電撃小説大賞

第24回 電撃大賞 入選作品

大賞

「この空の上で、いつまでも君を待っている」※応募時「ガラクタの王」より改題

著/こがらし輪音(愛知県)※応募時「凩 輪音」より改名

受賞作品

メディアワークス文庫

この空の上で、いつまでも君を待っている

奇跡の結末に涙したとき、きっと再びページをめくりたくなる。
夏の日を鮮やかに駆け抜けた、一つの命の物語。

著者   : こがらし輪音
イラスト : ナナカワ
定価   : 本体610円+税
発売日  : 2018年2月24日

プロフィール

ラーメンと惰眠が大好物な鰭脚類。休日は締めて18時間以上寝ることもザラ。生態はカビゴンだけど好きなモンスターはチルタリスとサイバー・ドラゴン。ブラックコーヒーがぶ飲みで仕事中の眠気を凌いでいる影響か最近胃がキリキリし始めていますが私は元気です。

受賞者コメント

当日は布団の上でスマホを握り締めてゴロンゴロンしていました。身に余る名誉で喜び以上の不安もありますが、最終選考委員の皆様はもちろん、選考の関係者様、家族、勤務先各位、数少ない友人各位、創作者を志す同志各位、今の私を形成したサブカルチャーに携わる全ての人々、そして何より不甲斐ない私を選んでくれた小さな世界の登場人物達に報いるため、精進していきたいと思います。

あらすじ

 夏の雑木林の中、高校生の私が出会ったのは、ガラクタの山とクラスメイトの東屋智弘だった。ロケットを組み立て宇宙に行くという、実現不可能な夢を追う東屋にあきれながらも、その一途な姿が次第に気になってきた。
「死んででも見たい何かって、あるんじゃないかと思うんだ」
 幼い頃の幻のような約束を守ろうと、生き急ぐような彼に不安を覚えた私だったけれど、やがてそれは的中することに――

選考委員選評

※本選評は応募時の原稿に対してのもので、刊行されたものとは異なります。

高畑京一郎(作家)

主人公の市塚美鈴を、ちゃんと地に足が着いたキャラクターとして描いた事。それによって作品全体に一本、太く強い筋が通った事。それがこの作品が大賞を獲得した要因の一つだと思う。逆に東屋の方は、「ロケットを作る」という夢がどこまで本気なのか分からず、読んでいてずっと落ち着かなかった。

時雨沢恵一(作家)

話の中で何度もジャンルが変わって、読んでいる方は何度も騙されて、最後に近づいてまた騙されるという構造が気持ちよかったです。語り口の軽妙さと、ヒロインの描写が上手だと思いました。ラストのラスト、そのオチになることで大きな矛盾点が生まれて混乱するのですが、それも狙いだとしたら十分に効果を発揮していると思います。

佐藤竜雄(アニメーション演出家)

キャラの描写はキャラメルボックスの舞台を見ているかのようで軽快かつ魅力的。ヒロインの性格付けは若い読者よりもある程度社会経験を持った人の方がよりまぶしく感じられると思う。ロケットを作り続けるクラスメートのひたむきさとピュアさも好感を持てるが、それゆえに離床不可能なロケットを作り続ける行為があり得ない。おとぎ話として描くにしてもタイムリープの処理が雑なのが残念。

神 康幸(映像プロデューサー/株式会社オフィスクレッシェンド 取締役副社長)

ガラクタという名前がついているが、この本は「宝石」だ。大賞にふさわしい。表現がみずみずしくリアル。自分以外は全員バカ、クラスメートは毛虫だと思っている主人公。こんなに口の悪いヒロインがいたか。しかし、宇宙人に遭遇した少年と触れあうことで劇的に成長していく。教室で語りかけるシーンに胸が熱くなり、ラストシーンは感動の涙。結末に関しては審査員で議論が百出。それほどに、全員がのめり込む物語だった。

佐藤辰男(カドカワ株式会社 取締役相談役)

読み進むうちに読者の予想を何度も気持ちよく裏切っていく。話の運びが上手で、最後は泣かせてくれた。登場人物のキャラが実にいきいき描かれ気持ちがよい。細部まで描かれている。最後に、ココアや姉のその後、少年はなぜ……といったところを気持ちよくネタバレして欲しかった。タイトルは変えたほうがいい。

和田 敦(電撃文庫編集長)

ガラクタを使って一人ロケットを作っている少年と彼を通して「夢」を追いかけることに共感する少女の流れは、やや青臭さは感じつつもうまく青春っぽさが出ていたかと思います。そのパートでの少年の想いなどに共感する人もいるでしょうし、少女が変わっていく様に共感する人も多いと思います。ただラストは少し強引な印象を受けてしまいました。彼の結末にたどり着く流れには、もう少し説得力が欲しかったです。

佐藤達郎(メディアワークス文庫編集長)

ガラクタを集めロケットを作っている東屋の行為が、果たして本気なのか代償行為なのか判らず最後まで評価を迷った作品でした。それによって、彼の心情の捉え方が変わり、また後半で美鈴がクラス全体を動かして彼のためにする行為の意味も変わってくるからです。ただ、死を受け入れてその上で何かを成し遂げようとする少年と、それを最初はバカにしながらも次第に心が動かされ自分をも変えていく少女の物語として、爽やかにまとまっていました。