第24回 電撃大賞 入選作品
電撃小説大賞部門

選考委員奨励賞受賞作

『噺家ものがたり ~浅草は今日もにぎやかです~』 ※応募時「二代目創風亭破楽語り」より改題

著/村瀬 健 ※応募時「バスコ」より改名

メディアワークス文庫

噺家ものがたり ~浅草は今日もにぎやかです~

著者   : 村瀬 健
発売日  : 2018年3月23日

味気ない日々から波乱の人生へ。
落語一本で運命の歯車が大きく動き出す。

味気ない日々から波乱の人生へ。
落語一本で運命の歯車が大きく動き出す。

あらすじ

大学生の千野願は、就職の最終面接へ向かうタクシーの中で、ラジオから流れてきた落語に心を打たれる。その感動から就職はもちろん、大学も辞め、天才落語家・創風亭破楽への弟子入りを決意。
前座見習いとなるも、自らの才能のなさに落ち込む千野願だったが、ある日、初めて人を笑わせる快感を覚える。道が開けたように思えたそのとき、入門前から何くれとなく世話を焼いてくれた兄弟子・猫太郎が突然、姿を消してしまう――。

受賞者プロフィール

兵庫県在住。放送作家やってます。漫才やコントの台本とかも書いています。よろしくお願いします。

受賞者コメント

奨励賞に選んでくださった選考委員の皆様に、心より感謝申し上げます。仕事柄、人を笑わせることばかり考えてきました。今後は、今までにないコメディ作品を創っていけたら、と思っています。それと、私の文章は誤字がすごく多いらしいので、今後はプロを目指すにあたって、自分が書いたものを何度も推敲して少しでも誤字がないようにと重っております。よろしくお願いします。

選考委員選評

※本選評は応募時の原稿に対してのもので、刊行されたものとは異なります。

  • 高畑京一郎(作家)

    落語の世界に足を踏み入れた大学生の精進の日々を、丹念に描いている。小咄があまり面白くないとか、にもかかわらず主人公は大絶賛してるとか、破楽師匠の言動・行動が粋人とは思えないとか、細かい突っ込みどころはいくらでもあるが、これだけ書く力があるのだから、その辺の微調整は難しくないはず。

  • 時雨沢恵一(作家)

    人情もので、直球で泣かせに来る作品で、途中何度もうるっとしました。劇中の創作落語を作者自らがゼロから創作しなければならないので、かなり大変だったと思います。ラストがとてもドラマチックに締まっているので、続編を作るとしたら大変そうです。

  • 佐藤竜雄(アニメーション演出家)

    落語に関しては全くの素人である主人公なのに、彼視点からの寄席や噺家についての説明が妙にこなれているのが気になった。台詞では素人まる出しなのに話を進めるのに際しては玄人の語り口。その辺りはもっと脇役(特に女性キャラ)との絡みを上手く使ってあげれば良かったかも。主人公が師匠の落語のどういうところに惚れたのか、師匠のどういうところに惚れたのかをズブの素人ゆえの視点から見てみたかった。

  • 神 康幸(映像プロデューサー、株式会社オフィスクレッシェンド取締役副社長)

    電撃大賞という枠を大きく飛び越えた力作。凄いなぁ凄いなぁと、読みながら何度呟いたことか。正に、言霊の奔流だ。落語の師匠が吐く言葉が、ズキズキと胸に突き刺さる。文章のリズム感が素晴らしい。下町・浅草に棲む奇っ怪なキャラクターも絶妙。アスファルトに寝っ転がった「地面からの発想」が、この作品には存在する。ただ女性の描き方が少し物足りず、それが実ればさらなる高みへと登頂できるのではないか。

  • 佐藤辰男(カドカワ株式会社 取締役相談役)

    名人を取り巻く世界が類型的。浅草はいいとして、心やさしきホームレス、現役ストリッパーの女弟子などはこの場合、道具立として使いこなしきれていない。名人の弟子となった大学生の主人公の度々見せる長長舌もいささか思い入れ過多。もう少し語り口を軽くしてくれるとずいぶんよくなると思うのだが。

  • 和田 敦(電撃文庫編集長)

    この作者の作品の肝の一つは、落語部分を小説という文章で見せて楽しませることができるのか否か、というところがあります。この受け取り方は読み手次第なのでなかなか描くのは大変だと思いますが、果敢にチャレンジする姿勢はすごいと思います。今作はラストシーンの仕掛けが、カタルシスと全体のまとまりを感じさせ、受賞に辿り着けたかと思います。自分も読んでいて思わず泣きそうになりました。

  • 佐藤達郎(メディアワークス文庫編集長)

    普段目にすることのない落語という世界の裏舞台が描かれていて、それだけでも読んでいて楽しい作品でした。ラストは主人公も師匠も差し置いて、猫太郎が全てを持っていってしまいましたが、思わずほろりとくる話の作り方は巧みです。ただそれ故、もっと粋に、もっと洒落を効かせてと、読んでいて欲が出てしまった作品でもありました。ポテンシャルの高さはあるので、ぜひブラッシュアップして、万人を笑わせて泣かせて欲しいです。

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