第28回電撃大賞 入選作品
電撃小説大賞部門

銀賞受賞作

『黄昏(たそがれ)のブリュンヒルド』

著/東崎惟子

now printing
電撃文庫

竜殺しのブリュンヒルド

(※応募時『黄昏(たそがれ)のブリュンヒルド』より改題)

著者   : 東崎惟子
発売日  : 2022年6月10日予定

愛が、二人を引き裂いた

愛が、二人を引き裂いた

あらすじ

「竜殺し」の英雄が治める帝国、ノーヴェルラント。竜が棲む伝説の島「エデン」へ向かった討伐軍は、返り討ちに遭って殲滅された。
 偶然にも一人生き残り、エデンの海岸に流れ着いた幼女・ブリュンヒルド。竜は彼女を救い、憎しみのない楽園エデンで自分の娘のように愛し育てる。一人と一匹は平穏な日々を送っていた。
 しかし、十三年後。ブリュンヒルドの父・シギベルトが率いる討伐軍がエデンを侵攻してしまう。シギベルトは竜を殺し、ブリュンヒルドをノーヴェルラント帝国に連行した。
 「他人を憎んではならない。悪行を為さなければ神の国で再会できる」と言い遺した竜の言葉も虚しく、ブリュンヒルドは実の父シギベルトへの復讐を誓う。

受賞者プロフィール

特筆することは何もありません。読むこと、書くこと、どちらも苦手ですから。

受賞者コメント

小説の形をしたこの手紙を、電撃文庫でご活躍されている一人の作家先生に贈ります。

選考委員選評

※本選評は応募時の原稿に対してのもので、刊行されたものとは異なります。

  • 三雲岳斗(作家)

    海外SFやファンタジー系児童文学を思わせる、静謐でストイックな物語でした。ライトノベルの市場ではやや異質ですが、文体や内容の完成度は非常に高く、どうすればこれが市場で受け入れられるかという点で選考委員を悩ませた作品でした。ただ、これは当然世に出るべき物語だと思いますし、作者の次回作も楽しみです。

  • 三上 延(作家)

    贅肉を削ぎ落としたような密度の高さ、幻想文学を思わせる独特の雰囲気が素晴らしいです。ストーリーや設定はシンプルでありつつ、それぞれのキャラクターは非常によく描けていて、ラストまでページをめくる手が止まりませんでした。複数のキャラクターの視点から過不足なく物語るバランス感覚は素晴らしいのですが、この作品に限れば、主人公の激情をもっと筆に載せた方が良かったのではないかと思います。

  • 吉野弘幸(アニメーション脚本家)

    素敵で悲しい寓話であり、刺さる読者にはとても刺さるだろうと思わされた作品です。文章も端正で一気に読ませる力があり、無駄がなく、作者の描きたいものと導かれる結末に、文章を含めた全てが奉仕している印象です。ただ万人受けするかと言われると疑問はあるので、銀賞という落とし所になりました。個人的にはたいへん好みの話で、強く推させてもらった作品の一つです。

  • 小原信治(放送作家・脚本家)

    詩的で抑制的な筆致で綴られた高尚なファンタジーでした。神話的モチーフと近代的テーマのバランスも良かったです。クールな文体が主人公のキャラクターとも合致しているのですが、そのせいで読み手の感情が育ての父の仇討ちとして実の父を殺さねばならない葛藤と哀しみを背負った主人公ではなく、父を殺される息子に移行してしまうのが残念。さりとて時代ごとに違う味わいを放つ息の長い作品になるのではないでしょうか。

  • 荒木人美(電撃文庫編集長)

    育ての父である竜を殺された主人公が、竜殺しの英雄である実の父に復讐を誓う、悲しくも美しいファンタジー。登場人物の行動動機が明確で、物語も丁寧に描かれており、確かな力を感じました。余分な要素を極力削った文章表現も作品に合っており、一気に読ませました。反面、心情描写がややあっさりに感じられた箇所もあり、書き込む部分は書き込んでいただいて、読者の感情をもっと大きく揺さぶってもよかったのかなと思いました。

  • 遠藤充香(メディアワークス文庫編集長)

    貴種流離、異類交流といった物語がもつ壮大さや切なさを背景に、愛するもののために冷徹に復讐を遂行していく少女の壮絶なドラマが際立っていました。過剰さを削ぎ落とした文章も作品世界に合っています。運命に導かれるように復讐に邁進する少女の悲劇性に強い感動を抱く反面、希望を描くことの難しさを痛感し、この絶望的な世界にあって希望を見出そうとする主人公の格闘ももう少し見てみたかったと思いました。

TOP