメイトに辛く当たられるようになったオタク」だったり、「良家のご子息に別れを切り出されてしまった大和撫子」だったり……。
だがそんなある日、二人は活動の方針を巡って衝突し、「失恋探偵」は活動停止状態に陥ってしまう。このまま二人は離れ離れになってしまうのか――。
恋を知らない探偵少女と、五つの失恋物語。

選考委員選評

高畑京一郎(作家)

連作短編でありながら、ひとつの長編としても読めるような構成。そのための伏線も、きっちりと張られている。だが、肝心の『推理』の部分が弱い。また、失恋というデリケートな出来事を扱っているわりには、主人公たちの調査方法がストレートなのも気になった。周囲に知られないようにしてあげないと、依頼者たちが気の毒じゃないかな。

時雨沢恵一(作家)

ほんわかと可愛い作品。主人公とヒロイン百瀬が、最初から最後まで可愛かったです。
短編連作で、各話がサクサクと進むので、アニメにしたら映えるなと、先走ったことを思いながら読んでいました。舞台が北海道で、ローカルな固有名詞も出てくるので、作者は在道の方かと思ったら東京在住でビックリ。

佐藤竜雄(アニメーション演出家)

連作構成のために全体の印象が弱い。だからこそ、マガジンでの連載、という形態を取った方が良いよねという事でのMAGAZINE賞。終盤の失恋探偵コンビ解消から百瀬の自宅訪問はいいとして、キスが唐突。ここでラストまでの流れが何となくわかってしまうのが残念。しかし、百瀬のキャラ造形は秀逸。いいキャラですね。

鈴木一智(株式会社アスキー・メディアワークス取締役・第2編集部統括編集長)

失恋探偵――というユニークかつ扱いにくそうなネタを上手く展開出来ています。パターンで読ませる連作短編形式でエピソード毎のアレンジや分量もきっちり計算されており、百瀬の毛髪状態による心理描写など小技も効いている。全体を貫く流れが用意されているのもプラス評価でした。“ミステリ要素をエッセンスとした学園恋愛もの”は今後のトレンドになるかも知れません。

徳田直巳(電撃文庫編集長・電撃文庫MAGAZINE編集長)

非常にこなれた文章で大変読みやすい作品でした。「失恋探偵」という設定はおもしろくて良いのですが、何分、解決する事件の内容などがもうひとつインパクトに欠けていたのが残念です。もう少し、恋愛の奥底や人の悪意など、深い部分に突っ込んだ話でもよかったのかな、とは思いました。

佐藤達郎(メディアワークス文庫編集長)

ミステリーに興味はないが推理能力に優れた愛想のない百瀬と、その逆の主人公のコンビがうまくはまった作品でした。失恋探偵というコンセプトも良かったと思います。ただ、失恋探偵は有名だが二人が探偵であることを知られてなかったり、そんな二人に失恋という微妙な話を当事者の友人たちが躊躇なく話したりすることに違和感を抱きました。各エピソードもややあっさりしていたので、もう少しミステリー要素を強めるとより面白くなるのではと思います。