第22回 電撃大賞 入選作品
電撃小説大賞部門

メディアワークス文庫賞受賞作

『チョコレート・コンフュージョン』

著/星奏なつめ

メディアワークス文庫

チョコレート・コンフュージョン

著者   : 星奏なつめ
発売日  : 2016年2月25日

がんばり過ぎて、疲れたときに。笑えて泣ける、最強のラブコメ小説!

がんばり過ぎて、疲れたときに。笑えて泣ける、最強のラブコメ小説!

あらすじ

バレンタインすら残業の、仕事に疲れたOL千紗。お気に入りの靴のヒールが折れてまさに泣きっ面に蜂。そんな千紗を助けてくれたのは、理想の王子様――ではなく、凶悪な見た目から社内で殺し屋と恐れられる龍生だった。千紗はお礼のつもりで義理チョコを渡すが、勘違いした龍生に交際を申し込まれてしまう。「断ったら殺される!?」命の危険を感じた千紗は、怯えながらも偽の恋人になることに。だけど強面の龍生が提案してきたのは、なぜか交換日記で!?
凶悪顔の純情リーマン×頑張り過ぎなOLの、涙と笑いの激甘ラブコメ!

受賞者プロフィール

鹿児島と山口のハーフで愛媛出身、東京在住。かつては臨床心理士を志していました。カウンセリングと小説――道は違えど、言葉の力は同じ。自分の作品が微力ながらも誰かの笑顔に繋がればいいな、と切に願っています。落ち込んだときも楽しい気持ちになれる、そんなお話をお届けできるよう頑張ります!

受賞者コメント

電撃大賞には四年前から毎年応募していたのですが、今年は人生史上最も多忙な時期を迎えており、執筆にとれる時間、体力ともにギリギリでした。「諦めて来年にすれば」と何度も悪魔に囁かれましたが、「今年無理なら来年も無理っしょ」と叱るスパルタ天使を信じてよかったです。延期していたらこんなにも素晴らしい結果は得られなかったでしょう。選考に携わった全ての方に心より御礼申し上げます。本当にありがとうございました!

選考委員選評

※本選評は応募時の原稿に対してのもので、刊行されたものとは異なります。

  • 高畑京一郎(作家)

    気楽に読めるストレートなラブストーリー。龍生も千紗も好感の持てる人物なので、読んでいて素直に二人の恋を応援できる。構成上の難点としては、一つの出来事を二つの視点で説明するので全体が間延びしてしまいがちな点。千紗が感じた疑問(≒読者の興味)が、龍生パートですぐ種明かしされてしまうのも、勿体ない。最後の千紗の誤解も、龍生が妹の話をその直前にしているので、不自然に感じる。

  • 時雨沢恵一(作家)

    とことんラブコメでした。お互いの誤解と相互不理解の状況を、よくぞこんなに思いつくなと感心しました。主人公とヒロインの視点の適度な変更もあり、最後までまったく飽きずに、とても楽しめました。二人とも、実に“可愛い”かったです。タイトル通り甘々の作品でした。ごちそうさまでした(いろいろな意味で)。

  • 佐藤竜雄(アニメーション演出家)

    気持ちよく読める大人向けの童話のような一篇。読みやすく、個々のキャラクターも立っている。しかし、それだけに終盤のドタバタが唐突な感じがして勿体無い。年下の恋敵の登場もずいぶんと遅いために取って付けた感が強い。メディアワークス文庫で出すのは確定ですから、心情描写やギャグ部分は子供っぽくならないようにひと工夫を。

  • 荒木美也子(アスミック・エース株式会社 映画プロデューサー)

    『俺物語』のように、主人公のキャラクターがとても立っている、完成度が高い作品です。両方の視点をしっかり分けて構成すべきだったのかについて、キャラクター造詣を深くするより、織り交ぜる構成にして、物語のテンポ感やドキドキ感をとったほうがこの題材の場合、良かったのではないか?と思うところはありました。ただ、そういうテクニックの問題はさておき、愛すべき主人公を、どんどん応援したくなってしまいました。

  • 佐藤辰男(カドカワ株式会社 代表取締役会長)

    すれ違い、思い違いを楽しむ小説。ものすごく怖い顔で人殺しさえしかねない、と思われている主人公が、じつは几帳面で誠実で優しい心を持っていることに、少しずつ相手の女性も気づいていって魅かれていく。もちろんハッピーエンド。恋する女性キャラには、リアリティがあって同性が共感するのではないか。文章力があるから最後まで滞ることなく読ませる。

  • 鈴木一智(アスキー・メディアワークス事業局 統括部長))

    前回受賞のヒット作『ちょっと今から仕事やめてくる』の読者層にも響きそうな大人のラブコメ。文章は平明で非常に読み易く、ちょっとした笑いのツボも押さえられており、小ネタの扱いも巧み。恋愛に疎い二人のデートシーンは痛萌え(笑)といった印象で、ゴールが見えているのに敢えてその周りをグルグル回っている様なもどかしさもあるのですが、『トーキョー下町ゴールドクラッシュ!』と同様にTVドラマ的な感覚で楽しめる作品です。個人的にはボウリングの玉でベースを弾くというシルバー・ボウラーのベーシストがやたらと気になりました。

  • 三木一馬(電撃文庫編集長、電撃文庫MAGAZINE編集長)

    千紗と龍生のチグハグな恋愛模様が楽しい作品。クスッと笑えて少し泣ける少女漫画的なライトさは、本作の強力な武器だと思いました。誰も気づいてくれない千紗の良い所を、龍生が認めてあげるというエピソードは素敵です。一方、龍生の良い所を読者に知ってもらう箇所があまりに少なく(千紗のことをよく見ていた、くらい)、千紗が彼を好きになる展開の説得力に欠ける点が気になりました。龍生は良い意味でもっとディフォルメを強調したキャラにしても良かったかもしれません。

  • 佐藤達郎(メディアワークス文庫編集長)

    殺し屋と間違われるような強面堅物、でも内面は超ピュアな男と、ゆとりのないアラサー女子の勘違いから始まるラブストーリー。オーソドックスな物語ではありますが、ヒロインの気持ちの変化が親友とのやりとりを踏まえて自然な感じで描かれていて、笑いながらも温かな気持ちになれる作品でした。息子を思う亡き母親の気持ちもさりげなく書き、胸を打つシーンを入れる演出も良かったと思います。

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