電撃小説大賞

第21回 電撃大賞 入選作品

銀賞

「マンガの神様」

著/蘇之一行(京都府)

受賞作品

電撃文庫

マンガの神様

マンガの神様によって巻き起こる、トラブルいっぱい青春ライフ★

著者:蘇之一行
イラスト:Tiv
定価:(本体590円+税)
発売日:2015年3月10日

プロフィール

生まれも育ちも京都。人見知りが激しいので人と打ち解けあうのに時間がかかるタイプ。自身は小説を書きながらも、活字より漫画の方がよく読む。破壊力-A、スピード-A、射程距離-D、持続力-D、精密動作性-E、成長性-∞。(※個人の感想であり、作家の能力を確約するものではありません)

受賞者コメント

今回3回目の応募で受賞させていただきました。3度目の正直ってやつですね。今までミステリーとかどちらかといえばシリアスっぽいのを書いてたんですが、どうやらコメディ系の方が合っていたようです。何でも色々挑戦してみるものだなあと思いました。いかなるジャンルであろうと、自分の作品で少しでも多くの人に楽しんでもらえたら御の字です。そうなるよ

あらすじ

高校生漫画家・伊織が廊下の角でぶつかった美少女は言った。「あなたは近いうちに死にます。99%」その日から伊織の周りで奇妙な偶然が起こり始める。憧れにしてライバルの大御所漫画家と対談をしたら、その相手が死亡宣告してきた美少女・楪葉だったり。可愛い転校生が幼馴染みで隣の席になったり。どうやら伊織がぶつかった天才漫画家・楪葉には「マンガの神様」が憑いており、彼女の周りでは漫画のような出来事が頻繁に起こるらしく……!?

選考委員選評

※本選評は応募時の原稿に対してのもので、刊行されたものとは異なります。

高畑京一郎(作家)

成功体験があり、挫折があり、悩んだ末にヒントを貰って乗り越える。ある意味、古典的とも言える成長物語。個人的にはこういうお話は大好きです。「マンガの神様」の効果は、こういう落とし方をするなら、もっと解釈の余地のあるような事例にすべきだと思う。

時雨沢恵一(作家)

明るく爽やかな青春物。努力家の現役漫画家の主人公と、“神様”に愛されていて成功を手にしているヒロインの対比は面白かったです。狙いかもしれませんが、某漫画家さんを思わせるタイトルが実際は関係ないので、ここだけは、やや違和感を覚えました。ただ、タイトルは変更があり得るので、評価の減点対象にはなりませんでした。

佐藤竜雄(アニメーション演出家)

主人公が自信家でイヤな奴なのに努力家なために好感度が高い。マンガ創作に関しての提言は、商売柄「お前に言われたくない」と思えるものが多いが、展開はなかなか熱い。問題はマンガの神様そのものの取り扱いで、現実に起こり得ないマンガ的展開が導入以降影を潜めてしまったところ。部長とヒロインの因縁も結局は過去の出来事なので、神様による今起こりうる危機をドラマに絡めていけば、ヒロインの悩みも更に説得力を増したかも。

荒木美也子
(アスミック・エース株式会社 映画プロデューサー)

導入部が内容に比して文章量が多く若干テンポが間延びしてしまっていることは惜しいが、主人公のいけすかなさや悶え、そして伊織の妹の描写もとても微笑ましく読めました。一方で、楪葉と萌黄の因縁話は、唐突というか……この物語のトーンを全く変えてしまっているが、それがこの作品全体としてみた時に+に作用しているのか否かは審査員のなかでも意見が分かれるところであった。

鈴木一智
(アスキー・メディアワークス副BC長・第2編集部統括編集長)

編集部内で高い評価を得た作品。滑らかに流れる文章とストーリーでストレスなく読める学園ドラマに仕上がっています。マンガ論の部分はオリジナル・コンテンツを作っている者としては些か甘さ(青さ?)を感じるものの、「マンガの神様」という設定を超常的な現象ではなく人間ドラマのエッセンスとして扱っている点が興味深く、同時に都合の良い偶然を正当化する機能を持たせているのも面白い。萌え系ラブコメ的な派手さはありませんが、キャラの行動原理がしっかり確立されており、どこまでも不敵で傲慢な主人公にも好感が持てました。電撃文庫でもメディアワークス文庫でも刊行出来そうな作家性の幅広さも魅力。

三木一馬(電撃文庫編集長、電撃文庫MAGAZINE編集長)

これは選考会で意見が分かれた作品でした。主人公はマンガの才能があり、どんなジャンルの作品も描けるのですが、しかしその万能な理由が不明瞭で、読者の愛着や共感がうまく得られない恐れがこの作品にはあります。ただ『マンガのような出来事が次々起こってしまう。それはマンガの神様のせい』という、ベタな展開を逆手に取るその着眼点は大変見事です。女の子のキャラも可愛いので、電撃文庫読者に一番受ける可能性を秘めています。

佐藤達郎(メディアワークス文庫編集長)

自信過剰の少年が挫折し、仲間を得てそれを乗り越え成長する。王道の物語ですが、それ故わかりやすく、ハッピーエンドを予感しながら安心して読めるエンタテインメント作品に仕上がっていました。散りばめられた創作論がスパイスとなって効いていますし、物語における偶然性をマンガの神様の仕業と逆手にとって展開させているのも上手いと思います。女の子のキャラが少し弱かったので、ヒロインや妹、幼馴染みの魅力を更にアップさせて下さい。