第27回 電撃大賞 入選作品
電撃小説大賞部門

大賞受賞作

『ユア・フォルマ 電子犯罪捜査局』

著/菊石まれほ

電撃文庫

ユア・フォルマ 電索官エチカと機械仕掛けの相棒

著者   : 菊石まれほ
発売日  : 2021年3月10日

孤高の天才エチカと、機械仕掛けの相棒が、
脳に刻まれた〈機憶〉をたどる――
本格SFクライムドラマ開幕!

孤高の天才エチカと、機械仕掛けの相棒が、
脳に刻まれた〈機憶〉をたどる――
本格SFクライムドラマ開幕!

あらすじ

「エチカ、お前は父さんの機械でいなさい」
そう育てられた少女は、望まれるまま、世界最年少で電索官に。
人の脳に潜り、記憶を覗く特殊捜査任務だ。
2023年、冬のペテルブルク――。
「はじめまして、あなたの良き相棒でいられるよう努力します。」
天才的な電索能力ゆえに、パートナーの脳を焼き切っては、
病院送りにしてばかりのエチカにあてがわれた新しい相棒は、
ヒト型ロボット〈アミクス〉のハロルドだった。
機械のくせに馴れ馴れしい、図太い、距離感がおかしい! 
エチカを苛立たせてばかりのハロルド。だが皮肉なことに、
電索の相性だけは……抜群だった。
最強の凸凹バディが挑む、凶悪電子犯罪事件は、
二人の過去を巻き込んで思わぬ方向へと舵を切る――!

受賞者プロフィール

平成生まれ。中学生の頃、小説を書くことの楽しさに目覚め、紆余曲折を経て作家を志す。趣味は読書、ゲーム、映画鑑賞。SF作品に登場するアンドロイドやコンピュータなど、人間のように喋る人間でない機械にロマンを感じる。スマホのGoogleアシスタントに「ヘイ、Siri!」と呼びかけては困らせているので、いつか仕返しされるかも知れない。

受賞者コメント

この度は身に余る素晴らしい賞を頂き、大変恐縮しております。選考に関わられた全ての方々に、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。中々芽が出ず、筆を折ろうと思った時期もありましたが、こうしてスタートラインに立つことが出来て無上の喜びです。同時に、頂いた賞の重みに責任を感じております。今後とも初心を忘れず、手に取って下さった方の心に触れられるような作品を送り出すため、一層精進を重ねて参ります。何卒よろしくお願い致します。

選考委員選評

※本選評は応募時の原稿に対してのもので、刊行されたものとは異なります。

  • 三雲岳斗(作家)

    端整なSFサスペンスで、丁寧な描写と完成度の高いストーリーが高評価でした。ヒューマノイドと人間のバディものという設定はありきたりですが、個々のキャラクターや会話の掛け合いが魅力的に描かれていると思います。そのぶん世界観に目新しさが欠けており、地味な印象を受けるのは勿体ないと感じました。筆力のある書き手だと思いますので、小器用にまとまることなく更に大きな物語を手がけていただけたら嬉しいです。

  • 三上 延(作家)

    人間とロボットのバディものという古典的なアイディアを手堅く処理しています。設定の提示やキャラクターの出し入れ、展開の流れも申し分ありません。特徴のあるバディも含めてキャラクターの立て方もそつがなく、今回の候補作の中で最も高い完成度を感じました。ただ、主人公の飛びこむ記憶のイメージはもっと豊かだといいと思います。

  • 吉野弘幸(アニメーション脚本家)

    個人的に、今年の候補作で一番推していた作品が無事に大賞となりました。いささか手垢の付いた題材ながら、主人公と、その相棒となるアンドロイドのキャラクター付けで見事に読ませてくれた作品です。個人的には、特に相棒のアンドロイドに惹かれました。単純に、読み終わったあと「この二人の話の続きを読みたい!」と思ったことで、強く推させてもらいました。この物語の続きを楽しみにしています。

  • 小原信治(放送作家・脚本家)

    『鋼鉄都市』を匂わせるSFミステリーと「機械のような女性」と「人間のような機械(ロボット)」のラブコメのハイブリッドによる世界標準のエンターテインメント。主人公に感情移入するほど機械に翻弄される。と溜め息が出るほど完成度は高いのに感情が動かされないのは低温なキャラクター設定のせいだけなのだろうか。残酷なトラウマ描写は読み手の体温を上げ、二人の孤独を際立たせるのに効果的だったと思うのだけれど。

  • 湯浅隆明(電撃文庫統括編集長)

    いずれも極めて有能な二人、クールな女主人公エチカと、真面目だけどとぼけた味のあるアンドロイドのハロルドのバディが読んでいて楽しいです。仄見える二人の曰くありげな過去が読み手の気を引き、またツンデレを次第に攻略していく様が絶妙で微笑ましい。SF的な世界設定も違和感なく構築され、また本筋のストーリーも牽引力があり完成度の高い作品です。二人の今後も気になります。

  • 高林 初(メディアワークス文庫編集長)

    確かな描写力に、イマジネーションあふれる設定。応募作の中でも際立つ才能を見せてくださいました。またヒロインと相棒の掛け合いが軽妙で、これぞバディものというエンターテインメント性も非常に高かったです。ただ捜査官の物語としてはあともう一工夫ほしかったようにも思います。物語を動かすために、ヒロインの精神年齢をやや低くしてバランスを取っていらっしゃるようにも感じました。

TOP