コミック原作作品 参考用原稿

ここでは電撃コミック大賞で募集中の「コミック原作作品」の投稿作品の向上のために、 現在電撃のコミック誌でプロとして活躍している漫画原作者の貴重な原稿を参考用として掲載いたします。
これから投稿する作品向上に役立つ要素がたくさん詰まっているのでぜひ一読してください。

  • 第3回月刊コミック電撃大王連載中『現代魔女の就職事情』第7話原作:相沢沙呼×作画:はま
  • 第2回月刊シルフ連載中『この恋に未来はない』第1話原作:粉子すわる×作画:森橋ビンゴ
  • 第1回読み切り版『ミサイルとプランクトン』原作:田中ロミオ×作画:筒井大志

第1回
読み切り版『ミサイルとプランクトン』
原作:田中ロミオ×作画:筒井大志

サチ「恩田さん、こんなところいたら危ない」
美登里「みじ、みじっ」
サチ「ああ、ぬいぐるみ……」

 美登里の特大みじんこぬいぐるみが、発射台のてっぺんに引っかかっている。サチが手を伸ばしてさっと回収するが、美登里に返さず、少し考えてそのまま地面に投げつける。かなりの速度で地面に投じられる特大みじんこ。
 それを追いかけて自らも空中に飛び出そうとする美登里の首根っこを、サチは捕まえる。

サチ「猫だって、そこまで愚かじゃないですよ」

 皮肉るサチの脳裏を、かつての翔太からされた告白がよぎる。

翔太『サチにだけ話しておくけど、この人、恩田後輩が俺たちの恩人だから』
サチ『恩人?』
翔太『救世主』
翔太『この世界で、俺たちがトーンダウンしないでいられるのは、この人のおかげ』
翔太『だから、優しくしてあげてくれよ』

 翔太が畏敬の念をもって美登里を扱うことに、サチは嫉妬している。
 回想していると、足場がぐらりと傾く。
 「何?」と下方を見ると、地上では部員たちがそれぞれのロープを引っ張っている。
※停止世界では物理運動は起こらず(鉄骨なども落下しません)、物を動かすには念力が必要です。これは主人公たちの肉体も含めてそうです。この場合、触れている方が念力は通りやすいため、ロープを使って念力を流しているという解釈になります。
 発射台は停止生徒のいない場所に倒されていく(このあたりから読者はモブが不動である様をあやしく感じても良いと思います)。

サチ(壊さないでって言ったのに……!)

 翔太にかつて教わった。空を飛ぶ術を思い出す。

翔太『あまりやっちゃいけないんだけど、俺たちはみんな、空を飛べる』
翔太『今、俺たちは無意識的に力を使って、体を動かしたり、扉を開け閉めしたり、モノを持ったりしてるんだけど、実はこの世界では、重力“も”停止してる』
サチ『重力が働かなかったら下に落ちないじゃない』
翔太『落ちないんだよ。そのまま浮く』
サチ『そんなこと一回も起こってなくない?』
翔太『俺たちが周囲をそう操ってる。意識は重力がある状態で最適化されてるからな。無意識に力を使って、周辺を重力があるみたいに操作してる。そんくらい、この世界で俺たちの力は強く働くんだ』
サチ『……よくわかんない』
翔太『試してみ。かなり重い物でも、触れて念じれば動かせるから。それで自分自身だって吊り上げるんだ』
翔太『だけどあまりやらない方がいいって恩田後輩は言ってた』
サチ『どうして?』
翔太『非人間的な行動を続けてると、そのうち心が人の輪郭を失ってしまうからって』
翔太『人間のまま、元の暮らしに戻りたいだろ?』

 サチはちょっとためらってから美登里の手を引いて、発射台を蹴って空中に飛び出る。
 だけど思いきりが足りず、背後から倒れてくる発射台に巻き込まれてしまう。
 大人数の念力だからサチひとりでは対抗できない。地面に打ち付けられて死ぬ、と思ったその時、翔太が空中にテレポートアウトしてくる。
※テレポート

サチ(翔太!)

 翔太には余裕がなく、サチではなく美登里を抱きかかえる。

翔太『みんなやめろ! 人が巻き込まれてる!』

 強い念話を全員に発信。地上班全員がハッとする。
「おい、今の念話って……!」「部長だ!」「止めろ!」「総員倒すの中止ーーー!」

 地面に激突するスレスレで、発射台は停止する(ちょっと空中に浮いています)。
 その真下、サチは身を起こし、すぐそばで美登里を抱きかかえている翔太を悲しげな目で見つめる。翔太はテレポートという非人間的な行為の結果、消耗が激しい。
内藤「大丈夫か!」
 内藤らが駆け寄ってくる。ざわめきが大きくなる。

場所/保健室
時間/昼
概要/サチが眠りからさめる
本文/

 サチは保健室のベッドで目を覚ます。

サチ(……知らない間に、眠っちゃってたんだ)

 隣には美登里も眠らされている。
 その姿を見てぎょっとする。
 美登里の全身から、小さなプランクトンが煙のように立ちのぼって発生していた。それは美登里の一部から生まれ出る、幽霊のような存在だ。
 このことをすでに知っていたかのようにサチは呟く。
サチ「プランク時間の動体……」
※ルビ/Planck tone

サチ(……気味悪い)
サチ(でも私たちも、このプランクトンと同じ、意識と念力の存在でしかない)

 サチは念力で白衣を取り寄せ、羽織って、保健室を出て行く。

場所/一階廊下
時間/昼
概要/停止世界
本文/

サチ(私たちは皆、プランク時間に生きている――)

 廊下をつかつかと歩くサチ。翔太に会いたい。
 途中、談笑している生徒や教師の間をかいくぐっていく。
 そのうちのひとりにぶつかって、倒してしまう。倒れても声もあげず、微動だにしない。

サチ「……あ、ごめんね」

 手は触れず、念力で起こしてやる。ほこりを払ってやる。

サチ(プランクという学者からとられた物理学用語を、私たちはこの停止世界のことを呼ぶのに使っている)
サチ(一秒よりずっと短い最小時間の世界では、肉体はあまりにも重すぎる)
サチ(私たちのような、触れずにものを動かせる人間でなければ……)
サチ(そう。停止した世界で、私たちだけがトーンを失わずにいられる)

サチ(……翔太、どこ?)

 天井のさらに上に、翔太の位置を知覚する。

場所/屋上
時間/昼
概要/糾弾
本文/

サチ「ねえ、どうしていきなり仕様変更なんてしたの?」
翔太「そりゃ、性能不足だから」
サチ「嘘」
翔太「嘘なんかじゃない」
翔太「俺は人の感情が色として感じられる」
サチ「精神感応力」
翔太「ここから現場見てるとな、みんな本心から不安がってるってよくわかるんだ」
翔太「もしミサイルを撃って、ミッションに失敗したらどうなる?」
サチ「だから、強引にリセットしたの?」
翔太「失敗は許されないんだ。一度でもミスったら、みんな潰れる。だから何度だって作り直すよ」
翔太「でも、そんな無茶振りするなら、憎まれ役がいるだろ? それで俺のワンマンってことにした」
翔太「カラクリはそれで全部だよ」
サチ「ひとつ忘れてる」
翔太「え?」
サチ「そうやって恩田さんの回復を待ってるんでしょ?」
翔太「……」図星
翔太「このプランク時間を生み出したのは、あの人だ」
翔太「最強のESPで、天才。あの人だけが俺たちを救える」
サチ「……ねえ、このまま研究を続けて、いつか本当にミッションを達成するって発想はないのかな?」
翔太「無理だろ。ミサイルごときでどうこうできるものじゃない」
サチ「やってみないとわからない、と思うけど」
翔太「わかるだろ。あんなもの、核程度で砕けやしないって!」