第22回 電撃大賞 入選作品
電撃小説大賞部門

金賞受賞作

『俺を好きなのはお前だけかよ』

著/駱駝

電撃文庫

俺を好きなのはお前だけかよ

著者   : 駱駝
発売日  : 2016年2月10日

俺はパンジーこと三色院菫子が大っ嫌いだ。なのに……俺を好きなのはお前だけかよ。

俺はパンジーこと三色院菫子が大っ嫌いだ。なのに……俺を好きなのはお前だけかよ。

あらすじ

ここで質問。もし、気になる子からデートに誘われたらどうする?
もちろん、超テンション上がるよね。鈍感系無害キャラの『僕』だってそう。しかもお相手は一人じゃないんだ。クール美人系生徒会長・コスモス先輩と天然可愛い系幼馴染み・ひまわりという二大美少女!!意気揚々と待ち合わせ場所に向かうよね。そして告げられた『想い』の中身は! ……親友との『恋愛相談』かぁ……ハハハ。……はい! 猫被りはやめました! ここからは『俺』が一念発起する時間だぜ!

受賞者プロフィール

神奈川県在住。好きなアニメはロボット&メカアニメ。特に、合体やパージにテンションが上がる系男子。頭皮に不安を持ち、将来的に髪の毛がパージされ、カツラをパイルダーオンしないためにも日々頭皮マッサージは欠かせません。愛用のシャンプーは「馬油」です。

受賞者コメント

「俺の名は駱駝。属性は堕落」とまぁ、冗談はさておき……この度は第22回電撃大賞金賞、誠にありがとうございます。『間違っているのは世界じゃない。俺の方だ』と思い続けて早5年。ここまで辿り着けて、感極まっております。無論、まだスタート地点に立っただけのヒヨッコですので、今後とも努力を欠かさず、いずれは電撃文庫を代表する作者様方の仲間入りとフサフサのおじいちゃんを目指し、日々、精進していきます。

選考委員選評

※本選評は応募時の原稿に対してのもので、刊行されたものとは異なります。

  • 高畑京一郎(作家)

    融通無碍と言うべきか自由自在と言うべきか、好き勝手に書いているなぁという印象。しかし、それでいて読ませる力が確かにある。ストーリーの終着点に向かって、迷い無く突き進むような力強さを感じた。ジョーロやパンジーを始めとした登場人物たちも皆ひと癖あって面白い。さすがにこれは描写を省略しすぎだろうという点も幾つかあったが、それも簡単に修正が利くレベル。ぐいぐい読めて、読んだあと素直に「ああ、面白かった」と言える作品だと思います。

  • 時雨沢恵一(作家)

    今回の最終選考作の中で、個人的に最も気に入っている作品です。文章の軽妙さ、シチュエーションの面白さ、ベタベタコテコテだが嫌にならないギャグ展開など、どこをとっても楽しめました。ゲラゲラ笑いながら読みました。電車の中では読めない作品でした。選考会では、ラストのオチが予想できていたか否かで話題になりましたが、私は素直に驚けたのでその分もポイント高かったです。

  • 佐藤竜雄(アニメーション演出家)

    学園カーストの最上位と最下位の奇妙な友情、とまではいかない友人関係なので、いじめの描写の取って付け感が逆にコメディな世界観を壊している。主人公の嫌われぶりはある意味ギャグなのかもしれないが、「人のために行う者」と「自分のために行う者」の対比という、本来ならばシンプルな構造の筈なので結局バランスなのだと思う。そういう意味ではヒロインの正体バラシはもっと印象的にやるべき。

  • 荒木美也子(アスミック・エース株式会社 映画プロデューサー)

    恋の捻じれた四角関係と、現代の日常ともいえる<いじめ>ということを、うまくかけ合わせた一味違うラブコメディーに仕立てており、後半加速していく展開など、作者の筆力を強く感じました。また、登場人物たちの名前設定・愛称設定など、作者の拘りや遊び心は、とても良かったです。そういう意味での完成度はとても高く評価出来たのですが、個人的には、オチが途中でわかってしまったので、今一つオリジナリティや意外性が欲しかったです。

  • 佐藤辰男(カドカワ株式会社 代表取締役会長)

    大賞をとってもおかしくない作品。M男が主人公の学園ラブコメでお約束だらけの設定なのに、ありきたりに堕ちていない。まず、いじめられているシーンから入って、サスペンス状況を作りながらぐいぐい読ませていく。パンジーという女の子は“S”キャラで、主人公を翻弄しながらストーリーの綾を作っていく。物語全体を支配するこのキャラの魅力に参った。

  • 鈴木一智(アスキー・メディアワークス事業局 統括部長))

    コテコテのラブコメの体裁を取りながら、人間誰しも持っているダークサイドを思い切り露呈していくという立てつけが特異な世界観を醸し出しています。自分が小説のキャラである事を知っているかのような主人公のモノローグや読者視点でなければ分からないセリフの当て字など、個人的には妙なメタ構造を感じる作品でした。続編も想定されますが、中途半端に丸くならずにどんどん尖って頂きたい。

  • 三木一馬(電撃文庫編集長、電撃文庫MAGAZINE編集長)

    本作の武器は、リーダビリティ(可読性)でした。本の読みやすさとは、個人的には面白さと同格だと思っています。『とらドラ!』に代表される少年少女の青春群像を、『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』のような軽快な一人称によって語られる本作は、ジャンルでいうなら『学園ラブコメ』ですが、有象無象の同ジャンル作品にない個性がありました。俗に言う『ハーレム展開』ではなかったところも、作者のチャレンジ精神を感じます。

  • 佐藤達郎(メディアワークス文庫編集長)

    女の子キャラの外見や性格、ネーミングといった特徴づけ、そして彼女たちの物語内での配置など、綿密に計算されて書かれた作品だと思いました。さらにそれを単なるハーレムもののラブコメにしなかったのも、ひと味違った作品に仕上がり受賞した勝因だと思います。ただ、各キャラの自分本位な態度の変わり方に戸惑いを感じ、感情移入していた想いが少し冷めてしまったのが気になりました。

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