第29回電撃大賞 入選作品
電撃コミック大賞部門

銀賞受賞作

『明晰夢』(オリジナルコミック作品)

つのさめ

ストーリー

おみやげキーホルダー工場で働く小山さちこは毎晩悪夢による不眠に悩まされ、そのせいで仕事にも支障をきたしてしまっている。ネットで知った「夢の中で自由に行動できる」という明晰夢に挑戦し、悪夢に打ち勝とうと試みる。

受賞者プロフィール

大阪市在住。普段はSNSやコミティアなどでイラストや漫画制作の活動をしています。ねこすけという名のかわいい猫を飼っています。

受賞者コメント

まさかこのような賞をいただけると思っておらず驚きとともに身の引き締まる思いです。この賞を糧にこれからも長く漫画を描き続けていければと思います。

選考委員選評

※本選評は応募時の原稿に対してのものです。

  • 高河ゆん(漫画家)

    自分の描きたいものをしっかり描き切っている作品だと感じました。計算されたコマ運びで読みやすいし、さっぱりした絵柄でバケモノが出てくる悪夢の世界を描くのもおもしろかったです。ただ、漫画はやっぱり読者ありきのものなので、描きたいものを描くことも大切だけど、作品を読み終わったあとに読者の心に何が残るのか、そこをもう一度考えて、掘り下げてほしいと思いました。漫画制作の技術は高いレベルにあると思うので、さらに次のレベルに進んでいってほしいです。

  • いみぎむる(漫画家)

    正直わかりやすい作品ではないですが、妙に気になる魅力を持っている作品でした。タイトルどおり夢の世界を描くので、一歩間違えれば支離滅裂になりそうなところを、あくまでも夢っぽく、それでいて破綻せず物語を成立させている構成力はすばらしいと思います。「なんだこれは……何を読まされているんだ……?」となりつつ、読後に絶妙な夢感がありました(笑)。このとびきりシュールな世界観、好きです。短くまとまっているのも良かったですね。

  • 大河内一楼(アニメーション脚本家)

    不思議な味わいの、おもしろい読後感の作品でした。短編SFっぽい感じといいますか。説明がつかない部分も多いのですが、その説明のつかない部分がおもしろさになっていて。彼女の見る夢のネタなんかもいちいち面白いんですよね。狙って作れなさそうなところに作者のセンスを感じました。1本だけだといい意味で物足りなく、短編集のように、この方の作品群をまとめて読みたいな――そう思わせる魅力がありました。

  • 芝村裕吏(ゲームデザイナー、小説家)

    少し不思議系で独特のセンス。今回のイチオシ才能である。雑誌連載という感じではないが、単行本で力を発揮し、独特の存在感を提供する人になると思う。日常と非日常の間を行くような世界観を大事にしてほしい。この人はおそらくエッセイマンガのていで妄想を描けば間違いなく高い評価と成功を確立するだろう。その上でできればいろんな変な人と対談させれば、この人のマンガの世界がさらに深く広がるのではなかろうか。

  • 飯島直樹(株式会社KADOKAWA コミック第3統括部 第8編集部 コンテンツプロデューサー)

    作者の頭の中が垣間見えるとても作家性の強い作品で、読んだ後の感想が読者によって変わることが想像でき、それが作家性の表れかなと思いました。キャラクターもシンプルで作品の雰囲気とばっちり合っていていい形でストーリーの助けになっており、漫画としても完成されています。ただ読後感が……。この作家性を発展させつつ作品の中毒性を増すことで作品のラストにあったセリフ「手に入れてみせる…いい感じの未来…」をつのさめさん自身が体現できるのではと感じましたのでがんばってください!!

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