第21回電撃大賞 入選作品
電撃コミック大賞部門

選考委員奨励賞受賞作

『初恋は過去形、失恋は進行形』(コミック原作作品)

空屋 巡

受賞者プロフィール

小説執筆を始めてから十数年。作曲・コント作りなどの盛大な寄り道を経て、数年前に物語作りに帰還しました。これからもあちこちよそ見すると思いますが、全部取り込んで物語に変えてやろう、と画策しています。

受賞者コメント

拙作を栄誉ある賞に選出していただき、誠にありがとうございます。長編小説ばかり書いてきた身としては、コミック化を前提とした作品作りというのは新鮮で、難しくも楽しいものでした。ですが実は、伝えたい言葉や見せたい場面は、まだまだあったりするのです。それらを楽しんで受け取ってもらえるように、これからも試行錯誤しつつ物語を作っていこうと思います。

選考委員選評

※本選評は応募時の原稿に対してのものです。

  • 高河ゆん(漫画家)

    荒削りなところがありますが、キャラクターの面白さ、きちんと構成しようとした努力を評価したい。「原作」は、正直作画しだいでよくも悪くもなってしまう側面を持っています。その中でこの作品は、「作画」を意識して書かれていた点もよかった。まず作画者に伝わらなければ、「マンガ」として完成するのが難しくなるのでコミック原作投稿者は「指示書」としての原作も意識してください。マンガになった時をイメージして書くのも大事です。マンガの原作と小説のあらすじはまったく別の物です。今回ひとりよがりの原作が多かったように思います。

  • 綱島志朗(漫画家)

    いいましょうか…特に判断が苦しかったです。この作品、描いてみたらドタバタコメディで楽しそうなのは伝わってきますが、それを描き手に伝えるものが揃っていない。小説でもなく、シナリオでもないといった感じです。今後コミック原作としてやっていこうと思うのならストーリーとは別に、字で描き手に展開を分からせる力を磨いていってください。

  • 大河内一楼(アニメーション脚本家)

    「好きな人に1000回フラれないと元の世界に戻れない」というアイデアはいいですね。好きなのに、フラれるために頑張るという、それだけで面白いです。会話のテンポもよいし、流れも素直で、読んでいてアッと言う間でした。ラストも、ちょっとご都合な感じもありますが、エンタメとして気持ちよい場所に着地してると思います。ただ、現状では、コミック原作ではなく小説です(原稿の形式の問題ではなく)。コミック原作ということについて、もう一段、深く考えてもらえると、デビューに近づけると思います。

  • 吉積 信(株式会社バンダイナムコゲームス『テイルズ オブ』シリーズ統括プロデューサー)

    いい意味でベタであるといえます。商業作家になろうとするなら決して悪いことではありませんのでご心配なく。パラレルワールドをコミックで楽しく、ロジカルに、かつピンとくる形で表現するのは難しいんじゃないかと思いましたが、高河先生が「むしろコミックはそういうのに向いているんですよ」と仰ったので納得しました。先生が仰るんなら間違いないです。また、今回コミック原作として審査したすべての作品に言えるのですが、欲を言えば、読み手に突き刺さるような文章力が欲しいです。

  • 鈴木一智(アスキー・メディアワークス副BC長、第2編集局統括編集長)

    ネーム形式ということで最初は小説選考の基準で読んでしまい、説明過多の文章や詰め込み過ぎの設定に果たしてこれはマンガに出来るのかと思っていたのですが、選考委員の先生方の“描き手に伝えるべきイメージが押さえられている”という意見を聞き納得。ラブコメとパラレルワールドいう取り合わせがユニークで楽しい作品です。

  • 梅澤 淳(第1編集局担当局長)

    原作作品の評価としては「コミックにしたらどれだけ面白くなるか?」という点に注目した。その点において本作は、過去の恋愛フラグを折りに行くという、面白いシーンがたくさん作れそうな点を評価した。ただし設定の都合で色々なトラブルが一気に解決してしまう物語展開はやや肩透かし。

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