出身作家インタビュー

ここでは、電撃小説大賞に応募し、デビューした作家さんに突撃インタビューを行います! あこがれの作家さんたちはどのようにして受賞したのか、貴重な経験を聞いて、作家デビューへの第一歩につなげよう!

  • 第59回 涙爽創太
  • 第58回 星奏なつめ
  • 第57回 結月あさみ
  • 第56回 新 八角
  • 第55回 駱駝
  • 第54回 三鏡一敏
  • 第53回 角埜杞真
  • 第52回 松村涼哉
  • 第51回 鳩見すた
  • 第50回 椎田十三
  • 第49回 成田名璃子
  • 第48回 朽葉屋周太郎
  • 第47回 虎走かける
  • 第46回 青葉優一
  • 第45回 真代屋秀晃
  • 第44回 小川晴央
  • 第43回 有間カオル
  • 第42回 川上 稔
  • 第41回 岬鷺宮
  • 第40回 木崎ちあき
  • 第39回 天羽伊吹清
  • 第38回 天沢夏月
  • 第37回 行田尚希
  • 第36回 浅葉なつ
  • 第35回 仲町六絵
  • 第34回 御堂彰彦
  • 第33回 蝉川タカマル
  • 第32回 菱田愛日
  • 第31回 紅玉いづき
  • 第30回 上遠野浩平
  • 第29回 樹戸英斗
  • 第28回 エドワード・スミス
  • 第27回 綾崎隼
  • 第26回 三枝零一
  • 第25回 三河ごーすと
  • 第24回 多宇部貞人
  • 第23回 沖田 雅
  • 第22回 聴猫芝居
  • 第21回 峰守ひろかず
  • 第20回 乙野四方字
  • 第19回 兎月山羊
  • 第18回 渡瀬草一郎
  • 第17回 山口幸三郎
  • 第16回 土橋真二郎
  • 第15回 鈴木 鈴
  • 第14回 杉井 光
  • 第13回 志村一矢
  • 第12回 九岡 望
  • 第11回 高橋弥七郎
  • 第10回 三雲岳斗
  • 第9回 阿智太郎
  • 第8回 支倉凍砂
  • 第7回 支倉凍砂
  • 第6回 佐藤ケイ
  • 第5回 成田良悟
  • 第4回 蒼山サグ
  • 第3回 水瀬葉月
  • 第2回 和ヶ原聡司
  • 第1回 川原 礫

第35回 仲町六絵

プロフィール

2010年に『典医の女房』で、短編ながら第17回電撃小説大賞〈メディアワークス文庫賞〉を受賞。受賞作に大幅加筆した『霧こそ闇の』でデビュー。他の著作に、『夜明けを知らずに ―天誅組余話―』『からくさ図書館来客簿』シリーズがある。メディアワークス文庫の最新刊『からくさ図書館来客簿 第三集 ~冥官・小野篁と短夜の昔語り~』が11月22日に発売!

からくさ図書館来客簿 第三集 ~冥官・小野篁と短夜の昔語り~
質問
小説を書き始めたのはいつ頃からですか?
回答
物語の断片は、子どもの頃から時々書いていました。
大人になってからとある賞に別の筆名で応募して二次選考を通過しましたが、それ以後は小説を書かなくなりました。書きたいことが何もなかったからです。
2008年の夏、あやかし及び日本の土着的な神様と人間との関わりを小説に書こうと思い立ち、毎日継続して書くようになりました。デビューが決まったと連絡を受けたのは2010年の夏です。
質問
受賞するまでの投稿歴を教えてください。
回答
第20回ゆきのまち幻想文学賞(入選)、第4回『幽』怪談文学賞(最終候補)、第5回『幽』怪談文学賞(佳作)など。
小説の投稿を始める前ですが、20代の初めから半ばにかけて、短歌誌に毎月投稿していました。この時期にどうにか文体の基礎が出来上がったような気がします。
質問
電撃小説大賞に応募しようと思ったきっかけ、理由を教えてください。
回答
第4回『幽』怪談文学賞で最終候補に残った際、審査員の京極夏彦先生から「(この応募作品は)読み手を怖がらせるつもりで書いていない」というような評をいただきました。まったくその通りでした。あやかしは書くけれど、読み手に怖がって欲しいと思っていない。ならば私が書いている小説は、出版社の人たちからは何のジャンルだと見なされるのだろう、と考え込むようになりました。
そんな折、電撃大賞に応募して一次選考を通過すればプロの編集者による評価シートが返ってくると聞いて、渡りに船とばかりに応募しました。
自分では時代伝奇のつもりで『典医の女房』を書き上げ、果たして何のジャンルだと評価されるのだろう、と評価シートを心待ちにしていました。
結果的には思いがけずメディアワークス文庫賞をいただいたわけですが、出版時に上田秀人先生が書いてくださった帯文に「これぞ伝奇小説である」とあって、喜びをかみしめたのを覚えています。
質問
受賞作のアイデアは、何から着想を得たのでしょうか?
回答
『雨月物語』の作者、上田秋成の伝記から着想を得ました。『今昔物語』や『大乗院寺社雑事記』の影響もあります。
質問
受賞作を書く際に心がけていたこと、工夫したこと、苦労したことを教えてください。
回答
いつも通り楽しんで書くこと、耳から入ってきた時に心地よく響く文章にすることを心がけました。
書き上げてから二日ほど原稿を放置し、気分を変えてから見直しました。
質問
応募した後、各選考段階の発表などはチェックしていましたか? 結果を待っている間はどんなお気持ちでしたか?
回答
電撃大賞の公式サイトでチェックしていました。もし一次選考や二次選考で落ちていたら、小説の書き方を多少変えてみようと思っていました。
ちなみに、主人公の狭霧は一児の母親という設定なので、デビューの可能性はないと考えていました。
電撃文庫もメディアワークス文庫も読んだことがありませんでしたが、さすがに「母親」は若年向け小説のヒロイン像として求められていないだろうと予想していたのです。
どこかの段階で落選するだろうけど、小説をずっと楽しんで書き続けることには変わりはない、と思っていたので、不安や憂鬱な気持ちはいだいていませんでした。
二次選考の結果発表から何日か経った頃、「編集部から連絡がないから、三次か四次で落ちたのかもしれない。次も室町時代周辺の小説を書いてどこかに送ろう」と思ってあらすじを考えようとしていたら、編集部から「デビューが決まりました」とお電話をいただきました。
質問
受賞の決め手は何だったと思いますか?
回答
途中にどんでん返しがあったから、短編でも受賞できたのだと思います。戦国時代の大和(奈良県)の武将や神社、神秘的な存在としての狐など、題材の組み合わせが比較的珍しかったせいもあると思います。
質問
デビュー当時の思い出などを聞かせていただけますか?
回答
受賞作『典医の女房』に加筆して一冊の本になった『霧こそ闇の』を、長い間お世話になった図書館に寄贈しました。ありがたいことに二館とも快く受け取ってくださいました。
質問
デビュー後、小説を書いていて大変だったこと、また楽しかったことはありますか? それぞれ教えてください。
回答
業務マニュアルを自分で一から作らなくてはいけないので、その点は大変でした。どんな道具を使うか、どんな風に資料を整理するのか、などなど、今でも試行錯誤することがあります。ですから、気にかけてくれる周囲の人たちに「無事に本が出るよ」と報告ができた時は心の底からほっとします。
書いていて楽しいのは、好きな物を言葉の中に生かせたと感じた時です。草花や京都の風物、日本のお寺や神社の歴史、これまでに出会った面白い人たちや優しい人たち、そして短歌など、小説にしたいことは数え上げればきりがありません。
今度の新刊『からくさ図書館来客簿 第三集』のサブタイトルは『冥官・小野篁と短夜の昔語り』といいますが、これは「麻の葉に雨降る姉といもうとの遠世がたりに朝の雨降る(※注1)」という短歌が元になっています。「短夜」が「朝」に対応し、「昔語り」は「遠世がたり」に対応しています。また、先述の新刊には、芽吹いたばかりの青楓を模した『青み楓』という上生菓子が出てきます。この銘は「此頃の二日の雨に赤かりし楓の若芽やや青みけり(※注2)」から生まれました。
※(注1 馬場あき子 作)(注2 伊藤左千夫 作)
昔の人たちの文体を模倣して作中に取り込むのも楽しいです。『からくさ図書館来客簿』の第一集では、道元の『正法眼蔵』の文体を参考にして、施餓鬼会で詠唱する呪文を作成しています。また、今度刊行される第三集では、曲亭馬琴の『南総里見八犬伝』の文体を参考にしながら、馬琴自身に即興で物語を語らせています。
小説を書く仕事を続けていくうちに、興味の対象や知識が広がっていくのも楽しいことです。新刊の取材のために隠岐諸島へ行った時、日本海を行くフェリーの甲板からまったく陸地が見えず「怖い!」と感じると同時に、「小野篁は隠岐に流される時『わたの原八十島かけて漕ぎ出でぬと……』と詠ったけれど、陸路ではなく瀬戸内海を経由して日本海側へ出たのではないか」と思いました。「八十島かけて」は現代語に訳すと「多くの島を越えて」ですが、修辞上の都合でそう詠っただけでなく、実際に多くの島が点在する瀬戸内海を経て隠岐に至ったような気がしたのです。もっとも、実際に見た景色を元にして歌を詠むというやり方は、平安期の歌人としては珍しいです。
この隠岐での取材以来、海に対する興味が深まったように思います。
質問
小説を書く上で、普段から心がけていること、大事にしていることはありますか?
回答
一言でまとめると、今までに自分が何を学んだか覚えておくことが大事だと思います。これは、『からくさ図書館来客簿』シリーズに繰り返し出てくる命題でもあります。
また、言葉を綴る楽しさを忘れないようにしています。先日電車で数学者・岡潔の『春宵十話』を読んでいて興味深かったのは、連句をどのくらいのスピードで詠めるか試してみたという話でした。連句とは、誰かが「五・七・五」の文字数で詠んだ詩句に別の人が「七・七」の文字数で続きを付け、そこからまた「五・七・五」、「七・七」……と、文字数を交互に変えて続けていく遊びです。
岡の友人で物理学者の中谷宇吉郎がまず「初秋や桶に生けたる残り花」と詠んだ後、岡が「西日こぼるる取り水の音」と続けるのに十秒。また「秋の海雲なき空に続きけり」という句に、「足跡もなく白砂の朝」と続けるのに同じく十秒かかったとか。自分でもすぐに真似をしてみたのですが、「初秋や……」に対して「つぼみに光る白玉の露」という続きを考え出すのに二分、「秋の海……」に「汽笛ののちに船の影見ゆ」と続けるのに一分かかりました。岡潔にも中谷宇吉郎にも到底かなわないと思ったのですが、楽しむ方向で言葉を用いるのはやっぱり面白い、と実感しました。
質問
作家になってよかった、と実感するのはどんな時でしょうか?
回答
小説を楽しそうに読んでいる人を見かけた時、「小説って良いものだな」と嬉しくなります。自分自身が面白い小説に出会った時もそう思います。
読者の方からお手紙をいただいて、小説を読んでいる間楽しい時間を過ごせたことや、読んだ後の暮らしに良い影響があったことなどを知ると、「良いお仕事をさせていただいている」と実感します。
イラストやデザインが出来上がってきた時、刷り上がった見本誌が家に届いた時も嬉しいです。
回答を書いている間に、一つ大事なことを思い出しました。2011年3月初旬、梅の花が咲く頃に『夜明けを知らずに』の取材で奈良県十津川村へ行き、山間の池で金魚の群れが泳いでいるのをぼんやり見ていました。その時ふと、「ここまで来られて良かった、小説を書いていて良かった」と思いました。張り詰めていた気持ちがほぐれていくような、幸せな旅でした。
質問
最後に、これから電撃小説大賞に応募する方々へひと言アドバイスを!
回答
選考に通ったらどうするか、または落選したらどうするか、それぞれ次の行動を具体的に考えておくと能率が良いと思います。
応募を検討されている方に向けてお話しする、ということで色々と細かい内容になりましたが、今後の参考になれば幸いです。