第24回 電撃大賞 入選作品
電撃小説大賞部門

銀賞受賞作

『錆喰いビスコ』

著/瘤久保慎司

電撃文庫

錆喰いビスコ

著者   : 瘤久保慎司
発売日  : 2018年3月10日

愛する人を救うため、滅びの錆を強弓が貫く。
最強キノコ守りが往く、疾風怒濤の冒険譚!

愛する人を救うため、滅びの錆を強弓が貫く。
最強キノコ守りが往く、疾風怒濤の冒険譚!

あらすじ

すべてを錆つかせ、人類を死の脅威に陥れる《錆び風》の中を駆け抜ける、疾風無頼の「キノコ守り」赤星ビスコ。彼は、師匠を救う霊薬《錆喰い》を求め旅をしていた。
美貌の青年医師・ミロを相棒に、ビスコは波乱の冒険へ飛び出す。立ちはだかる埼玉鉄砂漠、地下鉄を食らう大蛸、邪悪な県知事の奸計――。次々に迫る脅威にミロの知恵が閃き、ビスコ必中のキノコ矢が貫く!
相棒の熱い絆が射貫く、怒涛の冒険ファンタジー。

受賞者プロフィール

舞台俳優だった両親の元に生まれ、愛されて育つ。小学生の時に椎名誠先生作のSF長編『アド・バード』にめぐり合いその魅力に取り付かれ、20代の折り返しに急にそのことを思い出して小説を書きはじめる。趣味はインディーズゲーム・歌舞伎鑑賞・料理・4コマまんが執筆。好きなキャラクターは「ばいきんまん」「野比のび太」、『AKIRA』より「金田正太郎」、『スティール・ボール・ラン』より「ポコロコ&ヘイ・ヤー」。

受賞者コメント

生まれつき涙もろく、書きながら泣く癖があります。執筆は専ら喫茶店で、店員さんや周りのお客さんは気味が悪かったかもしれません。賞に原稿を送る際に泣き(これで作品とお別れだと思ったので)、受賞の報を受けて泣き(作品が手元に帰ってきたので)、最近は睫毛の乾く暇がありませんでした。これからは、読者の皆様の心にも熱い涙が伝うような…そういう作品をお届けできるよう、涙腺を振り絞って精進してまいります。

選考委員選評

※本選評は応募時の原稿に対してのもので、刊行されたものとは異なります。

  • 高畑京一郎(作家)

    インパクトのある設定と、スピード感のある展開でぐいぐい読ませる作品。ある意味で正統的なライトノベルと言えるかも知れない。アクションシーンもダイナミックだが、動きの描写を擬音ひとつで済ませてしまうような箇所が幾つかあり、さすがにこれは手を抜きすぎだろうと思った。

  • 時雨沢恵一(作家)

    破天荒なアクション作品です。今回受賞した作品の中では、一番ぶっ飛んでいたと思います。楽しく読ませて頂きました。キノコを使ったアクションが小気味よくて、そのセンスには脱帽します。主人公と旅するのが美人ヒロインではなく美人バディ(男)というのも。

  • 佐藤竜雄(アニメーション演出家)

    今回一番勢いのあった作品。色んな作品のネタやモチーフをてんこ盛りで並べ、キャラクター達も既存のキャラ名やフレーズを叫び飛び駆け抜けていく。その辺りの楽屋オチなパッチワークを楽しむのか、ひたすら続くアクションのノリを堪能するかで受け取り方がずいぶん違うと思う。前者の場合、おそらく推敲でかなり直す(使えないネタが多い!)ことになりそうなのでアクションの冴えを磨いた方が良いと思います。

  • 神 康幸(映像プロデューサー、株式会社オフィスクレッシェンド取締役副社長)

    この作者、ただ者ではない。作家としての大いなる未来を感じる。禍々しい近未来の世界観に痺れまくった。驚異的な発想力。よくもまあ、次から次へと未知なる生物兵器を思いつくものだ。SFではあるが格闘小説の色が濃い。これでもかと戦闘シーンの連続。読んでいると息も絶え絶えになり、疲労度は半端ではない。残念だったのは主人公ビスコの旅のバディになる「ミロ」の幼いセリフ表現。医者という高度な知性が内包されているはず。

  • 佐藤辰男(カドカワ株式会社 取締役相談役)

    ひとことで言えばやおい系少年二人組の冒険譚。繰り返し繰り返し描かれる戦いのシーンが楽しめるかどうかが分かれ目。私は後半食傷気味。なぜ少年たちは罪を背負ったまま旅を続けるのか。2人は最強のタッグだから? ということらしい。

  • 和田 敦(電撃文庫編集長)

    日本に錆び風が蔓延し、錆を食うキノコを巡るという世界観は、なかなか無から生み出すのは大変ですし、その着眼点の面白さには才能を感じます。キャラクターも生き生きと描かれているのですがやや勢い任せな面も感じますので、読み手の感情移入も含めてしっかりと描いて欲しいかと思います。個人的に気になったのは、どこを経由しているのだろう、なんか遠回りではないか? などの旅の経路でしょうか。まあ些細な部分ですが。

  • 佐藤達郎(メディアワークス文庫編集長)

    とにかく登場人物がみんな底抜けにタフで魅力的。微塵も疑うことなく互いに信頼する絆の強さが気持ちよく、きのこと錆にまみれた世界観がユニークで、これでもかと次から次へと訪れる危機の演出も秀逸です。今年の応募作の中では、疾走感と爽快感が群を抜いていました。キノコテロリストの二人と巨大カニのアクタガワが、決して諦めない勇気を与えてくれる、ひたすら頼もしくて力強い作品でした。

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