第25回 電撃大賞 入選作品
電撃小説大賞部門

金賞受賞作

『つるぎのかなた』

著/渋谷瑞也

電撃文庫

つるぎのかなた

著者   : 渋谷瑞也
発売日  : 2019年2月9日

剣の道を駆け抜けろ!
目指すは最強の先、はるか頂きの彼方――!

剣の道を駆け抜けろ!
目指すは最強の先、はるか頂きの彼方――!

あらすじ

「好きじゃないんだ、剣道。……俺を斬れる奴、もういないから」
かつて“最強”と呼ばれながら、その座を降りた少年がいた――。
“御剣”の神童・悠。もう二度と剣は握らないと決めた彼はしかし、
再び剣の道に舞い戻ることに。
悠を変えたのは、初めて肩を並べる仲間たち、彼に惹かれる
美しき『剣姫』吹雪、そして――孤高の頂で悠を待つ、
高校剣道界最強の男・快晴。
二人が剣を交えた先で至るのは、約束の向こう、つるぎのかなた。
「いくぞ悠。お前を斬るのは、この僕だ!」
剣に全てを捧げ、覇を競う高校生たちの青春剣道物語、堂々開幕!

受賞者プロフィール

189cmの大型新人。趣味は音楽とお風呂とリアル脱出ゲーム。お金と書く時間を効率的に確保するため、お堅いホワイト企業を就職先に選んだが、今後はプロとして作家収入が得られるということで、今、とても転職に興味がある。狙うは給料安くても週休3日で面白い仕事。欲張りなのは分かっているが、やっぱり最高の二足のわらじが履きたい。この脚で二兎を追い続けられるか否か、これからの人生がとても楽しみ。

受賞者コメント

昔からプロの物書きに憧れていたが、何の実績も出せてない自分が夢を語るのはおこがましいし、やっぱり何より気恥ずかしい。だから、色んな人に「将来、渋谷は何やりたいの?」と聞かれるたびに、「25歳までにWikipediaに載るよ」「Googleで働く側じゃなく検索される側になろうかな」などと適当に茶化し、ひと笑い取っていた。時は流れて、今、25歳。言ったことも言わなかったことも、どうやら両方叶うかも。我こそは夢を叶えてやるという粋な方。ご執筆、心よりお待ちしております。

選考委員選評

※本選評は応募時の原稿に対してのもので、刊行されたものとは異なります。

  • 三雲岳斗(作家)

    作品にこめられた膨大な熱量にとにかく圧倒されました。多数の登場人物それぞれに対する愛情と、彼らの物語を描きたいという真っ直ぐな想いが伝わってきて、読み進めるのがとても楽しかったです。剣道という奥深いテーマを扱いつつ、爽やかな青春群像劇として昇華した点を個人的に高く評価します。ともすれば暗く陰湿になりそうな場面でも、カラリと陽性に描ききる明るさが本作の最大の魅力かと。技術面の荒削りさすら魅力に感じさせる、特別な作品だと思います。

  • 三上 延(作家)

    前例の少ない剣道を題材に選び、解説を交えつつ長編を書き切ったのは好印象でした。主人公とライバルの関係も物語の明確な主軸たりえています。多すぎる登場人物を整理できていない、物語上不要なイベントが散見される、視点が分かりにくいなどの難点は目につきましたが、クライマックスの個人戦トーナメントにはそれらを吹き飛ばす面白さがありました。特に決勝戦は素晴らしいです。私も高い評価をつけました。

  • 吉野弘幸(アニメーション脚本家)

    冒頭のキャラの多さや、それを整理し切れていない拙さにくじけそうになりましたが、キャラが掴めた中盤以降は剣道シーンの演出力と温度感でグイグイと読まされてしまい、気付けば夢中になっていました。それはまるで、一作品の中でキャラのみならず、作者自身の成長をも追体験したかのような不思議な感覚でした。残念ながら全体的な完成度の荒さで大賞は逃しましたが、まだまだ伸びしろがあると見ますので、この成長曲線を保っての、次回作でのさらなる飛躍に期待します。

  • 神 康幸(映像プロデューサー、株式会社オフィスクレッシェンド取締役副社長)

    とても熱い剣道小説でした。文章が荒削りだったり、登場人物が多すぎたりなど欠点を抱える作品ではありましたが、同じ部員同士の絆やライバルといった人間関係、それに基づいたドラマ、勝負や剣道への熱い想い、また試合のシーンでの駆け引きの演出などが巧みで興奮度が高いです。惜しくも大賞を逃しましたが、エンターテインメントとしてのおもしろさは一級です。剣道ものという、電撃文庫では挑戦となるジャンルにはなりますが、ぜひ多くの方に読んでいただきたい作品だと思いました。

  • 高林 初(メディアワークス文庫編集長)

    エンターテインメント性が抜群にある作品でした。孤高の幻の天才が韜晦しつつも、片鱗を閃かせ、周りを驚かせるという展開がきれいにはまっています。六場などの設定も、シリーズ展開していく上では非常に強みとなりそうです。そういったことを計算されているのも素晴らしいです。ただ、文章はまだ改善の余地があります。視点があちこちで揺れているのが非常に気持ち悪い、言葉足らず、描写足らずなのも非常に読みにくいです。無駄な会話が多すぎるので、刈り取ってもいいかもしれません。ですが、最後まで楽しませていただくことができました。

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