第28回 電撃小説大賞 入選作品
電撃小説大賞部門

大賞受賞作

『姫騎士様のヒモ』

著/白金 透

電撃文庫

姫騎士様のヒモ

著者   : 白金 透
発売日  : 2022年2月10日

この世全ての悪徳を煮詰めた迷宮都市で、
一人の『ヒモ』の生き様を描く異世界ノワール!

この世全ての悪徳を煮詰めた迷宮都市で、
一人の『ヒモ』の生き様を描く異世界ノワール!

あらすじ

灰と混沌の迷宮都市。数多のモンスターと財宝を孕むダンジョンの鮮烈な灯り。その影には、必ず害虫が潜む。そんな掃き溜めに咲く汚れなき深紅の花が姫騎士アルウィン。王国再興を志し秘宝を求めるダンジョン攻略の最先鋒――
 そして彼女に集る元冒険者・マシューは、数いる害虫の一人だ。仕事もせず喧嘩も弱い腰抜け、もらった小遣いを酒と博打で浪費するクズ、そう人は罵る――しかし、彼の本当の姿を知る者は少ない。「お前は俺の飼い主(おひめさま)の害になる。だから殺す。彼女には内緒だぜ。これでも俺は無能でかわいい床上手の『ヒモ』ってことでやらせてもらってるんだ」
 選考会騒然、衝撃の異世界ノワール!

受賞者プロフィール

大阪府出身。大学在学中から小説を書き始めて二十数年。現在は古書店勤務。趣味は読書と映画鑑賞。時代小説とミステリーが好き。

受賞者コメント

この度は栄えある賞をいただき、まことにありがとうございます。選考委員の皆様をはじめ、選考に携わったすべての方々に厚く御礼申し上げます。うれしい反面、緊張も不安もあります。これからが小説家人生のスタートになります。どこまで走り続けられるかはわかりません。人はいつか死にます。私も死にます。それでも喜び、笑い、悲しみ、怒り、感動、何か一つでも読んだ方々の心に残る作品を書き続けられたら、どんな大きな墓石よりもずっと素晴らしい、生きた証になると思っています。そのためにも今後も精進を重ねて参りますので何卒よろしくお願いいたします。

選考委員選評

※本選評は応募時の原稿に対してのもので、刊行されたものとは異なります。

  • 三雲岳斗(作家)

    暴力的なまでに際立った個性と緻密な構成力、魅力的な登場人物を備えた傑作でした。露悪的でありながら好感の持てる主人公をはじめ、人間臭くリアルなキャラクター描写が作品に深みを与えていると思います。選考では展開の血なまぐささを懸念する声もありましたが、圧倒的な面白さに物を言わせて大賞をもぎとった作品でした。

  • 三上 延(作家)

    ジャンルとしては定番とも言える異世界ファンタジーものですが、ダークな世界観に高い独自性があります。呪いによって重い制約を課せられ、普段は「ヒモ」として軽蔑される主人公と、一癖も二癖もあるキャラクターたちのドラマは良質なノワール小説を思わせるものでした。タイトルにもなっている姫騎士の登場場面がもっと多ければなおよかったと思います。

  • 吉野弘幸(アニメーション脚本家)

    ファンタジー世界に、ピカレスクロマンとハードボイルドを見事に融合させた作品。目的に対して全くブレずに容赦の無い主人公の行動に痺れ、一番に推しました。他の選考委員の方々の評価も高く大賞となったわけですが、一方でそのハードさや救いの無さから、これが電撃の大賞でよいのか? という議論もありました。しかし、それをはねのけたのは、純粋に作品の力でしょう。日和らず、この路線を突き進んで欲しいと思います。

  • 小原信治(放送作家・脚本家)

    異世界の元冒険者が虚構の自伝形式でニヒルに語るヒモ墜ちした理由。酒とクスリと暴力に塗れたクズ達との諍いも軽妙洒脱な台詞と風通しの良い文体のおかげでライトな仕上がりに。唯一の良心と思しき姫騎士もまた清廉潔白ではなかったという展開も皮肉めいていてニヤリとさせられました。エンタメとしての派手さはやや欠けるものの、新たな読者層を開拓してくれるピカレスク小説ではないでしょうか。

  • 荒木人美(電撃文庫編集長)

    姫騎士様のためならどんなに手を汚すことも厭わない、“最強にかっこいいクズ”である主人公がとにかく魅力的なお話でした。姫騎士様の邪魔をする人物を容赦なく排除していく様は、非情ながらも、ある種の爽快感と、姫騎士様への一途な想いが感じられ、読み終わるころにはすっかり彼のファンになっていました。姫騎士様の描写がやや足りなかったので、ぜひ彼女の良さも追及していただき、読者を姫騎士様のファンにさせてほしいです。

  • 遠藤充香(メディアワークス文庫編集長)

    地下迷宮を軸に広がる町はどこかリアルな渇きがあり、キャラクター造形も魅力的で、何より独特の美学に惹き込まれました。かなり暴力的な展開も、圧倒的に滑らかなナラティブで読ませてしまうその力量に感服です。姫騎士との関係、誰も知らない秘密が明かされるにつれ、ろくでなしのはずの主人公がいつの間にかとてつもなくかっこよく見えてしまった瞬間、これは広く読まれるべき作品だと確信しました。

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