第24回電撃大賞 入選作品
電撃イラスト大賞部門

大賞受賞作

はてなときのこ

想定作品『キノの旅 the Beautiful World』

著/時雨沢恵一

受賞者プロフィール

愛知県出身。京都市立芸術大学に在学中。大学では静止画の他、アニメーション、実写などの映像作品も制作しています。イラストを描くときは、映像での経験も活用しながら、時間軸や現実の世界に囚われることのない空間を作り出せたらと考えています。知識は浅いですが、特撮作品を見る事と虫が好きです。クワガタや蝶の顔はとても興味深いです。

受賞者コメント

この度は素晴らしい賞に選出して頂き、誠に有難うございます。中学生の頃からの憧れであり、それ故に届かぬ夢のように感じていた賞でしたので、とても感慨深いです。『キノの旅』を題材に選ばせて頂いたのは、その当時、紙のブックカバーが擦り切れるほど読み込んで、思い入れが強い作品であったからです。今回は初めての応募で、自分の絵の雰囲気は、このような賞を頂けるようなものではないだろうけど、率直な感想を聞きたいという一心でした。その為、結果を聞いてから、数日後にメールで再度確認してしまったほど驚いています。これを機にイラストに限らず、様々な制作に少し自信を持って励んでいけたらと思います。本当に有難うございました。

選考委員選評

  • 天野喜孝(画家、イラストレーター)

    メルヘンチックでありながらも和を感じる、優しい雰囲気の絵です。独自の世界をお持ちで、それを高い技術力でまとめている。最終選考作品の中で一番個性的でした。特にキャラクターの個性が確立されています。目鼻口が巧みなバランスで入っていて、漫画やアニメに興味がない人にも好まれそうだと思いました。特に課題イラストのカラーは、絵本の世界のようです。オリジナルのカラーもそうですが、赤系の温かみのある色合いも魅力的だと思います。

  • 出渕 裕(デザイナー、イラストレーター、アニメーション監督)

    応募作品5点とも、すべて違うベクトルで描かれていて、自分のスキルを見せているのが素晴らしい。構成力に優れており、レイアウトや表現したいものが1つではない。多様な引き出しがある方だということが、非常によくわかります。バラエティーに富んでいながらも、キャラクターは自分のカラーで統一しているというところも高評価です。またカロリーの高いガジェットにも果敢に挑戦していて、それをちゃんと自分のものにしています。自動車の造形にはもう少し努力が必要ですが、小型UFOのようなロボットなど、楽しんで描いていて好印象でした。

  • 衣谷 遊(漫画家)

    画力があり、カラー・モノクロともに、他の方の作品と比べてもレベルがワンランク高い印象を受けました。課題作はご自分のオリジナル作品のように個性的に描けていると思います。オリジナルのカラーは、この1枚で世界観が伝わってきます。新聞や賞状など、細かいところまで丁寧に気持ちを入れて描き込まれており、色味も懐かしさがあってキレイです。モノクロの狼のイラストでは、動物もうまく描ける方なのだと思いました。しいていえば、キャラクターが全面に出た表紙絵のような作品も見てみたかったです。

  • 緒方剛志(イラストレーター)

    物のディティールを追及しつつ、顔を淡白に描く努力をされていて面白い進化をされた方だなと思いました。キャラ描きの僕はついつい顔を凝りたくなってしまうので。立体物もツールで簡単に直線を引かずに柔らかく描かれる努力をしていて温かみを感じました。構図も少し枯れた色使いも絵の雰囲気に合っていてすごいなと思います。絵柄、色、構図のバランスが良い塩梅で見ていてとても気持ち良かったです。縦位置で描かれているギッチリ感、横位置の方の空気感の良さなど、構図がおもしろいのも素晴らしいなと思いました。

  • いとうのいぢ(イラストレーター、ゲーム原画家)

    ひと目見て、すごく描写力のある方だと思いました。緻密なところと抜けているところのバランスがよく、自分の持ち味を理解して描かれていると思います。キャラクターの顔は、かなりデフォルメが効いていますが、あえてこう描かれているのが伝わってきます。またこだわりがたくさんつまっているところもいいです。オリジナルのカラーイラストで、壁やふすまにシールが貼られていますが、そういう細かい部分にもご自身の生活や経験してきた背景が感じられます。好きなものを、うまく世界観に取り入れているなと思いました。

  • 湯浅隆明(電撃文庫MAGAZINE編集長)

    全体的に独特の風合いが感じられ、大賞受賞にふさわしいイラストでした。印象的なのがカラーの塗りで、彩度、明度を抑えつつ温かみが感じさせるのは見事。またオリジナルの方は、焦点はこたつ周辺にしっかりあてつつ、周りに遊び心あふれる小物を配して、見る人の想像力をかきたてる魅力あふれる一枚になっていました。モノクロもそれぞれバリエーションを持たせたイラストで、構図、塗りのメリハリもついていて見ていて気持ちいい仕上がりでした。即戦力でありつつ、将来が楽しみなイラストレーターさんです。

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