第21回 電撃大賞 入選作品
電撃小説大賞部門

金賞受賞作

『運命に愛されてごめんなさい。』

著/うわみくるま

電撃文庫

運命に愛されてごめんなさい。

著者   : うわみくるま
発売日  : 2015年2月10日

毒舌ドライな美少女転校生が、僕に下剋上の運命を告げる!!

毒舌ドライな美少女転校生が、僕に下剋上の運命を告げる!!

あらすじ

運命が全てを支配する我が校には、運命力学に従って、毎週月曜日に転校生がやってくる。運命を体現する転校生の予言は、今まで外れたことがない……のだが、今回の予言は一味違う。何しろこの僕、皐月純が今月末には生徒会長になるというのだ――えっマジで!? 突拍子もない予言に翻弄され、現生徒会長はエロい姦計を巡らすわ組織を動かすわのえらい騒ぎ。頼みの綱の転校生も、やることなすこと毒舌混じりな、ツンドラ無気力美少女で……!

受賞者プロフィール

1987年、たいして広大でもない鳥取の砂丘からポツリと生まれる。以降、荒廃した大地の中で、迷走しながら成長する。現在も鳥取在住。

受賞者コメント

選考に携わられたすべての方々に感謝いたします。ライトノベル作家としてデビューするにあたり、この上ないスタート地点に立たせていただきました。高校時代より慣れ親しんだ電撃文庫が、これからも一層発展できるよう、微力ながら貢献できたらと思います。この度はありがとうございました。

選考委員選評

※本選評は応募時の原稿に対してのもので、刊行されたものとは異なります。

  • 高畑京一郎(作家)

    戦国時代劇をパロディにしたような、コミカルなドタバタ群像劇。物語の密度も濃く、登場人物も多いのに、皆、魅力的に描けている。なにより驚いたのは、こんなにおちゃらけたお話なのに、盛者必衰・諸行無常を感じさせる事。あの終わらせ方も、不思議な余韻があって好きです。

  • 時雨沢恵一(作家)

    ぶっ飛んだ設定にツッコむのはもう最初から放棄して、素直に面白く読めました。最初から最後まで首尾一貫してゲスな性格の主人公が、かなり素敵です。最初は、託宣通りに権力の座を手に入れて終わりかと思っていたので、その後の転落していく展開が特に好きです。

  • 佐藤竜雄(アニメーション演出家)

    戦国ドラマを学園内で行う、盛者必衰の顛末。主人公が生徒会長になるまでと、そこから追い落とされるまでを同じ分量、同じバランスで構成してある分、いささか冗長に思えた。運命には愛されなかったけれど、友人達には愛されていた……そんな感慨があまりピンと来ないのはその辺りのせいなのかもしれない。話のヤマ場として学校の中での大立ち回りを選んだ作品が今回最終選考に二つ残ったが、天下取りならば合戦は当然、ということで説得力はこちらの方が大きかった。

  • 荒木美也子(アスミック・エース株式会社 映画プロデューサー)

    審査の段階で『マンガの神様』『イデオローグ』と、学園もの3作の比較評価が熱く議論されましたが、完成度で一番高い評価を受けた作品です。転校生のお告げが何故最後に至るまで重視され続けるのか、“おごれるものは久しからず”なのに主人公にとってあまりに都合よすぎのラストといった点に?を抱きつつも、登場してくるキャラたちの面白さと展開が勝っての金賞です。

  • 鈴木一智(アスキー・メディアワークス副BC長・第2編集部統括編集長)

    運命力を持つ転校生という奇抜な発想を軸に描かれる一風変わった学園コメディ。とはいえ内容の大部分は生徒会長の座を巡る権力抗争。主人公は卑怯で姑息な根性曲がりで転校生の謎については一切説明なしという非常に個性的かつ強引な設定なのですが、権力を手にしたと思ったらあっという間に凋落した某政党のような主人公(笑)をスピード感のある筆致で一気に描いています。このノリを笑えるか否かで好みが分かれそうな作品ですが、ナンセンス・コメディに徹した姿勢を評価しました。

  • 三木一馬(電撃文庫編集長、電撃文庫MAGAZINE編集長)

    この作品には、転校生によるお告げは必ず実現するという『運命力学』なるオリジナル設定があります。しかしこの設定の仕組みは一切描かれません。むしろ、よけいな説明をするより、主人公のゲスい行動を見た転校生シイナちゃんのクール可愛いリアクションに紙面を費やすぜ!という作者の強い意志をこの作品からは感じました。そしてそれが高評価に繋がったのだと思います。所詮、人は『運命の奴隷』。それに抗う主人公はある意味カッコ良かった。

  • 佐藤達郎(メディアワークス文庫編集長)

    運命力学によって毎週やってくる転校生が予言を語る。まずこの問答無用の設定が突き抜けていて笑えました。バカでエロな主人公が予言通りに生徒会長という最高権力を手に入れるまでの展開もスピーディでテンポがよく、「運命に従う会」や「治安維持部」といった荒唐無稽なクラブのキャラ達が作品を更に盛り立てていたと思います。だた、権力を失っていく物語の後半は、言わばフィルムの逆回転なので早回しの方がよかったのではないでしょうか。

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