第28回電撃大賞 入選作品
電撃イラスト大賞部門

銀賞受賞作

倉秦

想定作品『プシュケの涙』

著/柴村 仁

受賞者プロフィール

広島県出身。最近は石を眺めるのが好き。

受賞者コメント

この度は名誉ある賞をいただきまして、大変光栄に存じます。選考に携わってくださったすべての方に心よりお礼申し上げます。今年から少しずつ、絵のお仕事に向けて活動を始めておりました。この度の受賞といただいた選評を励みに、ご希望やお話に少しでも寄り添えるお仕事ができるよう、今後もより一層精進したいと思います。この度は誠にありがとうございました。

選考委員選評

  • いとうのいぢ(イラストレーター、ゲーム原画家)

    叙情的な雰囲気の見せ方がとてもうまく、『プシュケの涙』のカラーイラストは余白から空気感や時間の経過が感じられるエモーショナルな一枚で、こうしたことができる人はうらやましく思います。ですがカラーの2枚に比べ、モノクロイラストは情景を描きたいというのはわかりますが、画角を広く取りすぎていて余計な情報が多くも感じられ少し間延びして見えてしまいました。カメラの位置は視線の誘導を含めもう少し工夫してもよかったかもしれません。また色があると想像が膨らむ一方、モノクロはグラデーションで見せるのでメリハリが弱くもったいないと感じました。もっと大胆に陰影やコントラストの研究をし、効果的な見せ方を追求してほしいと思います。

  • abec(イラストレーター)

    『プシュケの涙』のカラーイラストは、とても完成度が高い一枚です。キャラクターや、構図で一番視線が集まるものを花にしているのにも意図を感じ、物語に興味を持たせるのに成功しています。オリジナルのカラーイラストは、一瞬の空気感をうまく表現しているのは素晴らしいですが、影の処理によって物の形が捉えづらくなっていたりと、計算がもう少し欲しいと思いました。モノクロイラストも光の濃淡、窓から差す光の処理、そうしたところから醸し出される空気感はすごくいいです。だからこそ全体的にキャラクターが遠く、印象が少し弱いのがもったいないです。キャラを描くのが苦手な訳ではないと思うので、もっと自信をもって押し出してほしかったと思います。

  • loundraw(イラストレーター、作家)

    特に『プシュケの涙』のカラーイラストは全体の色合いや画面下の余白、ノイズを強く入れながらも見やすく、ストーリー性も感じられ、繊細で微妙なバランスの上に成り立ったハイレベルな一枚だと思いました。一方で、そのバランスはまだ突き詰めていく余地があるとも感じており、もうひとつのカラーではキャラクターが写らない分、入道雲の輪郭を含め、スケール感をもっと意識できるとよいと思います。空気感や場所の温度感といった雰囲気が、突出して伝わってくる素敵な絵を描く方だと思います。その感性は特別なものですので、失わないよう気をつけながらも淡さの中で強調する部分を作り、意識してメリハリを出せるとドラマチックな絵になると思います。

  • 黒崎泰隆(電撃の新文芸編集長)

    カラーイラストで、人物をメインに据えたものと、背景を中心に見せるものの二点を描き分けていることで、イラストレーターとして全体を見渡す柔軟な視野をお持ちなのが、わかります。どちらも画面構成や彩色などにセンスを感じさせ、高レベルな仕上がりです。モノクロイラストも、光と陰をバランスよく描くことで、美しい画面になっています。陰があるからこそ、光の加減が美しいです。全体的に、静謐な空気感を描くのが上手な方だと感心はしたのですが、できれば動きのあるイラストを一点、入れてほしかったです。得意な方向を伸ばしつつも、新しいものにもチャレンジしていくと幅も広がり、より成長できるのではないでしょうか。期待しています。

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