電撃小説大賞

第21回 電撃大賞 入選作品

銀賞

「いでおろーぐ!」

著/椎田十三(東京都)


※応募時の原題『イデオローグ』より改題
※応募時の「六郷橋港」より改名

受賞作品

電撃文庫

いでおろーぐ!

全ての恋愛は幻想である!? リア充爆発アンチラブコメ!

著者:椎田十三
イラスト:憂姫はぐれ
定価:(本体570円+税)
発売日:2015年3月10日

プロフィール

都内にある大学の薄暗い地下実験室で、宇宙のなりたちを解き明かすために日夜怪しい実験に取り組む。そんな日々の鬱屈から逃避するために、研究とは一切かかわりのない頭のイカレた文章を書き連ねていたら、どういうわけか受賞してしまった。

受賞者コメント

イデオローグという仰々しいタイトルですが、内容は頭をからっぽにして読めるお馬鹿なコメディです。登場人物たちの滑稽を笑いながら、どこか共感でき、そして読み終わったあとには少し爽快な気分になる、そんな小説になっていたらと思います。行間から作者の怨嗟が滲みでている気がしますが、気のせいです。無事に出版できるように、ヤバいところは頑張って修正していく所存です。選考関係者すべての皆様に厚く御礼申し上げます。

あらすじ

恋愛を放棄せよ! 恋愛感情とは地球外生命体の陰謀による幻想である!」 雪の降るクリスマスイブ、カップルが行き交う渋谷。高砂は、大真面目にそんな演説をする少女、領家薫に出逢う。演説に感動した高砂は、「リア充爆発しろ!」との想いを胸に、彼女の活動に参加することに。そして、美少女でグラマーの神明、男子テニス部のアイドル瀬ケ崎、物静かな女子の西堀と共に「バレンタイン粉砕闘争」に邁進するのだが――?

選考委員選評

※本選評は応募時の原稿に対してのもので、刊行されたものとは異なります。

高畑京一郎(作家)

前時代的な学生運動がモチーフになっているが、その描き方がやけにうまい。新入りの主人公が同盟の精神的支柱になっていく過程も説得力があるし、随所に出てくる演説文など、つい聞き惚れてしまいそう。宇宙人まで登場するわりには、同盟の活動が意外と現実的な範囲に留まっているのは、ややアンバランスかも。

時雨沢恵一(作家)

個人的には大賞二作品と同じくらい高評価をつけた作品です。読んでいてとことん楽しかったです。アジ文の上手さが面白く、感化されそうになりました。ネタ的にかなり、というか相当に危ない箇所が多数あるので、このまま出版されるのかだけが心配です。そういった意味では、この応募原稿が読めて役得だったかもしれません。

佐藤竜雄(アニメーション演出家)

日本反恋愛主義青年同盟と大性欲賛会……突拍子の無い設定のぶん、両者のいさかいが微笑ましいじゃれ合いに見える。そのためテンポ良く読み進められるが、最後の大立ち回りの一連が悪い意味での「ごっこ」に見えてしまい残念。アクションの内容も結局は追いかけっこなので、そこに分量を割くよりももう少し各キャラの掘り下げに力を入れてほしかった。

荒木美也子
(アスミック・エース株式会社 映画プロデューサー)

良い意味で、極めて濃いキャラのバカバカしさとエロトークで他の作品とは全く違う突き抜けた作品。個人的にあまり得意ではないジャンルの作品だが、前半は領家の台詞のパワーに圧倒された。一方で、女児が高砂に課した使命にはタイムリミットや、全うしえなかった場合に高砂に新たにふりかかる災いがないので、読み進めるなかでの緊迫感はない。前半に較べてオチがこじんまりとまとまりすぎなのも如何なものか……。

鈴木一智
(アスキー・メディアワークス副BC長・第2編集部統括編集長)

荒唐無稽な設定を至極真面目な筆致で描き、そのギャップでシニカルな笑いを演出するという今時のスタイル。高い執筆技術が必要とされる手法ですが、この作者は楽々と使いこなしているように見えます。文章の呼吸も絶妙で、鬱陶しくも何故か説得力のあるアジテーション部分にその本領が発揮されています。万人受けするテイストではありませんがユニークな執筆センスが光る作品。ヤバネタの改稿は必須ですが(笑)。

三木一馬(電撃文庫編集長、電撃文庫MAGAZINE編集長)

高評価と低評価、両極端の意見に分かれた作品です。それぐらい大変『尖った』内容でした。先にお詫びするのですが、個人的には低評価で、ラブコメとしてはイデオロギーが強すぎる、女の子のエッチなシーンも中高生には過激すぎてキャラに萌えたい読者が退いてしまうと感じました。しかし、このように評価が正反対の意見が出る作品こそ、世に出すべきだと思います。是非とも、担当編集者と協力してデビューまで改稿を模索してみてください。

佐藤達郎(メディアワークス文庫編集長)

鮮烈な言葉で生徒や民衆をアジる学生運動コスの勇ましい姿と、素になったときの内気で奥手な少女の両面を持つヒロインがとても可愛かったです。そんな彼女に引きつつも巻き込まれ、しかも幼女の宇宙人との板ばさみで右往左往しながら、次第に好きになっていく主人公にシンパシーを感じました。ただ、ヒロインの行き過ぎた発言は読者に拒否感を抱かせるので注意が必要です。彼女の気持ちを確認した後の逃走劇も、蛇足感が出ないようすっきりまとめた方が読後感がよくなると思います。