


ストーリー
樹雨詩雨、15歳。自宅にも学校にも居場所がない彼女は、夜の街を彷徨い、警官に声を掛けられる。咄嗟に近くの建物に逃げ込むと、そこはピアススタジオで……。
受賞者プロフィール
漫画を仕事にしたいと強く意識をしたのは高校部活引退のタイミングでした。背景の演出や画面構成を最もこだわっていますが、漫画の本筋であるキャラクター力、ネーム力をあげる必要があり、練習しています。
受賞者コメント
初めてフルデジタルで作画し、初めて一般受けを意識した作品でした。自己満足では無い方向性での制作で苦戦しましたので、銀賞という形ですが結果が出たことに安堵しております。この作品を通して学んだ事を今後に生かし、作家として大きく成長したいです。
選考委員選評
※本選評は応募時の原稿に対してのものです。
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高河ゆん(漫画家)
絵柄のかわいらしさと画面の暗さ、重たさがアンバランスで凄く印象的でした。背景もしっかり機能していて、背景で完全にイメージを伝えるということができていて、いい絵だなと思いました。また、ピアスに対する描き方も、うわべだけのものではなく、しっかりと一歩入り込んでいて非常に良かったです。「学校の中で端に追いやられているという状況でも、一つの突破口があれば変われる」というテーマも好きだなと思いました。ただ、ページ数に対して物足りなさが少しあったので、エピソードの選び方次第ではもっと深みが出たかなと思います。
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いみぎむる(漫画家)
ピアスを題材に選んだところに、とてもオリジナリティを感じました。さらにビジュアル面も個性的で、モブキャラや背景(世界)が、主人公の詩雨には「こう見えている」という演出も面白かったです。ただ、梅琉というキャラクターの魅力がイマイチ発揮しきれていなかったことと、ページ数が多いわりには物語的な中身は薄かったのが残念でした。40ページという枚数を使うのであれば、ピアスという飛び道具だけでなく、もう少しストーリーのおもしろさも追求してほしかったです。
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大河内一楼(アニメーション脚本家)
かわいい女の子とダーク感のマッチングがとても良かったです。ピアスという題材だけでなく、世界の描写がいい感じにいやな感じなんですよね。セリフは少ないのですが、このヒロインが感じている窮屈さや追い詰められ感に繋がっていてとてもいい。題材もシンプルで、読後感もよくて好きです。ただ、もうちょっと短くして密度を上げられたんじゃないかとも思いました。もしくはこのページ数ならもう一展開。感性には見るべきものがあると思うので、他の作品もぜひ読んでみたいです。
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芝村裕吏(ゲームデザイナー、小説家)
他の作品と比べると作風に幅があって、それを評価する向きがあった。作品単独で見ると、多芸ゆえの未熟さがあって、自分の武器を使いこなしていないように思える。多芸は便利ではあるが、その分、満遍なく勉強しないと中途半端で終わってしまう。まだ若いので多芸を生かすのであれば他者作品を見て「それ以外」を目指し、これから数年でこれだ! という出会いがあるなら、そこに突き進むのが良いように思える。いずれにせよ、未来は有望だが慢心しては才能がもったいない。がんばれ。
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杉原ちあき(株式会社KADOKAWA コミック第3統括部 第8編集部部長)
「ピアスを開ける」――ただそれだけのお話ですが、主人公にとってはこれまでと違う世界が開けてくるという展開に、10代の主人公ならではの瑞々しさを感じました。ブヤシさんの描く世界観は印象的ですね。画力はまだまだ拙いし展開ももたついてもっと整理できるはずですが、独特のその感性は素晴らしいと思います。ぜひ生かしていってください。