第26回 電撃大賞 入選作品
電撃小説大賞部門

銀賞受賞作

『灼華繚亂』

著/小林照

電撃文庫

少女願うに、この世界は壊すべき ~桃源郷崩落~

著者   : 小林湖底
発売日  : 2020年4月10日

人と妖魔に虐げられた少女の願いは「世界の破壊」
時空を超えた最強の霊術遣いが、双子の少女を救う!

人と妖魔に虐げられた少女の願いは「世界の破壊」
時空を超えた最強の霊術遣いが、双子の少女を救う!

あらすじ

「――そうか。ならば、この世界を壊してやろう」
 妖魔に支配された村で迫害を受ける少女・かがりに救いの手を
差し伸べたのは、《天子の特殊因子》を持ち、
あまりに強大な力を得てしまった己を遙か昔に自ら封印した
「五彩の覇者」である神津彩紀だった。
 封印を解いたかがりに過去の自分を重ねた彩紀は、
かがりの奴隷として妖魔退治に協力することに。
そして彩紀は神懸かった強さで村の妖怪を殲滅していく。
 村が抱える問題を解決し、平安が訪れたのもつかの間、
彩紀と過去からの因縁を持つ《天子の特殊因子》持ちの彩皇の一柱が、
かがりとその妹かなめに狙いを定め──

受賞者プロフィール

埼玉県秩父市出身。北国帰りの神奈川県民。高校時代に習った『史記』や『山月記』に感銘を受け、色々あった挙句ラノベ作家になりました。好きな諸子百家は儒家と墨家。好きな歴史上の偉人は始皇帝と王陽明(あんまり詳しくないですが)。好きな小説はパール・バック『大地』とか。忘れっぽいのが悩み。趣味が特にないのも悩み。よろしくお願いします。

受賞者コメント

私にとって文章をひねり出すという行為は本当に疲れるものでして、この小説を書いている途中にも幾度投げ出そうと思ったか知れません。しかし一作が完成した瞬間の達成感には筆舌にしがたいものがあり、況してやその作品が栄えある電撃小説大賞で受賞できたとなれば喜びも一入です。努力が報われた気がしました。本作を選んでくださった最終選考委員の皆様・編集部の皆様には厚く御礼申し上げます。可愛くて魅力的なキャラクターが活躍する小説を書けるよう、精一杯がんばります!

選考委員選評

※本選評は応募時の原稿に対してのもので、刊行されたものとは異なります。

  • 三雲岳斗(作家)

    今回の候補作の中ではもっとも勢いのあった作品。オリエンタルな神話要素など面白そうなものを節操なく取りこむスタイルは嫌いではないです。ただし登場人物の造形や作中の会話が、懐かしさを感じさせるくらいの古いノリで、これについては評価が分かれたところでした。主人公の能力や作中の設定がゲーム的でなかなか面白いので、もう少し体系的に整理してわかりやすく描くとより魅力的になると思います。

  • 三上 延(作家)

    近年見かけない「変態」主人公やツンデレヒロイン、時々挟まれる下ネタは読み進めるうちに慣れましたが、物語のテンポの遅さは最後まで引っかかりました。どの敵役も結局は主人公より格下なので、前半でさっくり倒して次の敵に進んで欲しかったところ。中国の伝奇小説を思わせる設定は新鮮ですし、情報の開示もこなれています。今回、最終選考作品の中でトップクラスのリーダビリティで、筆力には間違いなく確かなものがあります。

  • 吉野弘幸(アニメーション脚本家)

    独自の設定と世界観は面白く、軽快な文章、キャラの分かりやすさ、さらに主人公の強キャラ設定で、これは俺つぇぇで痛快な話が読めそうだと期待したわけですが……戯作上の都合か強キャラ主人公は迂闊に何度も失敗し、ヒロインも同じところをぐるぐる回って足踏みが続き、導入部から期待された爽快感になかなか届かないのが残念でした。天狗は一章くらいであっさり倒し、もっとどんどん展開していって欲しかったです。

  • 神 康幸(映像プロデューサー、株式会社オフィスクレッシェンド取締役副社長)

    語り部として有望な作家さんだ。血湧き肉躍る。変態仙人と、狐の姿をした美少女のバディは、ビジュアルとしてキャッチー。オフビートの会話もグッド。後半に、浮遊術で二人が空を遊泳するところは、名シーン。「万策尽きぬうちは諦めず、万策尽きても諦めない」という言葉が、胸に突き刺さる。ただ、せっかく独創的な世界観を作り上げているのに、悪役が「天狗」というのは、ありきたりでもったいないのでは。とにもかくにも続編が読みたい。

  • 湯浅隆明(電撃文庫編集長)

    日本の歴史や伝承などに基づく因子が人に宿るという設定が、さまざまな可能性を感じさせてまず目をひきました。主人公の強くてエロくてさばさばしたキャラクターもよく、ヒロインもいいツンデレです。その反面、設定を使い切れていない点や、序盤の風呂敷の広げ方に反して意外とスケールの小さなストーリーに物足りなさがあります。光るところの多い作品なだけに、より面白くする余地も多く感じる作品でした。

  • 高林 初(メディアワークス文庫編集長)

    スケベな主人公にツンデレヒロインと、少々懐かしさも感じるオーソドックスな設定。OLI因子といった異能力設定も決して珍しいものではありません。ですが、そういったガジェットがよく作り込まれていて、それぞれの因子により能力も多彩で、戦いも映えるのが高評価でした。一方、敵としては物足りない相手をクライマックスに据えた展開のため、ただ間延びしてしまった感が拭えません。今一つ惜しかった作品です。

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