電撃小説大賞

第22回 電撃大賞 入選作品

大賞

「トーキョー下町ゴールドクラッシュ!」

著/角埜杞真(東京都)

受賞作品

メディアワークス文庫

トーキョー下町ゴールドクラッシュ!

下町を舞台に、伝説の女が悪を叩っ斬る!
痛快! 金融ライトミステリ!

著者  : 角埜杞真
イラスト: 阿弥陀しずく
定価  : 本体570円+税
発売日 : 2016年2月25日

プロフィール

東京生まれの東京育ち、心のふるさとは岐阜県関市。横着で大雑把を絵に描いたようなO型。いつも眠い。誰もいない山中でひっそりと暮らすのが夢だけれど、虫の類が大の苦手なので二の足を踏んでいる。遠い昔に深夜の新青梅街道で引ったくりにあい、パトカーに乗って連行されたのが唯一の自慢。

受賞者コメント

恥の多い人生でした。現在も、鋭意継続中です。かつての文豪たちを鑑みるに、ぼちぼちどこへやらの入水なぞ考えて然るべきお年頃ですが、そんなつもりは微塵もなく。そうこうしている間に、まさかの受賞と相成りました。果たしてこの先、どれだけの生き恥を晒してゆくことになるのでしょう。恐ろしくもあり、ただただ楽しみでもあります。このようなチャンスを与えてくださったこと、選考に携わられた皆様に深く御礼申し上げます。

あらすじ

賠償金100億円――橘立花は罠に嵌められた。身に覚えのない罪を着せられ、勤めていた証券会社からクビを宣告されたのだ。億単位の金を稼ぐ華々しい活躍から一転、無職となった立花は下町の商店街に偶然辿り着く。そこで出会ったのは、顔だけが取り柄のダメフリーターや、頑固な洋食店店主など、お金はなくても人情味溢れる江戸っ子たち。自らの解雇の裏にある巨大な陰謀に気づいた立花は、彼らの助けを得て、事件の真相を暴くため縦横無尽に駆けまわる!

選考委員選評

※本選評は応募時の原稿に対してのもので、刊行されたものとは異なります。

高畑京一郎 (作家)

株取引の世界を舞台にしたミステリー。専門的な事をよく調べてあるし、解説も分かりやすい。人事部の坂口やヘッドハンターの望月なども、登場シーンが少ない割に印象的。だが反面、黒幕の印象が薄すぎて、謎解きのシーンで「この人、誰だっけ?」と思ってしまう。またタイトルにもなっている下町要素が現状では弱い。作者の意図が実現できていないと感じる部分がいくつかあった。

時雨沢恵一 (作家)

大人の主人公が大人の世界で謎を解く、メディアワークス文庫から刊行される大賞作品として、そつのない完成度でした。メインキャラクター達も魅力的で、シリーズの続編も読みたいと思わせる作品でした。強いて挙げるのなら、そして唯一の欠点は、タイトル。これでは、どんな作品なのか私にはあまりよく分かりません。

佐藤竜雄 (アニメーション演出家)

今まで取り上げられたことの無かった株式証券業者の世界への着眼点は素晴らしい。それだけに従来の探偵ものとは異なる「調査」の仕方をもっと特徴付けた方が良かった。すぐに事件を解決しなければならない理由はわかるが、下町の住人達とのやり取りがいささか浮き気味だったので、もっと本題に絡めていく思い切りが欲しい。

荒木美也子
(アスミック・エース株式会社 映画プロデューサー)

この作品は、今の完成度というより、題材設定、キャラ、仕掛けの面白さや魅力に溢れているので、ストーリー展開において今後ブラッシュアップしていくことで、相当面白いものになる、と作品の将来性を期しての大賞作品選出になりました。最終選考のなかで、一昨年の、電撃大賞受賞作『博多豚骨ラーメンズ』の“東京下町版的”な意見が出されましたが、自分もそのように感じました。下町の人達がより本流のストーリーに絡んでくると、より面白いものになるのでは、と思います。

佐藤辰男
(カドカワ株式会社 代表取締役会長)

外資系証券会社に勤める女性トレーダーが主人公。不正に市場を操作し買収を実現させようとする陰謀と、下町の殺人が交差する。展開も緻密で飽きずに読める。何より主人公の女性がりりしく情もあって魅力的。サブキャラが立ってくるとさらにいいのに。謎が謎のまま残っているのは、次回作に誘う手か。シリーズ化されたら癖になりそう。

鈴木一智 (アスキー・メディアワークス事業局 統括部長)

何者かに嵌められて会社をクビになった敏腕トレーダー(バツイチ美人)、というこれまでの電撃大賞には無かったタイプの主人公。簡潔で平明な文章と流れるようなストーリーラインで複雑な事件の顛末を一気に読ませます。人形町の人々のキャラが一様に善人なのでもう少し差別化が欲しかったところですが、TVの2時間ドラマ的な感覚で楽しめる作品。これ、2作目からはディテクティブものになるんでしょうか?

三木一馬 (電撃文庫編集長、電撃文庫MAGAZINE編集長)

丁寧な取材(実体験?)によるロジカルさと、エンタメに必要不可欠なカタルシスの両方を持ち合わせた作品。ストーリーもハリウッドメソッドに沿ったお手本のような内容で、そつなく美しいです。しかし美しい作品は時として、『ストーリーの仕掛けを重視するあまり、キャラクターの心情や行動原理が疎かになる』ことがあるのですが、本作は心配無用の出来でした。金融は少し難しそうで……という方にも、「とにかく読んでみてください!」と手放しで言える大賞作です。

佐藤達郎 (メディアワークス文庫編集長)

生き馬の目を抜くトレーダーの世界と、温かい下町人情のコントラストが上手いと思いました。全てを失った絶望的な状態から真相を探り、最後に巨大な陰謀を暴いて大逆転するという物語は、いつも痛快で爽快な気持ちにさせてくれます。欲をいうと、下町の人達が良い味を出していたので、主人公のためにひと肌脱いでもっと能動的に活躍してくれると良かったかなと思いました。