第21回 電撃大賞 入選作品
電撃小説大賞部門

電撃文庫MAGAZINE賞受賞作

『バリアクラッカー 神の盾の光と影』

著/囲恭之介

電撃文庫

バリアクラッカー 神の盾の光と影

※応募時の原題『バリアクラッカー』より改題

著者   : 囲恭之介
発売日  : 2015年08月08日

謎とスリルが加速するゴシックミステリー。

謎とスリルが加速するゴシックミステリー。

あらすじ

あらゆる傷と病いを防ぐ不可視なる神の盾・アイギスを人類が持つ世界。平和と繁栄を謳歌する千年都市アーモロートで起こるはずのない殺人事件が起こる。アイギスを無効化するバリアクラッカーの存在が噂されるなか、異端審問官ベルヘルミナは相棒の情報屋クリカラとともに事件の真相を探り始める。しかし自らもアイギスを失ったことにより異端の嫌疑をかけられ――。そしてベルヘルミナは苦難の探索の末、驚愕の真実にたどり着く。

受賞者プロフィール

生まれも育ちも千葉県佐倉市。ハラハラ謎解きストーリーが大好物。自キャラが掴めない青春時代を経て、芝居畑から図書館員へと迷走転身。その後、執筆に打ち込むようになり現在に至る。学生時代から没頭してきたTRPGで、脳味噌を日々トレーニング。創作意欲の原点は、ここかもしれない。

受賞者コメント

“何者でもない自分”が何かを成そうと足掻く内、いつしか“面白い物語を世に出して生きたい”という野望に駆られるようになりました。そんな野心は、世の荒波の前でコテンパンにされてきましたが、ダウンを重ねながらも、KOされなかったのは幸いでした。この度の身に余る受賞は、カウンターパンチを放つチャンスを頂けたかのようです。本作を推してくださった選考委員の皆様、編集部の皆様、ありがとうございました。

選考委員選評

※本選評は応募時の原稿に対してのもので、刊行されたものとは異なります。

  • 高畑京一郎(作家)

    読んでいて情景も浮かぶし、アクションシーンにも臨場感がある。全体の構成も綺麗にまとまっているし、なんでも書ける作家さんだと思った。ただアイギスシステムについては、理解はできるが腑に落ちないというのが正直なところ。もう少し、「そういう経緯があったなら、こういうシステムができるのも不思議じゃないな」と思える理由付けが欲しかった。

  • 時雨沢恵一(作家)

    SFでありファンタジーでもあり、アクションもミステリーも楽しめる作品でした。ネタバレになるので仕組みを詳しくは書きませんが、キャラクター達の物理的な痛み描写が、本当に痛そうでした。中盤、割と容赦なくキャラクター達が惨殺されていくのですが、そのへんの“痛み”も含めて。

  • 佐藤竜雄(アニメーション演出家)

    教会、異端者という設定と「世界」のスケール感がチグハグ。中世レベルの世界観を一気に未来に結びつける『黙示録』についてはもう一工夫欲しかった。バリアクラッカーを逮捕しても世界は変わらない、その辺りを端折らないで描いた方がよかった。諸々出し惜しみをしているせいか、エピローグが明らかな続編狙いに見えてしまう。一つの話としてのカタルシスの大きさを意識してほしかった。

  • 荒木美也子(アスミック・エース株式会社 映画プロデューサー)

    西洋の魔女狩りに準えたような設定で、ミステリー&ファンタジーとしてのストーリーテリングがある作品でした。ただ、ベルとナレシュの関係の変容はわかるものの、ベルがナレシュに勝利した後、運命に翻弄された兄、妹としての感情の切なさを描いていないことが、ラストの深い感慨に至らない要因になっていることは否めない。

  • 鈴木一智(アスキー・メディアワークス副BC長・第2編集部統括編集長)

    手堅くメリハリのあるストーリー展開と良く練られた設定で纏まりのある作品世界を構築しています。キャラはステロタイプではあるものの各々の役割をきちんと全うしており、典型的ツンデレのシビルも今後活躍しそうな予感(笑)。ハイファンタジーと見せかけて実はSF設定という構造は賛否ありましたが、エンタメ小説としての完成度は非常に高く、個人的には大賞候補だった作品です。

  • 三木一馬(電撃文庫編集長、電撃文庫MAGAZINE編集長)

    女の子主人公ベルと情報屋クリカラの、いがみ合いつつも協力していくという関係性が王道で楽しめました。この作品は最後に意外な『オチ』が待っているのですが、その『オチ』をテーマにした作品が、今回の小説大賞の選考過程で複数存在していました。どうしても同じカテゴリの『オチ』は読み比べてしまいます。そんな作品群の中でも、この作品は優秀であったと思います(皆様、『オチ』は出版されたときに是非確かめてください)。

  • 佐藤達郎(メディアワークス文庫編集長)

    教会が統治する世界に、異端審問官の主人公。中世舞台のファンタジーかと思いきや、読み終えてみると遠未来の壮大な物語であったことに気づかされます。冒頭の捕り物シーンから殺人事件、推理と犯人の追跡、そしてバトルに世界の真実の解明まで、一気に読ませる勢いのある作品でした。謎解きの過程にやや強引さが目立ったことと、主人公が目指す理想と行動に整合性が欠けている点が気になりました。

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