電撃小説大賞

第20回 電撃大賞 入選作品

メディアワークス文庫賞

「C.S.T. 情報通信保安庁警備部

作/十三 湊(33歳/愛知県)

受賞作品

メディアワークス文庫

C.S.T. 情報通信保安庁警備部

サイバー犯罪と戦う捜査官たちの熱い活躍と
不器用な恋愛模様が交錯する超娯楽大作!

著者  : 十三 湊
定価  : (本体570円+税)
発売日 : 2014年2月25日

※応募時タイトル『WORLD OF WORDS 神は世界を記述する』

プロフィール

ペンネームは青森県の遺跡の名前だが、愛知県在住。生まれは「名古屋の植民地」と言われた岐阜。子どもの頃、「チェンジマンごっこ」をしていてミシン台から飛び降り、頭から窓ガラスに突っ込んで大怪我した。考えなしに行動して痛い目をみるのは、大人になっても変わっていない。

受賞者コメント

自分が今まで書かなかったタイプの話を、と考えて習作として書き始めた作品でした。選評シートもらえるかなあ……と初めての電撃大賞応募にドキドキしながら一次選考の結果を見ていた二か月後、最終選考に残ったと知らされて仰天。今も、また妄想と現実の区別がつかなくなっているのでは……という疑いを捨てきることができません。選考委員の先生方、編集部の皆様、選考で関わってくださったすべての方に心よりお礼申し上げます。

あらすじ

脳とコンピュータを接続するブレイン・マシン・インターフェイス、通称BMIが世界でも一般化している近未来。海外から苛烈なサイバー攻撃にさらされた日本政府は、サイバー空間での治安確保を目的に新機関「情報通信保安庁」を設立する。
だが、それを嘲笑うかのように、コンピュータ・ウィルスによる無差別大量殺人が発生。神を名乗る謎の犯人を追う情報通信保安庁警備部・御崎蒼司は、その一方で、恋愛に鈍感な美しい同僚に翻弄されるのだった──。
スリリングな捜査ドラマと、不器用な恋愛模様が交錯する、超エンタテインメント作品!

選考委員選評

※本選評は応募時の原稿に対してのもので、刊行されたものとは異なります。

高畑京一郎(作家)

全体的に硬質な文体で、警察小説を思わせる。登場人物の思考や行動も、基本的には大人。それが恋愛パートでいきなり青臭くなってしまう点にギャップを感じないでもないが、おそらくはそれも作者の狙いだろう。内容的には、攻殻機動隊と比較される事は避けられないと思われるので、今後、より強くオリジナリティを示していく必要があると思う。

時雨沢恵一(作家)

今回唯一のメディアワークス文庫賞受賞となりました。最初は読んでいて読みにくさを感じましたが、キャラクターが出そろってからはぐいぐいと引っ張られていきました。文章力はとても高いと思います。SFですが、テーマは恋愛なのでメディアワークス文庫賞にふさわしい作品でした。

佐藤竜雄(アニメーション演出家)

実生活と電脳世界が一体となった世界で活躍する公的機関──SFでは映像でも活字でもよく使われる設定だが、本作はどちらかというと一連の事件よりも、主人公とヒロインの恋の成り行きがメイン。エリート二人のぎくしゃくとした不器用な恋愛模様は読んでいてなかなか惹かれるものがあった。それだけに事件と恋、二つの流れをもう少しリンクさせて欲しかった。

荒木美也子
(アスミック・エース株式会社 映画プロデューサー)

台詞のテンポ感も良く、制服が和装ということ以外は(苦笑)、映像化を考えやすい小説でした。反面、「攻殻機動隊」×「図書館戦争」のような印象で、かけあわせから新たなオリジナリティが生まれるところまでの完成度に今一つ到達しておらず、筆力ある方だけに次回に期したい、といったところです。あと、タイトルと内容とがしっくりマッチしていないことも残念なポイントでした。

鈴木一智
(アスキー・メディアワークス副BC長・第2編集部統括編集長)

電脳ネタと女性の感性が“攻殻機動隊+図書館戦争”とも言えるようなテイストを醸し出す近未来SF。文章は説明的ではあるものの、キャラメイクを含め設定が細かい部分まで行き届いており、しっかりと人間ドラマを組み入れている点も評価できます。ただ良く書けているが故に課題(キーパーソンの行動原理、シーンバランス、そしてタイトルなど)も浮き彫りになってくるのですが、これは改稿で充分対応できるでしょう。

徳田直巳(電撃文庫編集長)

SF的な設定の割に非常に読みやすく文章も流麗。犯人を追うストーリーも構成上手く引き込まれました。ヒロインの出生の秘密、主人公の家庭事情などがうまくメインストーリーに絡められていて、物語を肉厚にしています。ただ後半は少々展開がファンタジー過ぎでリアリティを感じられませんでした。また、前半~中盤に犯人の一人称的なシーンを挿入して、伏線をはっておいても良かったのでは?と個人的には思います。

佐藤達郎(メディアワークス文庫編集長)

テクノロジー自体に目新しさはありませんでしたが、バラバラに起こった事件が一つの目的に収斂していく展開と、それを追う情報通信保安部隊の活躍は読み応えがあり、完成度の高い作品に仕上がっていました。同じ想いを抱きながら違う道を選んだ犯人と伊江村の対比や、御崎と伊江村の二つの家族愛の形も見所でした。犯人の思想にもう少し説得力があり共感できる要素があると、もっと深い余韻を持たせることができたのではないでしょうか。