第29回 電撃小説大賞 入選作品
電撃小説大賞部門

金賞受賞作

『ミリは猫の瞳のなかに住んでいる』

著/四季大雅

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電撃文庫

ミリは猫の瞳のなかに住んでいる

著者   : 四季大雅
発売日  : 2023年3月10日予定

これは「僕」が「君」と別れ、「君」が「僕」と出会うまでの物語だ。

これは「僕」が「君」と別れ、「君」が「僕」と出会うまでの物語だ。

あらすじ

瞳を覗き込むことで過去を読み取り追体験する能力を持つ大学生・紙透窈一(かみすきよういち)。退屈な大学生活の最中、彼は野良猫の瞳を通じて、未来視の能力を持つ少女・柚葉美里(ゆずのはみり)と出会う。
猫の瞳越しに過去の世界と会話が成立することに驚くのもつかの間、『ミリ』が告げたのは衝撃的な『未来の話』。
「これから『よーくん』の周りで連続殺人事件が起きるの。だから『探偵』になって運命を変えて」
調査の過程で絆を深める二人。ミリに直接会いたいと願う窈一だったが……
「そっちの時間だと、わたしは、もう――」
死者からの手紙、大学の演劇部内で起こる連続殺人、ミリの言葉の真相──そして嘘。
過去と未来と現在、真実と虚構が猫の瞳を通じて交錯する、新感覚ボーイミーツガール!

受賞者プロフィール

福島県郡山市出身。趣味は読書と散歩。面白いことなら何でも好きです。

受賞者コメント

素晴らしい賞をいただけて大変光栄です。お小遣いがもらえない子供だったので、主な読書体験はもっぱら図書室・図書館に依存しておりました。
小学校の図書室に『キノの旅』が置いてあり、新刊が追加されるたびにワクワクしながら読んだのを昨日のことのように憶えています。
まさかその電撃文庫から自分の小説を出版することになるとは……。人生って不思議です。

選考委員選評

※本選評は応募時の原稿に対してのもので、刊行されたものとは異なります。

  • 三雲岳斗(作家)

    特殊設定ミステリと演劇部を舞台にした青春もの、さらにはSF的なボーイミーツガールを絡めた意欲作ですが、作中の要素と情報量の多さが災いして、現時点ではどれも中途半端な仕上がりになってしまった印象があります。ただ荒削りながらも作者の非凡な才能ははっきり伝わってきますし、改稿で完成度を上げればより素晴らしい作品になるのではないかと思います。期待しています。

  • 三上 延(作家)

    今年の最終選考候補作の中で最も評価の分かれた作品。SF的な要素のあるミステリーとラブストーリーを一つの物語に盛りこんだ熱意も含めて楽しく読みました。フーダニットのミステリーとして説明不足なところや、主人公たちの能力が活かしきれていないところは引っかかりましたが、主人公やヒロインをはじめとして、キャラクターはとても魅力的に描けています。彼らの恋愛を軸に物語を刈りこんでもよかったのではないでしょうか。

  • 吉野弘幸(アニメーション脚本家)

    個人的には非常に面白く読め、大賞に推した作品です。不思議な装置の入ったミステリー小説ですが、コロナ下の時代性を反映していたのも「いま」ならではの作品となっており、ラストまで数回あるひっくり返しもジェットコースター感があって非常に好みでした。だたその勢いの反面、がんばって伏線張りもされているのですが、どうしても細かなアラや矛盾も多く、完成度においていまひとつ……ということで金賞獲得となりました。

  • 小原信治(放送作家・脚本家)

    相手の瞳の中に過去が視える少年と未来が視える少女が一匹の猫を媒介に出会うボーイミーツガールであり推理ミステリー。エンタメとしてのキャッチーさは群を抜いていました。設定も描写も極めて映像的でテンポも良い。ですが容疑者を全員役者にし、その言動が嘘か真かというサスペンスまで盛り込んだことで消化不良を起こした印象です。設定をシンプルにして主人公の行動原理や葛藤を丁寧に描けばラストはもっと泣けた筈なのになと。

  • 黒崎泰隆(電撃メディアワークス編集部 部長)

    SF、ミステリー、恋愛&青春といった要素がほどよく溶け合って、不思議な魅力を生み出している作品。人の瞳から記憶を読み取ることができる青年と、未来を見ることができる少女ミリが、猫の瞳を通じて絆を深めつつ連続殺人犯を追っていくという先の展開が気になって仕方のない深遠なストーリー、そして個性豊かなキャラクターたち。楽しみどころが満載で、大賞でもおかしくない力作です。ぜひ多くの人に読んでもらいたいですね。

  • 遠藤充香(メディアワークス文庫編集長)

    まず、一際才気を感じた作品でした。瞳を覗き込むことで記憶を読み取る力を持つ主人公が連続殺人を防ぐ、という序盤に引き込まれ、物語を牽引する力強いナラティブにのって一気に読んでしまいました。一方で、多くの要素を詰め込みすぎたせいか複雑な印象で、ラブストーリーとしては、どこか煙に巻かれた読後感になった点が非常に惜しかったです。

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