第22回 電撃大賞 入選作品
電撃小説大賞部門

銀賞受賞作

『恋するSP 武将系男子の守りかた』

著/結月あさみ

メディアワークス文庫

恋するSP 武将系男子の守りかた

著者   : 結月あさみ
発売日  : 2016年2月25日

戦国武将が現代にタイムスリップ!?
武将男子と乙女なSPの恋の行方は!

戦国武将が現代にタイムスリップ!?
武将男子と乙女なSPの恋の行方は!

あらすじ

長身美麗な女性SP・黒田千奈美。しかし彼女はその見た目に反し、中身はドジっ子乙女な、ごく普通の女の子。そんな千奈美に下った命令とは、現代にタイムスリップしてきた戦国武将の警護だった!?
千奈美は軍神と恐れられた上杉謙信のSPとなり、戦国武将の気迫に圧倒されながらも、って、あれ、なんか、武将って結構イケメンかも……と次第に心動かされていく。一方の謙信も、夢で愛した由岐姫の面影を千奈美に感じ、想いが募り!?
現代文明に大はしゃぎの武将たちを、果たして千奈美は俗世の誘惑から守りきることができるのか!?

受賞者プロフィール

山口県出身、大阪府在住。会社員で夫と子供が一人ずつおります。趣味は料理とフラワーアレンジメント。音楽は何でも聞きますが、特にアニソンとクラシックが好きです。妹の影響でヴィジュアル系にもちょっぴり詳しかったりします。金曜日の終業時間が来るとキラキラ輝き始める普通のサラリーマンです。

受賞者コメント

ごめんなさい。実はラノベ初心者です。最終候補のご連絡を頂いた時も、電撃文庫とメディアワークス文庫の区別がついてなくて、編集さんを呆れさせてしまいました。色々調べていく内、電撃大賞がいかに影響力のある凄い賞であるかを思い知り、今頃になってビビりまくっている次第です。今後は、自分と同じ主婦やサラリーマンの読者様が、読んでいる間だけでも世知辛い日常を忘れられるような荒唐無稽な物語を書いていければ、と思っております。

選考委員選評

※本選評は応募時の原稿に対してのもので、刊行されたものとは異なります。

  • 高畑京一郎(作家)

    戦国武将たちが『城ごと』現代にタイムスリップしてくるという奇抜な設定。絵にしたら映えるだろうなと思うシーンも多かった。しかし時代考証的にはミスが多く、根強いファンの多い戦国ものだけに、現状では少し辛い。もっと設定を詰めるか、もしくは「この作品世界の歴史ではこうなってるんです」と開き直るか、どちらかにすべきだと思う。ストーリー上の都合とは言え、千奈美を大事にすると誓った直後に、その千奈美を賭けの景品にした謙信には、「ちょっと待てや、こら」と、突っ込まずにはいられなかった。

  • 時雨沢恵一(作家)

    細かいところはツッコんだら負けだ!と割り切って、そして無茶苦茶な設定を楽しんだ歴史ファンタジーでした。各キャラクターが軒並み(実在の戦国武将含めて)魅力的なのですが、私は個人的に、ヒロインの父親がツボでした。「あの伏線はここに生きるのか!」と。

  • 佐藤竜雄(アニメーション演出家)

    「歴史を変えてはならない」という言葉とは裏腹にどんどん滅茶苦茶になっているのがおかしい。城がタイムスリップしたら元の空間はどうなるのか、そもそもその時点で歴史変わってるし、戻っても歴史変わってるよオイ!という。その辺り、書いている方が自覚的なのかどうなのかが気になるところ。SFに振るのか、あくまでもコメディで押すのか…いずれにしてもルールが必要かなあと。

  • 荒木美也子(アスミック・エース株式会社 映画プロデューサー)

    『信長のシェフ』や、『ちょんまげぷりん』など、戦国時代と現代が交錯する話は数多くありますが、舞台設定や、登場人物の描き方など半端なく面白く、良い意味でバカバカしさを越えた、突き抜けた作品でした。個人的には、大賞に推すほど楽しめました。が、かかる設定における、武将の名称の歴史的な矛盾などは、この題材において、読者となる歴女たちが楽しめない致命傷になりますので、ご注意を。

    佐藤辰男

  • 佐藤辰男(カドカワ株式会社 代表取締役会長)

    大いに笑えた。著者には上質なユーモア小説のセンスがある。武将たちのキャラが現代によみがえってもそれぞれそれらしく立っているのがおかしい。そりゃーいくらなんでも無茶でしょうという設定も散見するが、それも含めて笑わせてくれる。物語の終わり方にはほかのパターンもあってよさそう。

  • 鈴木一智(アスキー・メディアワークス事業局 統括部長))

    通常ならばSFに突っ走りそうな設定ながら、根幹に恋愛ドラマを置き、尚且つ物語として成立させているところに筆力を感じます。千奈美を巡る城主と上司の駆け引きには女性ならではのセンスが活かされており、存在感のあるサブキャラ達とよく練られた配置が群像劇風のテイストを醸し出しているのも面白い。時代考証やタイムパラドックス検証など無用の荒唐無稽さがこの作品の楽しさなのでしょう。タイトルは過不足ないが、内容が良いだけにもっとアピールしたいところ。

  • 三木一馬(電撃文庫編集長、電撃文庫MAGAZINE編集長)

    この作品に常識的な突っ込みを入れると負け!という『お約束』を理解して読むと、とても面白いコメディ作品だと思いました。現代で巻き起こる、戦国武将の壮大な『価値観の違いによるギャップ』は読んでいてニヤニヤできます。本作は、ビジュアル化されて初めて面白さが伝わる部分が多そうなので、個人的には、イケメン俳優さんたちを集めた舞台や実写ドラマにしてほしい!と思いました。

  • 佐藤達郎(メディアワークス文庫編集長)

    時代考証もSF考証もいったん脇に置き、コメディに徹した潔さは見事です。タイムスリップ物のお約束のドタバタを描きつつ、戦国大名との恋愛要素もしっかり絡めた面白い作品でした。シリアスシーンが弱かったので、コメディシーンを際立たせるためにも、もっとメリハリをつけた方が良いと思います。要人警護の描写や危機の演出にリアリティを出すなど、ひと工夫してみて下さい。

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