コミック原作作品 参考用原稿

ここでは電撃コミック大賞で募集中の「コミック原作作品」の投稿作品の向上のために、 現在電撃のコミック誌でプロとして活躍している漫画原作者の貴重な原稿を参考用として掲載いたします。
これから投稿する作品向上に役立つ要素がたくさん詰まっているのでぜひ一読してください。

  • 第3回月刊コミック電撃大王連載中『現代魔女の就職事情』第7話原作:相沢沙呼×作画:はま
  • 第2回月刊シルフ連載中『この恋に未来はない』第1話原作:粉子すわる×作画:森橋ビンゴ
  • 第1回読み切り版『ミサイルとプランクトン』原作:田中ロミオ×作画:筒井大志

第2回
月刊シルフ連載中『この恋に未来はない』第1話
原作:森橋ビンゴ×作画:粉子すわる

■同・クラブ棟・幻想文学研究会前
 クラブ棟。『幻想文学研究会』という古びた木製の看板を掲げた扉。

■同・幻想文学研究会・部室
 壁中に本棚が置かれた部室。どの本棚にもギッシリと古びた本が乱雑に詰め込まれている。
 空いているスペースに机がひとつ置かれており、その机に突っ伏して正樹がヨダレを垂らして寝ている。
 外から扉を開け姿を表す雄二。正樹の姿を冷たい眼差しで見つめる。

雄二『……』

 そっと扉を閉め、正樹に近付く雄二。
 その耳元で、

雄二『正樹!』

 その音に、体をビクつかせる正樹。

正樹『ふがッ!?』

 と、体を起こし、雄二に気付く。ボサボサの頭を掻きながら、

正樹『ンだよ…人が気持ち良く寝てんのに』

 雄二、空いているスペースに鞄を置きながら、

雄二『部室で寝るぐらいなら講義出たら?』

 正樹、あくびをしながら、

正樹『心理学だろォ? 期末にレポート出しゃ出席悪くてもどうにかなるって部長が言ってたぜ』

 正樹の向かいに腰を下ろす雄二。

雄二『出席さえしてればそのレポートもいらないけどね』

 煙草をポケットから出して咥える正樹。

正樹『やだよ、面倒くせェ。レポート1枚で済むならその方が楽だろォ』

 身を乗り出し、正樹が咥えた煙草を摘まみ取る雄二。正樹、不服気に雄二を睨み、

正樹『…何だよ』

 背後を指差す雄二。壁に『部室内禁煙』

の貼り紙がある。
 ポケットに手を突っ込み立ち上がる正樹。

正樹『ったく…新部長もくっだらねェルール作りやがったよ』

 雄二、腰を下ろしながら、

雄二『これだけ本を置いてるのに、今まで煙草を野放しにしてた方がおかしいんだよ』

正樹『へえへえ…正論でございますコト』

 ぼやきつつ出ていく正樹。
 雄二、そちらを見て溜め息を吐く。
 ふと、自分の手に持っている煙草に気付く雄二。
 その煙草を咥えていた正樹の唇を回想し、

雄二『……』

 思わず煙草を自分の口に近付ける雄二。

直後、バン! と扉が開かれ、ビクッと体をのけぞらせる雄二。
扉を開けた鮎美、笑顔で、

鮎美『オーッス!』

  雄二、煙草を後ろ手に隠しながら、

雄二『もうちょっと静かに開けられないの…?』

  ドサッと雄二の座っていた場所に座る鮎美。

鮎美『あれ? そんなうるさかった?』

  隣の椅子に置いた鞄を探りながら、

鮎美『あんたって神経質だよねェ』

  その言葉に、微妙そうに鮎美を見つめている雄二。

雄二M『お前がガサツなんだよ…』

  言いながら、テーブルの下で、自分の持っている煙草を見つめる雄二。それから自分の置いた鞄に視線を向ける。

雄二『……』

  鮎美、シャーペンで履歴書を書いている。
  「小笠原鮎美」という名前、「女」、「19歳」の情報が記されている。
  鞄の所から本を持って自分の席に戻る雄二。そこに、正樹が戻ってくる。

正樹『お…?』

  と、鮎美に気付き、

正樹『お前、俺の席に座んじゃねェよ』

  鮎美、カチカチと芯を出しながら、正樹を見る。

鮎美『誰が決めたわけ、そんなの』

正樹『俺様』

鮎美『空いてる席に座りゃいいでしょうよ』

正樹『いいからどけよ! そこじゃねェと落ち着かねェんだよ、俺ァ!』

  鮎美、履歴書に目を戻しながら、

鮎美『…却下。部室はみんなの物でーす』

  正樹、頭を掻きながら、

正樹『…ケッ』

  と、鮎美の履歴書に目を落とす。

正樹『…字ィ間違ってんぞ』

  ガバッと顔を上げて正樹を見る鮎美。

鮎美『嘘ッ!? どこ!?』

  履歴書の「女」の文字を指差す正樹。
  それを眉を顰めて見つめる鮎美。

鮎美『……?』

  正樹、ニヤけて、

正樹『ちゃんと“男”って書かなきゃ駄目だろ、お前』

  ムッとする鮎美。正樹、調子に乗って、

正樹『性別を偽るなんて大罪――』

  突然シャーペンで正樹の顔を突く鮎美。正樹、それをすんでのところでかわし、

正樹『うおッ!?』

  立ち上がり、わなわな震えている鮎美。

鮎美『どうやらブッ殺されたいらしいね、正樹ィ…!』

  たじろぐ正樹。

正樹『おい…冗談だろ、冗談』

  助けを請うような視線で雄二を見て、

正樹『なあ、雄二?』

  雄二、本に目を落としたまま。

雄二『弁解のしようがないね』

  シャーペンを振り上げる鮎美。

鮎美『そこに直れ、貴様ァ!』

  扉の方に駆け出す正樹。

正樹『やべ…ッ!』

  部室から逃げ出す正樹。鮎美、それを追う。

鮎美『待て、コラァ!』

  鮎美も正樹を追って消える。
  その様子を見て溜め息を吐く雄二。
  ふと、鮎美の履歴書に手を伸ばす。
  履歴書に書かれた「女」の文字。

雄二M『あんなヤツでも女なんだもんな…』