第21回電撃大賞 入選作品
電撃コミック大賞部門

選考委員奨励賞受賞作

「課題作『探偵・日暮旅人の探し物』」(コミカライズ作品)

ゆうき莉子

受賞者プロフィール

会社員を経て、プロのマンガ家としてデビュー後、細々と描かせていただいております。著作『椿館の美しすぎるギャルソン』(フレックスコミックス)等。

受賞者コメント

電撃大賞に応募して、結果を出せなかったらマンガ稼業を辞めよう、という決意でもって投稿しました。日暮旅人シリーズが好きで一読者だったことと、コミカライズをやってみたかったので課題作品として描かせてもらいました。今まで描いた原稿の中で、一番難しく、一番楽しかったです。さまざまな理由で、この仕事を続けようかどうしようか悩んでいましたが、受賞を励みに、初心に返って精進し、少しでもお役に立てる仕事が出来れば嬉しく思います。

選考委員選評

※本選評は応募時の原稿に対してのものです。

  • 高河ゆん(漫画家)

    丁寧で好感の持てる画面作り。読解力と表現力があり、マンガ化するのが難しい小説作品も上手くまとめています。こうした作者の文系的な力は、コミカライズにおける大きな武器だと思います。今やコミカライズは重要なメディア展開のひとつになり、原作に対する理解と愛情を持った優秀な作画者は需要があります。目をひく絵も描けており、今後にも期待できる人です。

  • 綱島志朗(漫画家)

    自分の得意なものとそうでないものが、はっきり出ている作品です。キャラクターがすごく魅力的に描けている場面もあれば、角度によって苦しい絵もあります。特に背景は実力不足を感じました。ストーリー上、リアルな背景描写と合わせてこそ、主人公の能力に説得力がでるので、今後自分の苦手なものにもチャレンジして、克服していきましょう。

  • 大河内一楼(アニメーション脚本家)

    とても丁寧に原作を再現しているのが好印象でした。話運びも過不足なく、主人公の超常の力を、視覚で再現しているのもよかったですね。小説をマンガにした価値を感じます。ただ、少しだけ個性に乏しい印象を受けました。コミカライズとはいえ、ゆうきさんの作品なので、どこを押して、どこを引くのかはもう少し大胆でもよかったかもしれません。日暮旅人がめちゃめちゃカッコいいとか、ヒロインにすごく感情移入できるとか。次回作に期待しています。

  • 吉積 信(株式会社バンダイナムコゲームス『テイルズ オブ』シリーズ統括プロデューサー)

    線が明確で、かなり難しいと思われる「音」や「香り」などのキーとなる各要素の【視覚化】がとても工夫されていて見事だったと思います。ただ、全体的にどのコマも大きめに切られているのが気になりました。もっと面積=視点の遠近でメリハリをつけたほうが、リズムが出せたのではないでしょうか。個人的には主人公のデザインが、原作を読んだ時の予想よりも浮世離れしていると感じましたが、原作ファンへのサービスと考えれば許容範囲でしょうか(笑)。

  • 鈴木一智(アスキー・メディアワークス副BC長、第2編集局統括編集長)

    五感を視覚化するというオリジナル小説の特性を活かした作り。“俺妹”と同様に描き手が原作をよく読み込んでおり、キャラの魅力が充分に引き出されています。背景や構図がいささか心許ないのですが、一本のコミック作品としてきちんと成立しており、シリーズ展開も期待できる出来。興味深いスキルを感じさせる方です。

  • 梅澤 淳(第1編集局担当局長)

    作画にはすこし未熟なところも見受けられるが、主人公が特殊能力を発揮するシーンなど、抽象的なテキストを具体的なビジュアルにする表現力を大いに評価。そしてそのシーンがきちんと本作の見せ場になっている点も漫画的で良い。

TOP