第22回 電撃大賞 入選作品
電撃小説大賞部門

金賞受賞作

『ヴァルハラの晩ご飯 ~イノシシとドラゴンの串料理(ブロシェット)~』

著/三鏡一敏

電撃文庫

ヴァルハラの晩ご飯 ~イノシシとドラゴンの串料理(ブロシェット)~

著者   : 三鏡一敏
発売日  : 2016年2月10日

神界の台所“ヴァルハラキッチン”を舞台に贈るやわらか神話&冒険ファンタジー!

神界の台所“ヴァルハラキッチン”を舞台に贈るやわらか神話&冒険ファンタジー!

あらすじ

ヴァルハラ。神さまたちがすまう国。主神オーディンさまの導きでボクはここにやってきた――《ご飯》として。あ、ボクの名前はセーフリームニルっていって、死んでも何故か生き返れる変な力を持ったイノシシなんだ(人型にもなれるよ)。毎晩ご飯になる日々なんて辛すぎるけど、愛しのヴァルキューレ・ブリュンヒルデさまのためにも頑張るぞぅ……って、なんですロキさま? え? 神界のピンチだからボクを連れてくってどういうことでうわああぁー。

受賞者プロフィール

埼玉県在住。色々あって自分の在り方に疑問を抱き、「やりたい事」の中から「やれそうな事」を選んだ結果、分不相応にも作家になる道を志す。アニメ・ゲーム・漫画大好き、とにかく遊ぶ事が好きな人。仲の良い兄弟が二人。特に兄とは双子の間柄でして、それがPNの由来の一つだったりします。

受賞者コメント

この度は栄えある賞を賜りました事、大変嬉しく思っております。この栄に浴する機会を与えて下さった全ての方々、全ての機縁に最大級の感謝を。思い起こせば私が電撃大賞に作品を応募し始めたのは第14回から。そこから毎年1次落ちを繰り返し、第21回でようやく1次通過。そして今回ついに受賞と、我が事ながらいきなりの飛躍にビックリです。この気持ちに負けないくらいの驚きを提供していけるよう、精一杯頑張ります。

選考委員選評

※本選評は応募時の原稿に対してのもので、刊行されたものとは異なります。

  • 高畑京一郎(作家)

    北欧神話の世界を舞台にした、可愛い女の子盛り沢山の物語。……なのだけど、そのストーリーラインは意外に骨太。「毎日殺される主人公」であるにも関わらず、死の重さというものが物語全体に通底しており、それが最後の戦いの迫力を産みだしてもいる。しかし、その過酷な毎日を考えると、彼の能天気っぷりは異様なレベル。記憶と共に心の一部も欠落したのか、あるいは能天気に努める事で精神のバランスを保っているのか。そのあたりの説明も欲しかった。

  • 時雨沢恵一(作家)

    思い切り意表を突かれた作品。タイトルを読んで、『ファンタジー世界の(最近流行の)グルメ物なんだろうな。主人公がいろいろと料理するんだろうな』と思ったら、冒頭でいきなり、“はっ! 料理されてる!” まあ驚きました。実は私、北欧神話にはまったく詳しくないのですが、とても楽しく読めました。知っていたらもっと楽しめるはず。

  • 佐藤竜雄(アニメーション演出家)

    のほほんと牧歌的な日々を送る主人公。そんな彼の本当の凄さと壮烈さは神の心をも打つ。ラブコメ部分が呑気であればあるほど後半の展開でその辺りが明らかになる……筈なのだが、いささか前半部分が長いために、時折見せる彼の持つ無常観の印象が非常に薄く、勿体無い。その辺りのバランスが改善されればカタルシスと共に痛みを読者に与えるはず。

  • 荒木美也子(アスミック・エース株式会社 映画プロデューサー)

    北欧神話のキャラクターがベースになっており、オリジナル性として、いかがなものかという方もいるかもしれないが、逆に、そういうところに目をつけたところが、私にはとても新鮮に感じました。マタイの福音書では、新しい酒を古い革袋に入れる=共にダメになるという意味になっていますが、この作品は、古い酒を新しい革袋に入れたことで、共に活きる、蘇ったと、感じました。個人的には、大賞をあげたかった作品です。

  • 佐藤辰男(カドカワ株式会社 代表取締役会長)

    北欧神話に詳しくないので、ググりながら読み進めたが、巧みに北欧神話の世界設定と登場人物の特質を生かし、魅力的な物語を創造していることがわかる。明るく楽しい作品だが、勇気ある死とよみがえりという神話の重要なテーマはきちんと織り込んでいる。華やかな戦乙女たちの戦闘シーンや竜の戦いを映像で是非見てみたい。

  • 鈴木一智(アスキー・メディアワークス事業局 統括部長))

    “エンタメノベルで学ぶ北欧神話”というアイデアが本作を受賞に導きました。最近のSNSゲームにも神話キャラがよく使われており、スマホで遊ぶ今どきの若い読者にも親和性があるように思います。一般的なハイファンタジーのようにゼロから世界観を構築しなければならないリスクは軽減されている一方で、ドラマとしての面白さを原典に委ねてしまっている部分もあるので、改稿の際は予備知識無しでも楽しめる物語演出に留意していただきたい。

  • 三木一馬(電撃文庫編集長、電撃文庫MAGAZINE編集長)

    軽快な語り部のイノシシ(少年)による、著者曰くの『ラノベ版北欧神話』。神話の切り取り方が上手く、読む側に「なるほど」と思わせる『知識を得る快感』を提供してくれる作品でした。反面、イノシシの正体が判明するオチは、神話を知っていないと楽しめないところが気になりました。北欧神話でも更にメジャーどころもバンバン登場させるオールスターでも良かったかもしれません(その方が北欧神話を知らない人には親切ですから)。

  • 佐藤達郎(メディアワークス文庫編集長)

    北欧神話ネタ満載の楽しい作品でした。北欧神話をよく知らなくてもコメディとして面白く仕上がっていましたし、元ネタを知ると何倍も楽しさが増すので知識欲も刺激されます。わが身を毎日犠牲にしつつも健気で前向きな主人公のイノシシのセイや、人間味溢れる神々のキャラもみな魅力的でした。全体的に小ネタが中心だったので、物語を通して一本の筋を作るとまとまりが出たと思います。

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