電撃小説大賞

第23回 電撃大賞 入選作品

大賞

「君は月夜に光り輝く」

著/佐野徹夜(京都府)

受賞作品

メディアワークス文庫

君は月夜に光り輝く

これが、最後のお願いです――
そう言って、彼女の体は白く輝いた。

著者   : 佐野徹夜
イラスト : loundraw
定価   : 本体630円+税
発売日  : 2017年2月25日

プロフィール

1987年1月23日生まれ。中学生の頃、わりと真面目に死のうとしてたところを小説に救われ、自分も小説を書き始める。大学卒業後は会社員になってみたものの、小説がさっぱり書けなくなったので、一念発起して小説に集中するため会社を辞める。昔から、追い込まれないと本気が出せないタイプだった。これで小説家になれなかったらヤバいので、死ぬ気で頑張る。頑張ったら本当になんとかなったので、良かったです。

受賞者コメント

この小説を書いているとき、僕はよく、死んだ友人たちのことを思い出しました。そして、小説の中の主人公に感情移入して、僕は泣きながら小説を書いていました。恥ずかしい話ですが、それはでも、本当のことです。大切な人を亡くした人に。人生に、絶望している人に。それでも、生きていこう、と思ってもらえるような小説になっていたらいいな、と思います。そして、そんな小説を、これからも書き続けたいと思います。

あらすじ

大切な人の死から、少しだけなげやりに生きてる僕。高校生になった僕のクラスには、「発光病」でずっと入院したままの女子生徒がいた。月の光を浴びると体が淡く光ることからそう呼ばれ、死期が近づくとその光は強くなるらしい。彼女の名前は、渡良瀬まみず。余命がわずかな彼女には「死ぬまでにしたいことのリスト」があると知り――「それ、僕に手伝わせてくれないかな?」「本当に?」この約束で、僕の時間がふたたび動きはじめた。選考に関わったすべての人の心を締めつけた感動作。

選考委員選評

※本選評は応募時の原稿に対してのもので、刊行されたものとは異なります。

高畑京一郎(作家)

主人公もヒロインも、その二人に関わってくる香山も、非常に魅力的。いずれも心にいびつな部分を持ってはいるが、そのいびつさも読んでいくうちに愛おしくなる。完全なハッピーエンドではないけれど、読後感は清々しい。しっとりと心に染み渡る、美しい恋物語だと思いました。

時雨沢恵一(作家)

メディアワークス文庫から刊行されることを想定した大賞です。“発光病”という架空の不治の病に冒されたヒロインを取りまく悲しく切ない話ですが、ちりばめられた描写の美しさは素晴らしかったです。ところで、“薄幸”の美少女だから“発光”にしたのかと私は思っていますが、真実はいかに。

佐藤竜雄(アニメーション演出家)

ストーリーの導入がいささか性急で主人公とヒロインの出会いに無理矢理感があったが、いざ二人の関係が始まったら一気に引き込まれた。親友のキャラクターが非常に魅力的だった分、ヒロインを入れた三人の関係は消化不良気味でもったいない。とはいえ舞台のシーンはジンと来たし、ヒロインの美しさを描写したあるシーンはとても魅力的で大賞にふさわしい。

神 康幸(映像プロデューサー/株式会社オフィスクレッシェンド 取締役副社長)

参りました。泣きました。難病ものとわかっていながら、見事な思春期の描写に、思いっきり引き込まれて一気読み。登場人物全員の行動、セリフに類い希なセンスを感じた。「発光病」はフィクションなのだろうが、月夜に光り輝く少女は、まるで妖精のようだ。病院屋上での会話、学園祭での「ロミオとジュリエット」のシーンは、涙なくして読めない名場面。生きていく……、そのための力を読者にプレゼントしてくれる。

佐藤辰男(カドカワ株式会社 代表取締役会長)

登場人物の会話、独白にゆるみがなく、鮮やかにそのひととなりが浮かんでくる。「わたしがいつか絶対来ないでと言っても、会いに来てくれる?」というせりふには泣きました。運命の糸に導かれるように彼女に会いに行くプロセスもとても上手。ああいいなー、とため息が漏れるような小説だ。

鈴木一智(株式会社KADOKAWA アスキー・メディアワークス事業局 統括部長)

命をテーマにした物語は一歩間違うと単なるお涙頂戴になってしまう危険性があるのですが、作者が真摯にこの題材に取り組んだ姿勢が伝わってくる本作は、読者に深い感動を与えるドラマとして成立しています。小説内のリアリティと自分が考えるリアルに若干のズレがあったのですが、これは読み手側の問題なのかも知れません。映画のようにシーンを想像しながら読んでいくと、最後に切なくも美しい映像が心の中に残る作品です。

和田 敦(電撃文庫編集長、文庫プロデュース課編集長)

泣ける作りになっていて、文句無しの《大賞》受賞作品だと思います。『若者と死』というテーマは普遍的で過去にも多くの作品があったかと思いますが、今回、また新たなセンスも感じました。ただ、姉の死により主人公も死に憧れ、それをヒロインを好きになっていく過程に使うのは少し気になった所でした。それが新たなセンスではあるのですが、共感できない読み手もいるかもしれません。

佐藤達郎(メディアワークス文庫編集長)

ストレートな泣かせ系物語と頭ではわかっていても、思わず涙が零れるほど切なく胸に迫る作品でした。死への恐怖を隠しながら明るく生き続けようとする少女と、姉の死により生きることに後ろめたさを感じながら日々を送る主人公。生に対するスタンスの違う彼らが互いに近づき心がひとつになっていく様子が、時に笑いを混ぜながらとても丁寧に自然に描かれていて、生きることに対する二人の気持ちが痛いくらいに伝わってきました。