電撃小説大賞

第25回 電撃大賞 入選作品

メディアワークス文庫賞

『水無月のメモリー』

著/ミサキナギ(東京都)

電撃文庫

リベリオ・マキナ
―《白檀式》水無月の再起動―

絡繰騎士は叛旗を翻す――
孤独な姫を救うため、偽りの世界に抗うため。

著者   : ミサキナギ
イラスト : れい亜
定価   : 本体630円+税
発売日  : 2019年2月9日

あらすじ

対吸血鬼戦闘用絡繰騎士《白檀式》
――公国の天才技師・白檀春海が産んだ六姉弟は、
対吸血鬼戦の英雄となる……はずだった。
“不適合”の烙印を押され長らく封印されていた第陸号・
水無月が目覚めると、鬼と人が共に暮らしていた。
遡ること十年、兄姉五体に謎の暴走が起こり、白檀博士も戦死。
電撃的に講和し《白檀式》を破壊した大公と吸血鬼王は、
新共和国を興し平和を成すもそれは仮初めの平穏だった。
亡き博士の娘・花音の元で、人間として生活を始める水無月。
だが二人に、陰謀の影が忍び寄っていて――。
絡繰少年と少女が織り成す、暗器閃く痛快バトルファンタジー。

プロフィール

埼玉県出身、東京都在住の自由人。喫茶店に一日十時間くらい滞在してPCを打っている人。中学生で活字中毒になり、高校生で作家を目指して挫折し、大学生でドマイナーなバンドに耽溺し、社会人でブラック企業に勤めました。一年半で辞めました。無職になって家に引きこもっているときに、もう一度、小説を書いてみたいと思ったんです。人生、何があるかわかりませんね。

受賞者コメント

電撃文庫は私が初めて読んだライトノベルレーベルです。最も思い入れのあるレーベルですし、電撃大賞の受賞作も毎年、一読者として楽しみに読んできました。それがまさか、自分が受賞して読まれる側になるとは……今でもまだ信じられないです。選考に携わられた多くの方々に心より御礼申し上げます。作家になるからには、沢山の人に愛される作品を書いていきたいです。そして、かつて私が小説によって救われたように、今度は私の作品が誰かの心の支えになれたらと思います。

選考委員選評

※本選評は応募時の原稿に対してのもので、刊行されたものとは異なります。

三雲岳斗(作家)

破綻なくそつなく完成した王道のライトノベルで、楽しく読むことができました。好感度の高いキャラクターとバランスのよい構成に、作者の繊細な気配りと高い技術力を感じます。反面、綺麗にまとまり過ぎていて、突出した印象を感じることがなかったのも事実。キャラクターの造形には工夫が感じられるものの、彼らの日常描写がやや類型的で淡泊になってしまったのが惜しかったです。贅沢な希望かもしれませんが、もっと突き詰めて主人公やヒロインの魅力を描けたら、さらに良い作品になると思います。

三上 延(作家)

吸血鬼と戦闘用オートマタが戦うという基本アイディアや、オートマタである水無月を主人公に持ってきた面白さにまず目を惹かれました。学園物にしたのも分かりやすく、このジャンルの定石をきちんと押さえた作品だと思います。ただヒロインたちのキャラクターが型通りでやや窮屈な印象でした。主人公の水無月も前半ではもっと人間から乖離している方が面白かったのでは。

吉野弘幸(アニメーション脚本家)

こなれた文章や書き慣れている感じ、また現行のライトノベルをよく研究しそうな手堅さなど、新人の作品らしからぬ印象を受けました。が、そのせいでしょうか、よくも悪くもヒロイン2人が少し類型的で悪役も個性に乏しく、全体にキャラ造形が弱いのが気になりました。ただオートマタという人工知性を主人公にしたチャレンジは、個人的な好みなのもあって買います。次は研究された『ラノベ(電撃)らしさ』より、作家さんの自分らしさを貫いた作品が読みたいです。

神 康幸(映像プロデューサー、株式会社オフィスクレッシェンド 取締役副社長)

「和物」だと勘違いした。吸血鬼×オートマタの物語だとは。タイトル、このままでいいのか。近未来ロボット社会を見据えての物語構想力は評価。だが、吸血鬼フェチの僕としては、昼間に自由に動き回り、歳を取らない悲しみもなく、人間とロボットの差を見抜けない……という設定が納得できず、のめり込めなかった。第5章でロボット水無月が「再起動」してからの展開は俄然面白い。

湯浅隆明(電撃文庫編集長、電撃文庫MAGAZINE編集長)

かつて対立していた吸血鬼と人間が同居する世界、そして対吸血鬼の兵器として投入されたオートマタ、という設定はネーミングもユニークで、よく練り込まれていました。その上で展開されるストーリーもしっかりと起承転結があり完成度の高い作品に仕上がっていました。欲を言えば主人公&ヒロインに、かっこよさ&かわいさはあるのですが、もう少しどこかクセがあると、物語に深みが増しつつ、さらに楽しく読める作品になると思いました。

高林 初(メディアワークス文庫編集長)

物語のテーマやキャラクターの立ち位置はオーソドックスで目新しさはないものの、非常に安定感のある内容で最後まで楽しめました。実際は半端なく強いことを明かせない少年型ロボットが、時折無双ぶりをみせるというのはわかりやすいカタルシスです。また、キャラクター設定をうまく使いこなすところも巧みだと思います。オートマタだから恋愛関係で野暮を連発する「鈍感主人公」もきれいにはまり、お姫様であるが故のツンデレも違和感がありません。ただ、戦闘描写は多いものの、やや迫真に欠けるのがもったいないと思いました。