電撃小説大賞

第20回 電撃大賞 入選作品

大賞

「博多豚骨ラーメンズ」

作/木崎ちあき(福岡県)

受賞作品

メディアワークス文庫

博多豚骨ラーメンズ

人口3%が殺し屋の街・博多で、生き残るのは誰だ──!?

著者  : 木崎ちあき
定価  : (本体550円+税)
発売日 : 2014年2月25日

プロフィール

福岡県福岡市生まれ、在住。好きな食べ物は明太子と豚骨ラーメン。プロ野球が好きで、いろんな球団の選手を応援中。趣味は海外ドラマを観ることと、愛猫と一緒に昼寝をすること。これといった特技がないので、現在ジャグリングを練習中。

受賞者コメント

大学卒業後、フリーターとニートの間を彷徨いながら、新人賞への投稿を続けていました。そんな私にある日、父がとうとうしびれを切らし、言いました。「高い金払って大学まで行かせてやったのに、無駄だったな」と。この一言が本当にショックで、今年だめだったらもう諦めて真面目に働こうと思っていたところ、まさかの受賞。嬉しそうに賞金の使い道を考えている父の顔を見て、心底ほっとしています。ありがとうございました。

あらすじ

「あなたには、どうしても殺したい人がいます。どうやって殺しますか?」
福岡は一見平和な町だが、裏では犯罪が蔓延っている。今や殺し屋業の激戦区で、殺し屋専門の殺し屋がいるという都市伝説まであった。
福岡市長のお抱え殺し屋、崖っぷちの新人社員、博多を愛する私立探偵、天才ハッカーの情報屋、美しすぎる復讐屋、闇組織に囚われた殺し屋。そんなアクの強い彼らが巻き込まれ、縺れ合い紡がれていく市長選。その背後に潜む政治的な対立と黒い陰謀が蠢く事件の真相とは──。
そして悪行が過ぎた時、『殺し屋殺し』は現れる──。

選考委員選評

※本選評は応募時の原稿に対してのもので、刊行されたものとは異なります。

高畑京一郎(作家)

裏の世界に生きる人々の群像劇。章の立て方に象徴されるように、野球がある種のキーワードにもなっている。物語を描く上で様々な工夫やチャレンジをしているが、それらが効果的に機能しているかどうかは、やや疑問。細かいところで、少しずつ損をしているなと感じる部分が多く、それが勿体ない。だが、それだけに大きな伸びしろがあると思う。

時雨沢恵一(作家)

こちらも構成力が光った作品です。主人公はほとんど役立たず(失礼)なのですが、しっかりと最後まで話に絡んでくる名脇役っぷりが素敵です。謎の主役の正体はすぐに割れましたが、これは期待通りで良かったと思います。タイトルは、最初は「?」でしたがラストで判明しますので、これでいいのか否か悩みました。

佐藤竜雄(アニメーション演出家)

モザイクのように各キャラクターが勝手に動き回り、やがてこってりマーブル状に混ざり合い、最後は意外にもすっきり味のスープになる…そんな読後感。登場人物に感情移入して読むタイプの作品ではなく、ある意味映像体験と似たような感覚を呼び起こされる。色んな設定のありえなさはわざとだろうが、より箱庭感を強めてしまえば違和感は薄れる。どっちの文庫から出るのか楽しみです。

荒木美也子
(アスミック・エース株式会社 映画プロデューサー)

他応募作品と違って、主人公の感情・目線で読めるタイプではない作品だけに、評価は二分されました。映画だと、内田けんじ監督作品のような…斬新なドミノ倒しのような構成の群像劇で、舞台化も想起される小説で、個人的にはとても楽しみながら読ませていただきました。“タイトル”も“ラストの締め方”もシュールにいこうという作り手の想いに溢れる作品です。『ゼロから始める魔法の書』とは180度違うタイプの小説でありますが、大賞として納得の一作です。現場編集者の皆さんの一押し!というのも頷けます。

鈴木一智
(アスキー・メディアワークス副BC長・第2編集部統括編集長)

『バッカーノ!』からスーパーナチュラル要素を抜いたような群像サスペンス。新卒面接試験における突飛な質問から始まりタイトルに纏わるエピソードで終わるその間に、本編である裏社会の抗争を違和感なく挟み込んだ構成は見事。群像劇にも拘らず全てのキャラが立っており且つ煩雑さが無いのは高い筆力の証左でしょう。作者が女性だったのは良い意味でビックリ。

徳田直巳(電撃文庫編集長)

「あなたには、どうしても殺したい人がいます。どうやって殺しますか?」という冒頭のセリフで一気に心を鷲掴みにされました。様々な視点で語られる大群像劇で、主人公は誰?と若干気になるところはありますが、それを凌駕するほどの圧倒的な迫力。野球の試合に見立てた構成は秀逸としか言いようがありません。心の底から楽しめた良質のエンターテインメントでした。『博多豚骨ラーメンズ』が今後どうなっていくのか、個人的にも先が気になります。

佐藤達郎(メディアワークス文庫編集長)

飽きることなく一気に最後まで読ませる、群像劇の魅力満載の作品でした。点として存在していた登場人物たちが、次々と線で結ばれていく構成は見事です。特に細かな出来事や脇役まできちんと関連づけられていて、一種の爽快感すらありました。ハッピーエンドを予感させるラストの解決へ、期待がいやが上にも高まっていくので、悪者たちが成敗される下りはもう少し派手でも良かったかもしれません。