第27回電撃大賞 入選作品
電撃イラスト大賞部門

選考委員奨励賞受賞作

雨里

想定作品『鏡のむこうの最果て図書館』

著/冬月いろり

受賞者プロフィール

緑のたくさんある田舎でのんびり和紙のお仕事をしています。透明水彩やペンとインクで絵を描くことも好き。紙と文房具と文鳥を愛でています。

受賞者コメント

この度は素晴らしい賞をありがとうございます。電話でご連絡いただいた時はぶるぶると震えてしまいました。最初に投稿した時は一次落ちでしたが、諦めず実を結べて本当に嬉しいです。「鏡のむこうの最果て図書館」はしっかりと物語と向き合って絵を描こうと、本屋を彷徨っている時に出会いました。表紙もタイトルも素敵で、優しい物語と少し不器用な登場人物が大変愛しい作品です。好きなもの、表現したいものをたくさん詰めて描きました。これからも好きを伝えられるよう精進してゆきたいです。

選考委員選評

  • いとうのいぢ(イラストレーター、ゲーム原画家)

    独特な世界観をお持ちの方で、くすんだタッチが人物などの絵柄と調和していて、奥深さを感じました。ただ世界観を読者に伝えるために工夫が必要だと思います。例えば『鏡のむこうの最果て図書館』のカラーイラストは、鏡の中だけでなく水たまりの中にも別の世界を表現しているように見えますが、それが目立たない配置で視線誘導ができておらず、もったいなかったです。また背景の線もブラッシュアップし、もう少し細部にこだわりを持つのが今後のステップアップのためにも良いかと思いました。

  • abec(イラストレーター)

    カラーイラストの色使いにオリジナリティがあり、可愛らしい絵柄と調和して雰囲気のある絵になっているのが良かったです。電撃イラスト大賞で、こうした色彩の作品が最終選考まで残るのはいいことだと思います。ただ全体的に線が雑に感じられたので、もっと完成度は高めて欲しかったです。それが画風だとしても、まだオリジナリティとしては昇華しきれていないと感じます。色の情報量があれば違和感は薄くなりますが、それがなくなった時に線の荒さが目立ってしまうのが課題点ではないでしょうか。オリジナリティとして昇華するために表現を研究すること、そして完成度を高める意識を持つこと。それを続けていけば、もともとの色彩の魅力と合わさって、より良いイラストになると思います。

  • loundraw(イラストレーター、作家)

    色使いやキャラクター、画面のタッチなど、イラスト自体に優しい雰囲気と世界観が宿っています。技術や場面設定以外の部分で空気感を生み出せるのは、才能だと思います。全体として気になるのは立体感、レンガの向きが違うなど細かな部分です。タッチが柔らかい分、基本的な部分はしっかりしている方が空間はわかりやすくなるので、これから意識して欲しいと思います。魅力的な画風の方なので、周囲の意見をアドバイスとして聞きつつも、自分が表現したいもの、描きたい雰囲気や画風は曲げずに、楽しく描いていただきたいです。そうすれば1年2年と経つ中で上達していくと思いますので、楽しみにしています。

  • 荒木人美(電撃文庫編集長)

    あたたかな絵柄の、不思議な魅力のある作品でした。見ている人を優しい気持ちにすることができるのが大きな武器だと思います。絵本のような優しいタッチで、オリジナルのカラーイラストは、家に飾って眺めたくなる1枚でした。描かれた題材もご自身の長所を意識なさったもので、絵柄にマッチしていたと思います。惜しかった点としては、線がやや雑に見えてしまう部分、空間の奥行きが感じにくい部分などです。イラスト全体としてのクオリティを高めることを意識し、もっとたくさん絵を描いていただくことで、ご自身の絵柄を極めることができるのではないかと思いました。

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