電撃小説大賞

第20回 電撃大賞 入選作品

銀賞

「王手桂香取り!」

作/青葉優一(熊本県)

受賞作品

電撃文庫

王手桂香取り!

華麗なる一手を放て!
駒娘たちと送るさわやか将棋青春ストーリー!

著者  : 青葉優一
イラスト: ヤス
定価  : (本体550円+税)
発売日 : 2014年2月8日

プロフィール

2004 年に芥川賞を受賞した綿矢りささんと金原ひとみさんの記者会見を観ている時、『あ、俺も小説家になろう』と思い立ち小説を書き始める。俺は天才だから三年以内にデビューできるだろうと高を括るが、受賞の連絡がくるまで九年半かかる。自分は天才ではなかった。でも、諦めないって大事です。

受賞者コメント

今までの小説の投稿数は、三十から四十作品くらいになると思います。両手両足の指全てを使っても数え切れないくらい捨てられましたが、捨てる神あれば拾う神あり。そろそろ心が折れるかもしれないなぁと思っていた時、電撃文庫という名の神様に拾ってもらいました。私の作品を読んで評価して下さった全ての皆様、本当にありがとうございました。親とご先祖様にも深く感謝しておきます。

あらすじ

上条歩。中学一年。三度の飯より将棋好き。ひそかに憧れる人は将棋クラブの主将、大橋桂香先輩。
そんな歩の前に突如美少女たちが現れる。
「私たちは、将棋の駒だ」
そう言い放つ彼女たちは、香車を筆頭に駒の化身だという。その将棋の強さは人知を超えており、歩は駒娘たちの教えのもと、さらなるレベルアップをしていく。
折しも中学校将棋団体戦の東日本代表を決める大会が間近に控えており、歩は桂香先輩のチームメイトとなり、ともに頂点を目指すべく奮闘する。
二人の前に立ちはだかるのは、桂香先輩の幼少時からのライバル、二階堂。
二階堂を打倒し、桂香先輩へアピールすべく、歩は駒娘たちと秘策を練るが!?

選考委員選評

※本選評は応募時の原稿に対してのもので、刊行されたものとは異なります。

高畑京一郎(作家)

「駒の化身が多すぎ」「ラストがぶった切りすぎ」などなど、目に付く欠点が多いにも関わらず受賞した事は、ある意味、快挙です。主人公の前向きな姿勢と上達していく過程、そしてなにより将棋勝負の臨場感に魅せられました。二階堂くんの潔い負けっぷりもよかった。だからこそ、もっと続きを読ませて欲しかったわけですが……なんで、あそこでぶった切るかなぁ。

時雨沢恵一(作家)

将棋がテーマという、かつてない一本でした。私は下手ですが将棋はけっこう好きで(最近指していませんが)、読みながら将棋勝負をかなり楽しめました。将棋をまったく知らない人が楽しめるか不安でしたが、他の選考委員の意見を聞くとOKとのことで、話の面白さが純粋に評価されたのだと思います。

佐藤竜雄(アニメーション演出家)

真っ直ぐな作品。いずれも前向きで、イヤなヤツとして描かれていた最大のライバルも自身の信条を持ち、好感を持てる。それだけに主人公をより高い世界にいざなう駒の化身達のキャラが多すぎる。敢えて四人出すならもっとキャラの書き分けをして役割分担を明確にするべき。将棋のシーンが読みやすく分かりやすかった分、ファンタジー部分が邪魔に感じられ、ラストのまとめ方の唐突さが際だった。

荒木美也子
(アスミック・エース株式会社 映画プロデューサー)

将棋の駒が人格を持って、主人公を将棋でも恋愛でも後押しするという設定は面白く、将棋がわからない私でも十分感情移入でき、楽しめる小説でした。ただ、なぜこの主人公を将棋の駒たちが後押しするのかという肝心の動機・設定が弱く、その動機・設定が弱いがゆえに、ラストにかけて盛り上がりがちょっと足りないというのが惜しいポイントでした。

鈴木一智
(アスキー・メディアワークス副BC長・第2編集部統括編集長)

少年コミック等ではポピュラーなネタながら電撃の応募作としては珍しい将棋もの。私は将棋を指さないので対局における指し手の醍醐味はイマイチ実感できなかったものの、それでも雰囲気は充分に伝わってきます。小説としての作りが些か甘い印象もあったのですが“あぁこれはマンガ的手法で描かれているのね”という事で納得。弱者が努力の末に強者を倒すというシンプルさが気持ち良い青春ストーリーです。

徳田直巳(電撃文庫編集長)

かろうじて駒の名前と動かし方ぐらいしか知らない私でも楽しめる、将棋エンタメ小説です。弱かった主人公が次第に頭角を見せ始め、最後には中学生将棋大会で準優勝した棋士に勝利する、というサクセスストーリーは非常にわかりやすくて、それでいて爽やか。でも、駒の化身である美女は四人もいらないでしょう?と。もうひとつ、タイトルにも入っている“桂香”とのラブ要素が薄く、ドキドキ感が足りなかったのは残念でした。

佐藤達郎(メディアワークス文庫編集長)

将棋の対局を小説内で再現するのは難しいのではと思っていましたが、予想に反し臨場感に冨み、作戦の妙や緊迫感が伝わってくる作品でした。その点で実力のある方だと思うのですが、ただ、将棋の神様の女の子たちは多すぎました。人数を絞ってキャラを立たせ、女の子たちのオリジナル要素をもっと活かして下さい。また桂香先輩との恋愛要素がもう少しあってもよかったのではと思いました。