第28回電撃大賞 入選作品
電撃小説大賞部門

選考委員奨励賞受賞作

『隣の席の雪本さんが異世界で王様やってるらしい。』

著/三木本柚希

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メディアワークス文庫

隣の席の雪本さんが異世界で王様やってるらしい。

著者   : 三木本柚希
発売日  : 2022年春以降予定

「うむ、よくぞ見抜いたな。余が異世界の王であることを」
“異世界”が二人を惹き寄せる、隣の席系青春コメディ!

「うむ、よくぞ見抜いたな。余が異世界の王であることを」
“異世界”が二人を惹き寄せる、隣の席系青春コメディ!

あらすじ

「私さー、実は王様やってるんだよね」。隣の席の雪本(ゆきもと)さんがそう言ったとき、深山(みやま)くんは瞬時に悟る。試されている……と。高校入学直後でノリが悪いと思われたくない深山くんは、思わずこう返してしまう。「まさか、異世界で……王様を?」。
 その瞬間から、雪本さんとの日々は始まった。異世界で国を治めている(らしい)雪本さんの相談に乗るという形で、二人だけの“異世界”を作りあげていく。雪本さんとの楽しい毎日に、ずっとこんな日が続けばいいと、深山くんはいつしかそう思うようになっていた。……そんな幸せな日々は、ある日突然終わりを迎える。
 二人を引き裂くあまりにも理不尽な出来事に立ち向かうため、深山くんは一歩踏み出す――!

受賞者プロフィール

小さい頃から小説や漫画が好きで、なんとなく文章を書き始める。読んでくれる友人たちから「面白い」の一言を引き出すのが楽しくて、小説を書くのが趣味となる。

受賞者コメント

この度は素晴らしい賞をいただき、ありがとうございます。選考に関わられた全ての皆様にお礼申し上げます。最終選考に残ったとの連絡をいただいた時からなんだか現実感が無く、夢の中にいるようなフワフワした気持ちで、「なんだ夢か」と今にもベッドで目を覚ましそうな気がしています。いつかこの夢から覚めた時に、いい夢を見たぜと笑って一日を始められるよう、楽しい夢にしていきたいと思います。

選考委員選評

※本選評は応募時の原稿に対してのもので、刊行されたものとは異なります。

  • 三雲岳斗(作家)

    高校時代の男女の、単なるクラスメイトからはみ出すかはみ出さないかくらいの微妙な距離感を描いた独特な作品。異世界要素を単なる会話のネタとして盛りこむことで生々しさを消しつつ、それでいて適度にリアリティのある登場人物たちの葛藤を描く技術には脱帽しました。ただやはり万人受けするテーマではないので、次回はより広範な読者にガッツリ刺さる作品も読んでみたいです。

  • 三上 延(作家)

    主人公たちの会話劇として楽しく読みましたが、肝心な部分で「惜しい」印象でした。独立した短編として評価するなら「ヒロインがどんなキャラクターなのか」は、最低限提示すべきだと思います。とはいえ連作短編や長編の冒頭として、ここからどのようにも物語を広げていける形なので、一冊の本としてまとまった場合どんな展開になるのか、色々と想像させてくれる作品でした。

  • 吉野弘幸(アニメーション脚本家)

    可愛らしく、ほっこりさせてくれる短編。掛け合いをテンポ良く楽しく読ませる力はたいしたもので、好きなノリです。が、一方でノリに頼りすぎている感があり、ヒロインから仕掛けたこの会話が、本当にたまたま気まぐれで始めたものなのか、それとも最初から主人公に好意があったのか、あるいは途中で変化して好意になっていったのかが不鮮明で、オチに繋がる感情の手がかりがもう少し欲しかった印象です。

  • 小原信治(放送作家・脚本家)

    胸の高鳴りを表現する文体と声が聞こえる会話は10作の中でも高評価でした。異世界を作る遊びもいちゃつきの隠喩として独創性を感じます。席替えの後にもうひと展開欲しいところですが、ヒロインに「ほんのちょっとだけ勇気が出る魔法」を掛けられた主人公が関係を終わらせない為に「ほんのちょっとだけ勇気を出す」ラストもラブコメとしては悪くないです。実は死んだヒロインのことを追想しているなどの切なさがあってもと。

  • 荒木人美(電撃文庫編集長)

    隣の席の雪本さんと、主人公の会話で物語が進んでいく日常小説。会話文や心情描写がコミカルでテンポよく、大きな事件が起きるわけではないのですが、読みごたえがありました。短編として完成されていたと思います。キャラクター同士の会話を面白く描けるというのは、エンタテインメント小説を書く上で素晴らしい才能だと思います。作品としても、どのような形にでも広げていけそうなポテンシャルを感じました。

  • 遠藤充香(メディアワークス文庫編集長)

    隣の席になったクラスメイトとのおかしみのある甘酸っぱい会話に惹き込まれてしまいました。「異世界で王様をやっている」という雪本さんの告白をきっかけに、頭をフル回転させて会話を紡いでいく主人公に自然と笑えてきゅんとする。ずっとこの二人の時間を見ていたいと思わせる、短編作品ながら完成度の高い青春小説でした。

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