

第23回 電撃大賞 入選作品
電撃小説大賞部門
銀賞受賞作
『キラプリおじさんと幼女先輩』

キラプリおじさんと幼女先輩
著者 : 岩沢 藍
発売日 : 2017年3月10日
絶対に譲れないものが、そこにはある――。
全国の紳士たちに捧ぐ、Sレア級ラブコメ!
絶対に譲れないものが、そこにはある――。
全国の紳士たちに捧ぐ、Sレア級ラブコメ!
あらすじ
女児向けアイドルアーケードゲーム「キラプリ」に情熱を注ぐ、高校生・黒崎翔吾。親子連れに白い目を向けられながらも、彼が努力の末に勝ち取った地元トップランカーの座は、突如現れた小学生・新島千鶴に奪われてしまう。「俺の庭を荒らしやがって」「なにか文句ある?」。街に一台だけ設置された筐体のプレイ権を賭けて対立する翔吾と千鶴。そんな二人に最大の試練が……! クリスマス限定アイテムを巡って巻き起こる、俺と幼女先輩の激レアラブコメ!
受賞者プロフィール
山口県生まれ、東京都在住。サッカー、バレーボール、剣道など様々な部活を渡り歩いた末、ようやく自分がスポーツにむいてないことに気づく。大学時代はパンクバンドを組み暴れはっちゃくな日々を過ごす。そんな奴がまっとうに生きられるはずもなく、サラリーマンになるも一年ちょっとでドロップアウト。脱サラ後、人には言えない色々な仕事に手を染め、今は本屋さんでバイトしてます。本に囲まれて幸せです!
受賞者コメント
この大人は絶対にウソをついている。最初、編集さんから受賞の電話を頂戴したときの、素直な感想です。いまだに信じてないですからね。どうせあれですよ、授賞式なんかで、赤ヘルかぶった人が「ドッキリ大成功!」て書いたプラカード持って出てくるんでしょ。私知ってますよ。……でも、万が一、ほんとうに、本当に銀賞をくださるというのならば。その重い勲章に見合うだけの作品を世に出せるよう、全身全霊をかける所存です。
選考委員選評
※本選評は応募時の原稿に対してのもので、刊行されたものとは異なります。
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高畑京一郎(作家)
女子小学生が出てくる作品は過去にも多くあったが、言動や行動を見て「ああ、小学生だなぁ」とごく自然に思えたのは初めてかもしれない。ゲームの描写も巧みで、遊び所や勝負所の知識まで、知らないうちに身についてしまう。欠点は言うまでも無く未完成なところ。あんな見事なぶった切りは久しぶりに見た。読ませる力は確かにあるので、ちゃんと完成したバージョンでもう一度読んでみたい。
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時雨沢恵一(作家)
今回もっともライトであり、最初から最後まで、いい意味で脳天気に楽しめた作品でした。タイトルの通り幼女が出てきますが作中に出す必然性が揺るぎないので、これならどこからも文句は出ないでしょう。主人公の友人など、他のキャラクターも魅力的なので、続編に期待しています。
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佐藤竜雄(アニメーション演出家)
「学生なのに『おじさん』とは何故?」という他の審査員の方々の疑問に、あのゲームと◯◯おじさんの由来を話す自分は何者なのか(笑)。作品そのものは年齢を超えたゲーム愛と友情に満ちあふれたもので、今回等身大な子供を描いた唯一の作品だった。主人公の幼なじみの位置づけがこの話の中ではちょっと中途半端なのが惜しい。むしろ学校の描写をもっと減らしても良かったかも。これも続きが読みたくなる作品だった。
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神 康幸(映像プロデューサー/株式会社オフィスクレッシェンド 取締役副社長)
女児向けリズムゲームが題材なので、僕には理解不能かと思い込んでいたが、「ほぉ、なるほどね」と読めていったわけだから、文章に説得力があったということだろう。また、物語の舞台を、田舎感満載の下関とバイオレンスな小倉に設定したセンスが勝利だったか。ただ、ゲームに熱中している少年が、不良に対して無防備に喧嘩をふっかける展開は、行動原理としてジャンプしすぎではないかと感じた。
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佐藤辰男(カドカワ株式会社 代表取締役会長)
文章がこなれていて適度にユーモアもあって、楽しく読めた。少女向けのゲーセンゲームに夢中な青年が、小学生の女の子と協力してゲームを攻略するという超オタク設定なのだが、スポ根友情ものとしてちゃんと読ませるから大したものだ。
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鈴木一智(株式会社KADOKAWA アスキー・メディアワークス事業局 統括部長)
オタク高校生、ツンデレ女子小学生、女児向けアーケードゲーム──ニッチな要素をズラリと並べ、80枚という中で押さえるべきポイントを制覇し、コンパクトに纏め上げつつマニアック路線を走り切った(そして果てた)ような作品。イキオイだけで書いているようで実はよく計算されており、キャラクターもよく立っています。地方を舞台にしたこの物語がどのように広がっていくのかも興味深いところ。それにしても小倉の無法地帯っぷりが容赦無いんですが……(笑)。
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和田 敦(電撃文庫編集長、文庫プロデュース課編集長)
同じゲームを通して、高校生と少女がやりあうコメディとしては楽しく描けていたかと思います。とはいえストーリーとしては少し物足りなく感じました。応募の締切や全体の文量とのバランスもあったかもですが、少女の家の事情とかキラプリに対する想いとか、色々とドラマを作れそうな要素もあったのに、そこらへんをあまり語ってないので物語自体に厚みがなく思う人もいるかもしれません。
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佐藤達郎(メディアワークス文庫編集長)
天才ゲーマーの小学生・千鶴と、小学生の相手に本気で闘志を燃やす翔吾、二人の大人げない(といっても子供ですが)戦いが笑えました。敵愾心を燃やす二人が次第に相手を認め友情が芽生えていくという展開は王道ですが、きっかけとなるエピソードをうまく絡めてまとめ上げていたと思います。あえてキャラを増やさず二人を中心に描ききったのは良かったのですが、幼馴染の夏希をもう少し活かしても面白かったかもしれません。