電撃小説大賞

第21回 電撃大賞 入選作品

メディアワークス文庫賞

「ちょっと今から仕事やめてくる」

著/北川恵海(大阪府)

受賞作品

メディアワークス文庫

ちょっと今から仕事やめてくる

すべての働く人たちに贈る、人生応援ストーリー。

著者:北川恵海
イラスト:やまざきももこ
定価:(本体530円+税)
発売日:2015年2月25日

プロフィール

大阪府吹田市出身。猫派が世間を席巻する昨今ですが、断然犬派です。むしろ大型犬派です。というか若干、猫アレルギーがあるんです。悲しい……。実家には大きなゴールデン君がいます。いつも口あいてるけど、ヨダレもすごいけど、夏は変なライオンカットにされるけど、とっても可愛い癒しの源です。

受賞者コメント

このたびは栄誉ある賞に選んでいただきありがとうございます。一次審査の発表で名前を見つけ損ね、落ちたと思ったことも、最終選考に残ったという知らせの電話をいぶかしんだことも、今となれば良い思い出です。まだ書き始めたばかりのひよっこですが、たくさんの人がこれらの賞を目指していたことを忘れないように、また携わった方々に「コイツを選んでよかった」と思ってもらえる作家になれるように、日々精進してまいります。

あらすじ

ブラック企業にこき使われて心身共に衰弱した隆は、無意識に線路に飛び込もうとしたところをヤマモトと名乗る男に助けられた。同級生を自称する彼に心を開き、何かと助けてもらう隆だが、本物の同級生は海外滞在中ということがわかる。なぜ赤の他人をここまで気にかけてくれるのか? 気になった隆はネットで彼の個人情報を検索するが、出てきたのは、彼が三年前に激務で鬱になり自殺した男であるということだった。

選考委員選評

※本選評は応募時の原稿に対してのもので、刊行されたものとは異なります。

高畑京一郎(作家)

読みやすい文章と、先が気になるストーリー。題材も、メディアワークス文庫の読者層なら、興味や共感を抱く人が少なくないと思う。五十嵐先輩おとがめ無しかよという点が気にはなったが、現実の世の中で勧善懲悪が常に果たされるわけでもないと思えば、これはこれでリアリティがあるのかもしれない。

時雨沢恵一(作家)

綺麗に始まり、綺麗に話が進み、綺麗に終わった作品です。あまりにスムーズにお話が流れるので、最後まで意外性がないといえばなかったのですが、個人的には、それは欠点にはならないと思います。明るく前向きな、完成度の高いお話でした。ハッピーエンドな話は大好きです。

佐藤竜雄(アニメーション演出家)

いたい、つらい会社での日々と謎の男との夢のような交流が交錯。飲み屋の常連づきあいなんかも似た感じだったりするので思わず共感。名前の知らないどうしの付き合いの方がむしろ本音を吐くこともある。学生時代にはそれなりに友人がいた筈の主人公がどうして「ひとりぼっち」になってしまったのか……この辺りが印象に残らないとただのダメな奴に思われてしまうのでもう少し丁寧に書いた方が。作品全体の、童話のような雰囲気は優しくて良い。

荒木美也子
(アスミック・エース株式会社 映画プロデューサー)

金賞に並ぶ格・賞金のメディアワークス文庫賞。私としては更に上の大賞候補の一作としても推した作品です。正直電撃大賞に応募する題材としては最終選考10篇中一番向いていない。でも小説の完成度(世相を反映したテーマ、文章、台詞、構成、伏線のはり方)は私の中のベストでした。唯一タイトルは引きがないので変更したほうがよいかなと。続篇の可能性はなくとも実写映画化の可能性ありでは!?

鈴木一智
(アスキー・メディアワークス副BC長・第2編集部統括編集長)

中編のスケール感で描かれたサラリーマンもの。シリアスな内容ながら改行を上手く使った簡潔な文章で重さを緩和しており(こういう手法は女性が上手です)、直線的なストーリーとミステリチックなテイストで先を読ませます。未回収のネタやオチの唐突さなど幾つか課題はあるものの、2時間ドラマ的な感覚で楽しめる作品です。

三木一馬(電撃文庫編集長、電撃文庫MAGAZINE編集長)

就活の苦労をネット上で物語っぽく吐露する書き込みが、“まとめサイト”に取り上げられ人気になる……、たとえるなら、これはそんな“キャッチー”なお話でした。ネット世代の読者にピンポイントで刺さるトレンド性と、ミステリ要素や終盤のカタルシスなど、正統派のエンターテイメント性も兼ね備えている、イマドキと王道のハイブリッド作品であると感じました。ヒットした暁には、是非実写映画で見てみたいです。

佐藤達郎(メディアワークス文庫編集長)

主人公のもとに現れたヤマモトはいったい誰なのか、果たして幽霊なのか実在の人間なのか。絶妙な筆致に惑わされながら物語に引き込まれていく、そんな作品でした。心身ともにハードな会社に勤める主人公の日常や心情をジェットコースターのように上下させ、読み手を振り回す書き方も手慣れた印象を受けました。ラスト近くの母親との電話の中に、人生は誰のものかという物語のメッセージが集約されていて、思わずじーんときました。