第25回 電撃大賞 入選作品
電撃小説大賞部門

選考委員奨励賞受賞作

『マッド・バレット・アンダーグラウンド』※応募時「シルバー・ブレット -SILVER BULLET-」より改題

著/野宮 有

電撃文庫

マッド・バレット・アンダーグラウンド

著者   : 野宮 有
発売日  : 2019年4月10日

世界最悪の犯罪街で、一人の少女を巡る
《愉快な誘拐劇》が始まる――。

世界最悪の犯罪街で、一人の少女を巡る
《愉快な誘拐劇》が始まる――。

あらすじ

悪魔の異能を宿した〈銀の弾丸〉を心臓に埋め込み、
その力を手にした〈銀使い〉のラルフは、相棒のリザと共に
血と硝煙に覆われた退廃的な日常を過ごしていた。
そんな二人に、犯罪組織の幹部から依頼が舞い込んで来る。
逃走した少女娼婦シエナを捕らえるだけの楽な依頼だったが、
彼女を狙う銀使いの襲撃で事態は一変。
二人は巨大な陰謀と、
笑えない「おとぎ話」に巻き込まれていく――――。

「ああクソッ、次の仕事も殺しだ。この街は本当にイカレてる」
「楽しく暴れられる仕事なんて、私は最高だと思うけど?」

受賞者プロフィール

博多在住の25歳。ロックと映画とサッカーが好き。作風と作者本人の性格が真逆なのは分かりやすいツッコミポイント。携帯小説全盛の時代に思春期を迎え、流行に乗っかって軽い気持ちで執筆活動を開始。一緒に始めた友人たちが一週間で飽きてしまう中、ひとりだけ完全にのめり込んでしまい、今の今までこっそり続けています。王道からは逸れたアウトロー作家というブランディングを、ボロが出るまで続けていきたい所存。

受賞者コメント

まずは拙作にこのような賞を与えてくださった審査委員の皆さま、熱い想いで推薦してくださった担当編集様、そして選考に携わるすべての皆さまに心より感謝を申し上げます。誠に、ありがとうございました! 初めてまともに完結させた長編が本になるという、漫画でもやりすぎだと言われそうなビギナーズラックっぷりにただただ震えが止まりませんが、皆さまの期待にお応えするため、そしてまだ見ぬ読者の皆さまに楽しんでいただくため、全身全霊を込めて取り組ませていただきます。まだまだ未熟者ではありますが、お力添えのほど何卒よろしくお願い申し上げます!!

選考委員選評

※本選評は応募時の原稿に対してのもので、刊行されたものとは異なります。

  • 三雲岳斗(作家)

    作品としての完成度は今回の応募作の中でも随一で、設定、構成、文章力、いずれも即戦力クラスの高い水準にあります。なにより作者の描きたいものが明確に伝わってくるのが素晴らしい。そのぶん同ジャンルの既存作品と比較したときに、個性が不十分に感じられるのが唯一の減点ポイントでした。文体にややクセが強く、好き嫌いの分かれるテーマですが、それが本作の魅力でもあります。このまま独自の才能を伸ばしていってもらえればと思います。

  • 三上 延(作家)

    今回、最も強く推した作品でした。世界観の分かりにくさや相棒のキャラクターに違和感はありましたが、主人公たちが依頼を受けてストーリーが転がり出してからは時間を忘れて一気読みしました。弱点と正気を抱えた主人公の設定、知略を尽くしたバトル、クライマックスのどんでん返しにも確かな技術やセンスを感じます。素直に続きが読みたいと思わせる作品でした。

  • 吉野弘幸(アニメーション脚本家)

    実を言ってしまうと、個人的になかなかノれなくて読み進むのが大変だった作品です。一人称ハードボイルドやピカレスクロマンは『世界とキャラにどれだけ読者を酔わせられるか』が勝負だと思うのですが、描写の弱さなどがそれを阻み、洒脱にしたいのだろうダイアログも上滑り気味で、全体に力量不足を感じてしまったことがその原因だと思われます。ただ、基本のアイディアや最後のドンデン返しは楽しく読めましたので、もうちょっと身の丈にあったものを読んでみたいかなぁというのが素直な印象です。

  • 神 康幸(映像プロデューサー、株式会社オフィスクレッシェンド取締役副社長)

    『シンシティ』のような突き抜けたハードボイルドな作風。『ウォーキングデッド』を彷彿とさせるスプラッターの連打乱打。脳裏に浮かんだ光景を「書き切る熱量」には拍手を送りたいが、格闘シーンに酔いしれすぎか。記述が過剰すぎて、物語の筋を忘れてしまいそうになる。リズムを重視して短いセンテンスを挟み込めば、劇的に印象が変わるはず。主人公の「武器を召喚する」能力が万能過ぎるのでは?

  • 湯浅隆明(電撃文庫編集長、電撃文庫MAGAZINE編集長)

    異能力ありのクライムアクションということで、街のひりひりした空気感や能力まわりの設定などがよく練られていて、なによりもキャラクターのいかれ具合がこの作品を際立たせていました。その反面、ストーリーが逃走劇に終始して人間ドラマとして少し弱い印象があり、その部分の読み応えがもう少し欲しかったところです。とはいえ濃密なキャラとバトルアクションは、好きな人にはたまらない魅力を放つ作品に仕上がっていました。

  • 高林 初(メディアワークス文庫編集長)

    疾走感のあるアクション、ピカレスクの香りがする人物造形で、戦闘にちゃんと駆け引きがあるのもよかったです。変に市場に媚びず楽しんで書かれているなと思いました。ですが、やや一本調子の展開になってしまっているのが残念です。物語の起伏もさることながら、人物の描き込みが浅かったように思います。そのため、リザは戦闘狂で快楽殺人者の域を出ず、もう一つ上のヒロインとしての感情移入までは到達できませんでした。また、主人公のラルフもシニカルでウィットの利いたセリフを好みますが、言葉と本人の間にかなり乖離を感じました。

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