第28回電撃大賞 入選作品
電撃小説大賞部門

金賞受賞作

『百合少女は幸せになる義務があります』

著/榛名千紘

電撃文庫

この△ラブコメは幸せになる義務がある。

(※応募時『百合少女は幸せになる義務があります』より改題)

著者   : 榛名千紘(※応募時「神奈士郎」より改名)
発売日  : 2022年3月10日

彼女が好きなのは幼馴染の親友のことだった──はずなのに!?
これが三角関係ラブコメの到達点!

彼女が好きなのは幼馴染の親友のことだった──はずなのに!?
これが三角関係ラブコメの到達点!

あらすじ

平凡な高校生・矢代天馬はひょんなことから、クラスメイトでモデル顔負けの美少女・皇凛華が、品行方正なクラスのマドンナ・椿木麗良のことを溺愛していることを知ってしまう。クールな彼女の実態は、幼馴染の麗良ともっと仲良くなりたいが、素直になれずに空回りしてばかりのポンコツ少女だったのだ。
仕方なく彼女と麗良の仲を取り持つ手伝いをすることになる天馬だったが、彼はナンパから麗良を助けたことをきっかけに、その麗良から猛烈に好意を寄せられるようになってしまい……!?
ポンコツな彼女を応援するはずが、自分を巻き込んだ三角関係!? この三角関係が行き着く先は……!?

受賞者プロフィール

北関東出身。現在は東京郊外在住。事務職をしながら夢を追いかけるが、いつの間にやら本来の目的を忘れ今に至る。抱かれたいMSランキング一位は間違いなくエクシアだが、別におとめ座ではない。ゾイドならバーサークフューラーが好き。模型化を待ち望むACはストリクス・クアドロ。

受賞者コメント

担当編集のN氏から初めてお電話を頂いた日のことを、今でも深く後悔しております。酒焼けで喉が痛かった私は終始テンションが低く、ありえないくらいの塩対応。にも関わらずN氏は不快感を示すこともなく大人の対応。一事が万事とはよく言ったものです。刊行に当たり、自分が知らず知らずのうちに様々な方々の恩恵を受けているのだと、痛烈に思い知りました。ご迷惑をおかけした皆様に、いつの日か恩返しが出来るように邁進してく所存ですので、よろしくお願い致します。

選考委員選評

※本選評は応募時の原稿に対してのもので、刊行されたものとは異なります。

  • 三雲岳斗(作家)

    とても完成度の高いラブコメで、軽快な文章と魅力的なキャラクターのおかげでストレスなく一気に読むことができました。破綻なくまとまりすぎていて、やや予定調和な印象もありますが、シリーズの導入部としては必要十分かと。ただ、扱っているセンシティブなテーマに対する解像度が低く、危ういと感じる描写もありました。少し誤解を招きそうなタイトルを含めて、そのあたりが改善されるとより安心して読める作品になると思います。

  • 三上 延(作家)

    ダブルヒロインのラブコメとして非常に楽しく読みました。主人公の造型も嫌味がなく好感が持てます。応募時点で商業作品として高いレベルに達していることに目を瞠る思いでしたが、同性に恋愛感情を抱くことと、フィクションのジャンルにすぎない「百合」が混同されていることへの違和感がどうしても拭えませんでした。同性を好きになるキャラと百合愛好家のキャラは分けた方が物語としてはすっきりしたのではないでしょうか。

  • 吉野弘幸(アニメーション脚本家)

    テンポもよく読みやすい文章で、作者の地力を感じさせる一方、「百合」と銘打っているにしてはそのタイトルに対する裏切りが大きすぎて、ちょっとどうだろう、と思わせられた作品です。ヒロインたちの百合っぽい絡みもほとんど無く、主人公(男)に惚れてしまうのはいろいろ台無しだとも。とはいえ普通に青春ラブコメとして読めばきちんと出来ていて面白いので、タイトルやジャンル感は一考した方が良いかもしれません。

  • 小原信治(放送作家・脚本家)

    個人的には大賞でも遜色ない一作。「もしも百合少女がアランの「幸福論」を読んだら」とでも言いましょうか。身近なジェンダー問題の入門書となり得る可能性も感じました。欲を言えば、親友・真の伏線を回収して欲しかった。司に当事者としての葛藤が生じればより主人公たり得たかなと。彼を「幸福論」を体現する傍観者に留まらせるなら、むしろ生き辛さを抱える綾香視点で描いた方が大きく感情が動かされた気がします。

  • 荒木人美(電撃文庫編集長)

    読後感が爽やかな、完成度の高い青春ラブコメでした。読んでいて嫌な登場人物が一人もおらず、特に主人公は「友達にいたらいいだろうな」という、読者との近さを感じさせるキャラで、著者のキャラクターメイキングの力量を感じました。なおタイトルに「百合」と入っているものの、展開は王道の青春ラブコメであったので、どんな読者に向けた作品なのかということをもっと意識していただければ、より良くなると思いました。

  • 遠藤充香(メディアワークス文庫編集長)

    百合愛好家という秘密を共有したことで陥る奇妙な三角関係。同性への恋、同時に芽生える恋心などの要素も重なって、「普通」という物差しがこんがらがって無化されていくおかしみが上手く表現され、特別な読後感がありました。繊細なテーマに対する理解が足りない点が気になりましたが、楽しく軽妙な掛け合い、まっすぐで瑞々しい心情描写の随所に青春の躍動と幸福感が迸る、読み応えのあるラブコメディです。

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