第27回 電撃大賞 入選作品
電撃小説大賞部門

銀賞受賞作

『インフルエンス・インシデント』

著/駿馬 京

電撃文庫

インフルエンス・インシデント Case:01 男の娘配信者・神村まゆの場合

著者   : 駿馬 京
発売日  : 2021年3月10日

SNSの事件、山吹大学社会学部
『白鷺ゼミ』が解決します!
ネット社会に贈る、
新世代ミステリーが開幕!!

SNSの事件、山吹大学社会学部
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あらすじ

人気女装配信者「神村まゆ」として活動する男子高校生・中村真雪は、ある日SNSを悪用したストーカー被害に遭ってしまう。
そこに手を差し伸べたのは、優秀だがエキセントリックな
大学教授・白鷺玲華と助手をつとめる女子大生・姉崎ひまりだった。
「お願いします。僕を守っていただけませんか」
「任せて。お姉ちゃんたちが助けてあげるから!」
「まずSNSの原理である『六次の隔たり』の考え方に基つけば――」
「教授ストップストップ!」
「……あ、あの。なぜ僕はずっと膝の上に乗せられているんでしょうか?」
女教授と女子大生と女装男子が、
インターネットを起点としたさまざまな事件に立ち向かう!

受賞者プロフィール

1992年1月1日生。京都府出身、東京都在住。ふだんは都内の某競馬メディアのWebディレクターとして様々な企画に携わっています。好きな音楽はメタルコアとヴィジュアル系。好きな競走馬はZenyattaやPeintreCelebreなど。学生の頃にバンドやったり動画サイトでゲーム配信やったり色々遊んでいたけど、次はどうやら小説家になるみたいです。

受賞者コメント

この度は栄えある賞をいただき、誠にありがとうございます。もともと『インフルエンス・インシデント』は、少し年齢層が高めの読者を抱える新人賞を狙って2019年の春に書き上げた作品でした。しかし「本当に読んでもらいたい人は誰なのか?」と自問する中で『SNS直撃世代の若年層』という答えに辿り着き、1年間寝かせつつ手直しを加え今回の電撃小説大賞への応募に至りました。この物語を『電撃文庫』として世に出せる喜びを噛みしめながら、作家としての第一歩を踏み出そうと思います。また、これからは一作家として小説の魅力をより多くの方々に発信できるよう最大限努力したいので、イベントや配信など活動の機会があればぜひお声がけください。

選考委員選評

※本選評は応募時の原稿に対してのもので、刊行されたものとは異なります。

  • 三雲岳斗(作家)

    おそらく今の時代にしか描かれることのない現代的なテーマの作品で、個人的にはとても面白く読めました。語り部である主人公の行動原理が明快で、過不足のない過去描写も含めて好感度が高いです。一方で現実的な事件や倫理的にデリケートな問題を扱った作品でもあるので、そのあたりが勢いで誤魔化されているのが気になるところ。コメディタッチの作風と作中のリアリティに上手く折り合いがつけば、更に魅力的な作品になると思います。

  • 三上 延(作家)

    SNSという誰にとっても身近で、感情移入しやすいテーマを持ってきた着眼点を高く評価しました。キャラクター一人一人の描写自体は丁寧で、動画配信についての説明も過不足なくすっきり読めます。ただ、探偵役であるはずの教授があまり機能しておらず、そのせいか主人公のツッコミも滑りがちなのは惜しいところ。キャラクターの味付けはもう少しリアル寄りにした方が、このテーマにより合致するのではないかと感じました。

  • 吉野弘幸(アニメーション脚本家)

    当世風のネットと炎上、インフルエンサーなどを道具に配して、ネットにさほど詳しくないオジサンは見識を広げつつ非常に楽しく読めました。ただ、全体の出来に比して、キャラクターの造形が全般にやや平凡でしたが、主人公のひまりの造形は独特で楽しく、また、綺麗事ではない「たった一度の失敗で人は終わるのだ」という強烈なメッセージに膝を打ちました。教授の過去などを深掘りした続編が読んでみたいと思える作品でした。

  • 小原信治(放送作家・脚本家)

    女装少年という人気ジャンルとSNSの社会問題をミックスした社会派ラブコメディ。のびのびと楽しんで書いているのが会話にもよく表れていた。一方で社会問題に関してはSNS上の呟きを拾い集めたような主張が多くコピペのような印象。また主人公自身の葛藤が最後まで薄いような気がした。いっそ女装少年の方を主人公にした方が良かったのではないか。ともあれ作家としてはコツさえ掴めば大きく化ける人のような気がした。

  • 湯浅隆明(電撃文庫統括編集長)

    イケメンで女装の人気動画配信者、という真雪くんの設定が素晴らしい。そんな男子にもてる主人公も明るくさっぱりした気持ちのいいキャラクターで、二人がいちゃいちゃするところが最大の見どころだと思いました。起こる事件やその解決の道筋などには詰めの甘さがみられ、また読んでためになるリアルなSNSネタももう少し欲しかったところ。とはいえ現代的な題材とテーマで楽しく読ませる作品でした。

  • 高林 初(メディアワークス文庫編集長)

    SNSというタイムリーな題材は興味深く、痛快なヒロインたちの活躍も楽しむことができました。ただエンターテインメント性を重視するあまり、細かい粗には目をつむってしまっているように感じます。ファンタジーではなく現代的な物語であるがゆえに、地に足着いたところはしっかりとしてほしいところ。キャラクター性はわかりやすいのですが、それありきで、やはりリアリティを損ねているように感じるところがあります。

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