電撃小説大賞

第20回 電撃大賞 入選作品

大賞

「ゼロから始める魔法の書」

作/虎走かける(東京都)

受賞作品

電撃文庫

ゼロから始める魔法の書

“魔術”から“魔法”への大転換期を駆け抜ける──。
世間知らずな魔女と獣の傭兵の魔法書ファンタジー!

著者  : 虎走かける
イラスト: しずまよしのり
定価  : (本体590円+税)
発売日 : 2014年2月8日

プロフィール

東京生まれの下町育ち。
工業系の進路に進み、電気工事士や溶接の資格を取った結果、文章を工事したり溶接したりする仕事を始める。獣人やリザードマンなどの人外をこよなく愛し、王道の冒険物やラブコメを好む。児童文学や絵本も好き。漫画も映画も好き。趣味は小説を書くことと、遊園地に行くこと。

受賞者コメント

「獣人の主人公はムリだ」「ヒロインを男口調にするのをやめろ」などのまっとうな助言を全て無視し、私はこれが好きなんだ!! という思いをぶつけた結果、大賞というに余る賞を頂きまして恐縮することしきりです。恐縮しすぎて怒られました。もう恐縮しない! この作品を選んでくださった選考委員の先生方の期待に応えられるよう、そしてこの作品を読んでくださった方々に「面白い!」と思っていただけるよう、全力で頑張ります。

あらすじ

教会暦526年──。
世界には魔女がいて『魔術』が普及していた。
そして、世界はまだ『魔法』を知らなかった。

そんな時代、人々に”獣堕ち”と蔑まれる半獣半人の傭兵がいた。日々、魔女にその首を狙われ、人間になることを夢見る彼だったが、ある日森で出会った美しき魔女がその運命を変える。
「──戻りたいのか? 人間に。だったら傭兵、我輩の護衛になってくれ」
ゼロと名乗る魔女は、使いかた次第で世界を滅ぼす可能性すらある魔法書【ゼロの書】を何者かに盗まれ、それを探す旅の途中だという。傭兵は、ゼロの力で人間にしてもらうことを条件に、大っ嫌いな魔女の護衛役を引き受けるのだが……。
禁断の魔法書をめぐって絡み合うそれぞれの思惑!
気高き魔女と心優しき獣人による極上ファンタジー登場!!

選考委員選評

※本選評は応募時の原稿に対してのもので、刊行されたものとは異なります。

高畑京一郎(作家)

舞台設定・キャラ設定・ストーリー展開・伏線の張り方・明かし方。すべてにおいて見事な作品。ひとつのお話としても綺麗にまとまっているし、シリーズ物の第1巻としても申し分ない。異世界ファンタジーものとしては王道すぎるという意見もあるかもしれないが、ど真ん中に豪速球を投げ込んだ、その迷いの無さが気持ちよかった。

時雨沢恵一(作家)

隙のない構成を見せてくれた作品でした。無駄のないキャラクターの配置も含め、伏線の張り方と回収が実に巧みで、飽きさせずに最後まで驚かせてくれました。完成度の高い作品でしたので、わりと紛糾した選考会でも、平均して高評価でした。

佐藤竜雄(アニメーション演出家)

魅力的なキャラクター達が、作者に「動かされている」感じがしない。この世界における魔法の定理など実によく考えられた巧みな語り口。とりわけ、悪役である十三番の悪を成す理由、方法論、最終的な立ち回りが最後のどんでん返しも相まって非常に納得がいく。唯一、主人公である半人半獣の傭兵のビジュアルがいまいちイメージ出来ないのが残念であるが、これも電撃文庫で表紙と挿絵がつけば、全く問題が無い。正に電撃的王道作品。

荒木美也子
(アスミック・エース株式会社 映画プロデューサー)

唯一、個々のキャラクターのオリジナリティというところで疑問符がついたところはありましたが、ストーリー構成、キャラクター造形など、ほとんど全てのチェックポイントで高評価がついた、大賞にふさわしい完成度の作品だと評価しました。小説を読んでいる間、現実を忘れ、しばしファンタジーの世界に浸り、特に魔女と傭兵のやりとりは楽しんで読めました。続篇も期待出来る作品だと思います。

鈴木一智
(アスキー・メディアワークス副BC長・第2編集部統括編集長)

いわゆる剣と魔法の世界観やクエストを軸としたストーリーラインなどファンタジーのステロタイプではあるものの、その完成度において抜きん出た作品。キャラも各々が明確な行動原理を持ち自立した存在感があります。魔法書の運用を巡る対立という構図は現代社会におけるイデオロギー抗争を暗喩しているようで面白い。強烈な個性で押す作風ではありませんが、その分シリーズの広がりを期待させる作品です。

徳田直巳(電撃文庫編集長)

魔女、魔術師、獣人間等が登場するザ・王道ファンタジー。ヒロイン・ゼロと半獣半人の主人公との会話はとにかく楽しい。描かれる旅模様は胸躍る骨太な冒険ストーリーとしてよくまとまっていました。ありがちな設定かもしれませんが、新しいおもしろさを感じられる、まさに大賞にふさわしいスケール感あふれる作品です。ただひとつ残念だったのは、敵役が登場してから物語が若干失速気味に感じられた点。それも十分改稿の範囲内だと思います。

佐藤達郎(メディアワークス文庫編集長)

何事にも頓着しない美人魔女のゼロと、巻き込まれ系肉体派主人公の獣堕ち。このコンビが作品にぴったりとはまっていて、思わず続編が読みたくなる作品でした。世界観も骨太でしっかりとしており、黒幕の意外性や思惑もきちんと計算された、<大賞>に相応しいファンタジー小説だと思います。前半に説明が集中してなかなか物語が進まないもどかしさがありましたので、構成のバランスを調整して読みやすさをアップさせて下さい。