電撃小説大賞

第24回 電撃大賞 入選作品

金賞

「世界の果てのランダム・ウォーカー」

著/西 条陽(東京都)

受賞作品

電撃文庫

世界の果てのランダム・ウォーカー

世界を知りたいヨキと、世界を愛するシュカ。
二人が織りなす、少し不思議な物語。

著者   : 西 条陽
イラスト : 細居美恵子
定価   : 本体630円+税
発売日  : 2018年3月10日

プロフィール

埼玉県在住。身長177センチ、体重65㎏。夜更かしをしながら文章を書いたり、海外サッカーを観たりしている。今もこれを書きながら、マンチェスターシティ対チェルシーの試合開始を待っている。

受賞者コメント

望外の喜びです。初めて小説を書いたのは就職後でした。俳優志望の泊まる所もない友人と、職場の可愛い先輩の結婚に落ち込む僕。鬱屈とした夜にしびれを切らし、「小説書こうぜ」と友人が叫びます。本も読まない二人でしたが、一文ずつのリレー小説に夢中になりました。あの頃から、ずいぶん遠くにきたものです。選考に携わった皆様に感謝致します。ちなみに最初の情熱は一晩で冷め、翌朝には二人でパチンコ屋に並んでいました。

あらすじ

 深く、広い世界。その全てを知ろうと、天空国家セントラルは各地に調査官を派遣していた。
 調査官であるヨキとシュカは、多大な個人的興味と、小指の先ほどの職務への忠誠心を胸に、様々な調査をする。
 これは二人が世界を巡り、人々と出会い、(時々)謎を解き明かす物語である。
――とかいって、なんか凄く良い話みたいだね、ヨキ」
「どうでしょうね。僕はシュカ先輩が真面目に仕事をしてくれるなら何でもいいですけど」
 凸凹調査官コンビによる、かけがえのない時間をあなたに。

選考委員選評

※本選評は応募時の原稿に対してのもので、刊行されたものとは異なります。

高畑京一郎(作家)

冷静で淡々とした文章が、物語全体を静けさで包んでいる。ストーリー自体も調査官が世界を観察するという内容なので、文体とうまく調和しているのではないだろうか。選考会では第四章が物議を醸したが、個人的にはこの違和感そのものが独特の味わいを生み出していると思う。

時雨沢恵一(作家)

短編連作ですが、一話のラストでまずやられました。ああ、そう来るかと。このエピソードが私は一番好きですが、その後の話も短い中に起承転結がしっかりとあって、毎話ごとに小気味よく終わっていた点を高評価しました。突然出てきた日本は、好みが分かれましたね。印象に残ったのは後半に出てくるとあるモンスター。ゾワッとしました。

佐藤竜雄(アニメーション演出家)

静かに話が続く穏やかさがいい。語り口に荒さが無くそつが無い。それゆえに番外編のように挿入された「電脳編」については賛否両論別れたが、未知なる存在について語る主人公がより深く描かれていて自分としては好感が持てた。むしろ終盤のモノリスについてのエピソードの方が唐突に感じられたのでその辺りの前ふりは少しずつしておいた方が良かったかもしれない。

神 康幸(映像プロデューサー/株式会社オフィスクレッシェンド 取締役副社長)

空中都市から派遣された調査官2人の物語。章ごとに異世界の謎を解いていくのだが、それぞれに伏線が存在し、それが物語の起爆剤となる構造が興味深い。ストーリー展開のスピードが速く、若い読者にはストレスがないと感じた。他の審査員の方々と意見が異なったが、僕自身は場面が急展開する「第4章」が格別に面白く膝を打った。ページ数が増えてもいいのでディテールを書き込んでほしかったところ。肩すかしを喰らう場面も……。

佐藤辰男(カドカワ株式会社 取締役相談役)

5話からなる短編集。一話ごとの肝となるSF的アイデアが抜群に面白い。途中で入る解説などを裏切って、結末は超自然的だったりする。第一話の結末にハッとさせられた。科学では説明できない、だからこの世界は面白い、と言って、主人公の2人は旅を続ける。このクオリティでこの二人組でいつまでも彼らの旅を追って行きたいと思わせる。

和田 敦(電撃文庫編集長)

最初に受けた印象は、「この作者さんは『キノの旅』が好きだな」でした。空中に浮かぶセントラルから地上の様々な国を調査するという切り口は、様々な国を描けそうですし、ドラマも作れそうですし、物語が広がる可能性を感じました。ただ急に日本を意識した国になった時に、選考会でも意見が分かれました。個人的にはサイバー技術に特化した世界観の国にしても良かったのではないかと思いましたが、ここも好みが分かれる所でしょうか。

佐藤達郎(メディアワークス文庫編集長)

環境も文化も全く違う国々を巡る寓話的な物語を、短編連作という形で綺麗にまとめ上げた作品でした。ミステリー、SF、サスペンスと、各話で異なったテイストが楽しめましたし、それぞれに用意されたハッとするオチにも感心させられました。規則にルーズな女上司と几帳面な部下、でもお互い好奇心に勝てず情にもろい。そんな調査官の二人も魅力的で心が安らぎます。ただ、4話目は読んでいて急に現実に戻されたように感じ違和感を覚えました。