電撃小説大賞

第20回 電撃大賞 入選作品

20回記念特別賞

「水木しげ子さんと結ばれました」

作/真坂マサル(東京都)

受賞作品

電撃文庫

水木しげ子さんと結ばれました

僕と彼女は「赤い糸」で結ばれている――
死の運命を結ぶ糸が織り成す、愛しくて狂った物語。

著者  : 真坂マサル
イラスト: 生煮え
定価  : (本体590円+税)
発売日 : 2014年2月8日

プロフィール

兵庫県神戸市出身。
映画監督を目指したり、漫画原作者を目指したりしていたのですが、色々あって(とにかく色々あって)、電撃文庫さんに、拾われました。
色々ありましたが(とにかく色々ありましたが)、その経験を生かし頑張ります。

受賞者コメント

昔、10年同棲していた人に、別れ際に、「マジックミラーと付き合っていたみたいだった」(こちらは何から何まで見られているのに、こちらからは何も見えないと言う意味らしい) と言われ、わたしは頭がおかしいのだ、人と分かりあえないのだと、半狂乱したあの頃の思い出を生かし、狂った世界を楽しく描いていきたいです。

あらすじ

今日は転校初日で、学校に着いていなければいけないのに、僕は今、死体を埋める穴を掘っている。そんな僕の左手の「ある存在」――それを追って振り返ると、僕以上に血みどろで、死体をいじくる女の子がいる。
――水木しげ子さん。
僕の想像していたのと全然違う、可愛くて恐ろしい女の子。でも、彼女こそ僕の運命の人に間違いない。
だって、あまりにも完璧な、人形みたいに美しい彼女の左手の小指は、僕の左手の小指と「運命の赤い糸」で結ばれているのだから――。
殺し合う者たちを結ぶ「赤い糸」で結ばれてしまった、ちょっとおかしな少女と少年。
二人に次々と訪れる数奇な殺し合いの「運命」と、その未来に訪れる結末とは――?
今年だけの〈20回記念特別賞〉受賞作、ついに登場!

選考委員選評

※本選評は応募時の原稿に対してのもので、刊行されたものとは異なります。

鈴木一智
(アスキー・メディアワークス副BC長・第2編集部統括編集長)

20回記念特別賞を受賞したのは何ともユニークなタイトルの学園ホラーミステリ。シリアスな内容を面白ツボを押さえた文章で描く――電撃で言えば“エーコとトオル”や入間作品に近い手法で、どんでん返しの大技・小技を次々と繰り出して先を読ませます。その特性を活かし過ぎて後半が少し荒唐無稽になってしまった感があり、オチも何となく釈然としないものの、筆力と個性を兼ね備えた作風に惹かれました。

小山直子(第2編集部部長)

楠見朝生は、赤い糸がみえる。結ばれている者は必ず殺しあうことになる呪われた糸。――冒頭からインパクトがあり、物語に一気に入っていけました。設定部分など粗いところはあるものの、物語として面白く読めました。しげ子に対する、朝生の心のツッコミ文章(地の文)にリズム感もあり、その文章センスは個人的に好みです。エピソード自体はシリアスだが、全体としてウェットな印象はなく、構成にも工夫あり、高評価となりました。

徳田直巳(電撃文庫編集長)

かなりシュールで尖ったファンタジーミステリ。激しく残虐で、描かれる殺しの概念には正直懸念する部分はありますが、それを言ったらこの物語は成立しません。ヒロインのしげ子さんがまたファンキーで、少々引っ込み思案だけど正直もので正義感の持ち主である主人公とのコンビは好感が持てました。ただし、リアリズムとファンタジーの境界線ギリギリのところを見せるのがおもしろい話なのに、後半やや失速し、ファンキーが行き過ぎて完全ファンタジーになってしまった点は残念。

佐藤達郎(メディアワークス文庫編集長)

ヒロインのしげ子さんは、今回の選考作品の中で最も印象に残ったキャラでした。この強烈な個性、そして赤い糸の発想、捻りの効いた毒のある物語、好き嫌いは分かれるかもしれませんが、読者を惹きつける力のある作品だと思います。ミステリー仕立ての各話はバリエーションにも富んでいて良かったのですが、展開や解決策にやや無理があり気になりました。ただ、こういうテイストの作品を書ける才能は貴重だと思います。

三木一馬(電撃文庫MAGAZINE 編集長)

電撃文庫作品『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』を彷彿とさせる、猟奇的な雰囲気の中にある少年少女の「絆」が描かれている。しげ子さんの不気味な魅力と、それを受け入れるシニカルさを持ち、そしてときに感情を昂ぶらせてヒーローとなる主人公の少年のキャラクター性が特徴的だった。サイコ風なんだけど「実はいい話」、というノリは今の読者も楽しめるのではないかと感じた。

湯浅隆明(電撃文庫副編集長)

まず赤い糸で繋がれているのが運命の人ではなく……というアイデアが面白い。主人公とヒロインのキャラクター、およびその関係性もいい。また細かいところの演出も含めストーリーもうまく、興味深く読みとおすことができた。ところどころ主人公の行動原理が不可解なのと、またクライマックスでのとある強引さが気になったが、全体としては良質のミステリ作品になっていると思う。

黒崎泰隆(メディアワークス文庫副編集長)

「赤い糸で結ばれている」といえば、恋愛感情で結ばれているのが当然……という思い込みを見事にひっくり返してくれた設定が、なによりユニークで秀逸です。不気味なしげ子さんと主人公も、キャラクターとして魅力的に立っていて、やや猟奇的なストーリーにもかかわらず、楽しく読めました。ストーリー展開そのものには、いまひとつ詰めが足りないように思いますが、ミステリー風味のセンスが光る作品と言えるのではないでしょうか。